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『起業の天才!―江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男』の感想等

虚業と言われれば、私も虚業で糊口を凌いている。自分がものづくりをしていないからこそ思うのかもしれないが、日本のものづくりは素晴らしい。ただ、現代はこの本で虚業と呼ばれた情報を扱う企業にお金も人も集まる時代になっている。日本のものづくりは素晴らしい、それだけにその成功体験を忘れられず、虚業に軸足を移せずに国自体が儲けられない体質になっているのではないだろうか。

著者はリクルート事件こそが日本がものづくりから脱却できなかった原因だと書いていたが、個人的にはリクルート事件は、日本がものづくりという成功体験を手放せず、虚業に軸足を移せなかったことの証左なんじゃないかと思っている。

本のタイトルになっている通り、江副浩正氏は天才だろう。ただ、だからと言って素晴らしい人間ではない、才能と人間性が確り別のものとして描かれているのはこの本の美点と言えるだろう。

リクルート事件についてはややこしいので置いておくとしても、江副氏はプラットフォーマーとしての最低限守るべき倫理規範を持っていなかった。不幸にも学ぶべき先達がいなかったというのは理解できるが、だからと言ってやれることと、やっていいことの区別もつかないのは頂けない。京セラの稲盛氏が第二電電の創立メンバーから江副氏を外したというのもうなづける。

本では「変容」と書かれていたが、後半江副氏は才能に溺れて人が変わったようになっていく、権力も才能も手に余るものを持ってしまうと不幸になるというのはこういうことを言うのだろうなと、どちらも持ってない私は思うのだった。

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