シリーズ昭和百景 メコンの蛍 国境を越えた「終わりなき戦禍」
川べりにホタルの黄色い光が明滅し始めると、それを合図のように、紅玉の陽はメコンの上流に急いで姿を隠す。かつて、この大河に闇が訪れるのを待ち、数多の船が密やかに東シナ海へと下った。「ボート・ピープル」と呼ばれた彼らのうち、1万人ほどが日本へと流れ着く。それから30年…。政府・自民党は今、新たな労働力確保策として、「移民受け入れ100万人」を計画し、「移民庁」の設置を視野に入れる。だが、そこには「ボート・ピープル」と呼ばれた彼らの〝無国籍〟状態を解消する具体策は盛られていない。