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友だちの結婚式へ行く

フランス人の友人Lと、そのブラジル人の彼氏Bの結婚式に参加して来た。ドレスアップし小さなお花を頭にたくさん載せ、カラフルなセンスの良いブーケを持ったLは幸せそのもので、とっても可愛かった。

フランスの結婚式は市役所のホールで市長さんと共に行われる。市長さんのスピーチがあり、婚姻の宣誓を読み上げ、新郎新婦がこれに同意し、各々証人と共に書類にサインをすると婚姻成立だ。

拍手が鳴り止まない中、何度も見つめあいキスし合う2人の様子を見るとこみ上げるものがあった。

コロナ禍もあり結婚式を挙げるのもなかなか難しい状況かもしれない。
でもやっぱり結婚式というのは当人はもちろんのこと見るものも幸せな気持ちにしてくれる特別な日だと心から感じた。


今回2人が結婚式をあげたこの市役所は、パリ各区の中でも左よりで有名らしく、市長さんのスピーチがとても良かった。

2人が結婚に至るまでには紆余曲折あった。
そもそもBがどんなビザでパリにやって来たのか知らないのだか、とにかくLと付き合い始めたとき彼は滞在許可証の期限が切れ不法滞在状態だったこともあり、結婚を決めたものの、書類集めに一苦労したらしい。滞在許可証がなければ身分を証明することができないのだし、発行できない書類もあるはずだ。
書類手続きが煩雑で有名なフランス。ましてや国際結婚、さらに彼氏は不法滞在中とあっては心細いこともあっただろう。


市長さんもスピーチのはじめに「いろいろあったけれど、結婚式というのは誰にとっても嬉しい日ですね!」と笑顔で宣言された。

2人が国際結婚だったためか、誰にも開かれた場所としての市庁舎のあり方や多様性について語られていたのも心に残った。


「フランス革命前まで、結婚とはカトリック教徒だけのものでした。それが今では宗教・職業・国籍・性別に関係なく、全ての人のための結婚になったのです」と仰っていたのが印象深い。
この国もまた長い時間と努力と忍耐を経て平等を目指して来たのだと知り、希望を感じた。


日本に比べ、パリでは日常生活において多様性を感じる機会が非常に多い。
楽観的、理想的に語れば違いを受け入れ認め合い高め合う社会とは、閉鎖的な社会に比べ間違いなくよりダイナミックで豊かなものだ。
しかしそこにはまた問題も多いことは確かだろう。異なるものを受け入れるということは、簡単なことではない。軋轢や分断を生むこともある。

それでも市長さんは、不法滞在中の新郎とその新婦に向かい、「大切なのはあなたたちが誰で、どこから来たかではありません。二人でともにどこへ向かい歩んで行くかなのです」と言った。

私はこの国のこういうところが好きなのだ。


市庁舎から出て花道をつくり、2人が出てくるとみんなでお米をかける。
ブラジルのサンバチーム打楽器部隊が生演奏で我々を迎え、市庁舎の前で踊る。
これが本物のサンバのリズム。道行く人々も足を止め、手拍子でリズムをとる。


土曜日の市役所は結婚式ラッシュで、30分刻みに新しい新郎新婦と立席者たちがやってくる。

私たちの次の結婚式の主役は2人の若い男の子だった。

と、その次は2m以上ありそうな細長い笛を吹く音楽隊がやってきて、太鼓のリズムに載せて演奏が始まる。参加者の中にはアルジェリアの国旗を肩にかけている人が何人かいた。


夏の太陽の光が眩しい。
青い空の下、踊る人たちを眺める。
名もない市井の人々、誰もがこの幸せな1日の主役だ。


「"異なる"とは"豊かさ"なのです」と言った市長さんの言葉が改めて胸に響いた。


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