シリーズ 昭和百景 司馬遼太郎が追いかけた “草原の巨人” 飯塚浩二 遥かなり
現在、飯塚浩二の著作を求めることは難しい。以前、岩波現代文庫から飯塚の主著のひとつである『日本の軍隊』が復刊されたが、すでに在庫は乏しい。
同書はかつて初版が東大出版会から刊行されて以来、長く名著として語り継がれてきたものだが、しかし飯塚の思想的ステージの特筆すべきは、むしろその時代的風潮にともなう反省的立場に立ったシステム論であるよりは、『日本の精神的風土』や『東洋史と西洋史のあいだ』といった著作に顕在する、それまでにない人文地理上の視点を日本の学問的風土に持ち込んだ