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夏の君に想いを馳せて

うかうかしているうちに夏の足音が聞こえてきた。世はゴールデンウィーク、私のアルバイト先ではかき氷がで始める頃だ。人々は新幹線に乗り地方に里帰り、または家族で飛行機に乗ってリゾート地に少しのバカンス。テレビでは高速道路の渋滞予測が飛び交い、空港でのインタビューではスーツケースに乗っかった子供が「グアムにいくの」と楽しそうに答え父親に頭を撫でられていた。 全て去年までの話だ。今年のゴールデンウィークはちっともゴールデンなんかじゃない。みな息を潜め家に潜り神経を尖らせながら外に出

    • 木曜17時半の友達

      カラン、とジョッキの中の氷が鳴る。 「嘘つきは嫌い」 8月のまだ明るさの残る17時半、上野の大衆居酒屋に俊樹の低い声が嫌に響いた。早い時間だったので私たち以外にお客はなく、掻き消されることはなかった。 まあまあ、と宥める私の手元にはカラになって数分経ったグラスが汗をかいてボーッとしている。次の飲み物を頼みたいのだがこんな友人を目の前にしてはお酒は進むものではない。 「好きな人が出来たってなんだよ、あとは告白にOKを出すだけのくせに。邪魔になったんだよ、俺が」 俊樹は

    夏の君に想いを馳せて