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氷山の一角

物事のごく一部だけが外に表れている様子を、よく「氷山の一角」などと表現します。
悪事の一端だけが世間に明らかになり、悪事の重要な部分、全体像は隠れているなど、何となく悪いことに対して使われるイメージです。

「自民党の裏金問題。報道されているのは「氷山の一角」ではないか?」そんな使い方をしますね。

さて、氷山の一角とは、いったいどのぐらいのことなのでしょうか?つまり氷山が海に浮かんでいる時、海面上に出ている氷の体積は、氷山全体の体積の何パーセントぐらいなのでしょうか?

氷山の氷は純水からできているわけではないし、亀裂や気泡なども入っていたり、温度によっても変わるので、一定ではないでしょう。

理科年表によると0℃の氷の密度は0.917g/cm3だそうです。とりあえず氷山の密度も不純物、孔隙、いろいろプラマイあるとしてとりあえず0.917g/cm3としてみます。
氷山の密度:ρi = 0.917g/cm3

一方、氷山が浮かぶ海水の密度も、塩分濃度、海水温、不純物等で変動はあるかと思いますが、理科年表によると 1.01~1.05 g/cm3 という記載がありましたので、真ん中をとってみます。
海水の密度:ρs = 1.03g/cm3

氷山にかかる垂直方向の力としては浮力と重力があります。

「液体中にある物体は、その物体が押しのけた液体の質量が及ぼす重力と同じ大きさで上向きの浮力を受ける (アルキメデスの原理)」ということですから、浮力F、海水の密度ρs、氷山の水没している部分の体積Vd、重力加速度gとすると、
F = -ρs・Vd・g (上向きの力なのでマイナス)

氷山にかかる重力Wは、物体の質量 × 重力加速度で、氷山の質量は氷山全体の体積Va × 氷山の密度ρiなので、
W = Va・ρi・g

浮力と重力の大きさが釣り合っていると考えると、
ρs・Vd・g= Va・ρi・g

つまり、
1.03・Vd = Va・0.917
Vd/Va = 0.917/1.03 = 0.890

すなわち、氷山の水没している部分の体積の氷山全体の体積に対する割合は約89%、残りの約11%が、海面から上に顔を出している氷山ということになります。

「氷山の一角」それはつまり全体の体積の11%程度ということでしょうか。

もし、明らかになった不正が「氷山の一角」だというのであれば、残りの約9割の不正もぜひすべて明らかにして、スクラッチから出直してほしいです。

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