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東京の下水道台帳

石油の仕事で井戸を掘るときに、掘削深度の基準面を明確にすることはとても重要でした。
南国の掘削現場でよく使われていたのは、掘削リグのロータリー・テーブルを基準とする深度や、地域の標準海水準を基準とする深度です。

ロータリー・テーブル
「最新の坑井掘削技術 (その1)」長縄成実 (石油開発時報 No.148) より
https://www.gipc.akita-u.ac.jp/~geosys/%E6%9C%80%E6%96%B0%E3%81%AE%E5%9D%91%E4%BA%95%E6%8E%98%E5%89%8A%E6%8A%80%E8%A1%93/0602s.pdf

ロータリー・テーブルからの深度はそのまま掘削リグ上で簡単に測定できること、また、泥水圧力などの計算でもそのまま使えることなどから、掘削屋さんにとっては非常に使いやすい深度です。

しかし、ロータリー・テーブルの実際の海抜標高は、掘削リグごとに、あるいは同じリグでも設置条件によって毎回変わるため、地層の深度などを他の井戸と比較したり、物理探査データと比較したりしたい地質屋さんにとっては、海水準を基準とする深度の方が使いやすいです。

したがって、掘削現場では深度を記載する際にはどちらの基準の深度か明記し、ロータリー・テーブルの海水準からの高さも明らかにしておき、どちらを基準とした深度にもすぐに換算できるようにしています。

さて、現在私が携わっている仕事の中で、建築関係の地盤調査も行われていますが、地盤調査で掘削する井戸の深度の基準はどうしているのでしょうか?

建築現場などでは海水準のかわりに、KBMと呼ばれる、工事や設計のために高さを測量する際、一時的に設置する仮の水準点が使われることが多いようです。基礎の端や側溝、マンホールの上などに決められるケースが多いようで、私が目にしたレポートでは近くのマンホールを基準にしたものも多く見られました。ちなみにKBMは「カリベンチマーク」の略だそうで、一時的に使用する仮の水準点(ベンチマーク)を表しています。

つまり建築関連の井戸ではKBM基準の深度と実際の井戸の孔口を基準とする2種類の深度をよく目にします。

そんなKBMの基準としてよく用いられるマンホールですが、マンホールの正確な海抜標高が分かれば井戸の深度も海水準基準に換算でき、他の井戸との地層対比なども容易に行えますねと話していたところ、先輩社員から、「たとえば東京23区内では『下水道台帳』がウェブで公開されているよ」と教えていただきました。

下水道、土木、建築関係の方なら常識なのかもしれませんが、このような詳細な下水道関連データがウェブで公開されているとは知りませんでした。そこにはマンホールの地盤高 (TP) などの情報も記載されています。

ちなみに荒川上流河川事務所ホームページの基礎用語集によると、TPについて以下のような説明があります。

Tokyo Peilの略。
地表面の標高、すなわち、地表面の海面の高さを表す場合の基準となる水準面が東京湾中等潮位であって、記号としてT.P.を用いる。東京湾中等潮位は、隅田川河口の霊岸島量水標で観測した結果から求めた平均潮位をT.P.±0と定め、それを絶対的に固定するため確固不動の固定点に標したものが水準原点であってわが国の水準測点の原点としている。Peilは、オランダ語で基準面を意味する。明治初期にオランダ人河川技師を招いたことの名残り。

ついでに東京の下水道のことをちょっと調べてみました。
そもそも下水道は雨水および汚水を、地下水路などで集めたのち公共用水域へ排出するための施設・設備で浄化などの水処理も行ったりしています。

日本下水道協会によると令和3年度の東京都の下水処理人口普及率は99.6% (東京23区で99,9%) だそうです。

東京都下水道局のページには下水道台帳以外にも非常にためになる情報が沢山ありました。

下水道は特に都市部において、衛生、防災はもちろん、張り巡らされた流路を利用した情報伝達経路としての利用などさまざまな利用方法が考えられる貴重なインフラだと思います。

世の中、知らないことだらけですね。いろいろと勉強になりました。

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