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ありがとうスーパーサッカー

大好きな番組、いつも必ずそこにあった番組。「スーパーサッカー」が先日終了した。28年、本当にお疲れ様でした。

何事もいつかは終わるもの。わかっていても、残念だった。「Jリーグ元年から続く番組」というブランドはこの先どんなに素敵なサッカー番組が生まれても、絶対に手に入れることはできない。そして、そのブランドを持つに値する、サッカー愛に満ちた番組だった。番組の終了を聞いた時は「スパサカが無くなったら、この先、誰が“ぜんぶ見る”んだよ」と思った。番組後期の名物企画となった「ぜんぶ見る大作戦」は、スパサカが誇る膨大なデータと制作陣のサッカー愛がなければ成立しない。

最後は日曜深夜の放送だったけど、スパサカといえば長らく「土曜日、夜24時〜」だった。加藤浩次さんではなく、生島ヒロシさん(と徳永英明さん)がMCだった90〜00年代、僕は小学生〜高校生だった。めちゃイケ、ヒッパレ、から騒ぎ、SmaSTATION、POP JAM、CDTV、ランク王国、その他深夜のお色気番組も含めて、「土曜の夜」は面白い番組が目白押しだった。スパサカはその中でもエース各だった。サッカーをまだ知らない頃からなんとなくそこにあって、サッカーを始めてからはもう毎週欠かさず見ていた。

サッカー応援番組として双璧をなす「やべっちFC」は2001年にスタートするけれど、スパサカはそれ以前からサッカーやJリーグ、選手の魅力をキャッチーに伝えるエンタメ企画と、グッと核心に迫るような特集の絶妙なバランスでサッカーファンを楽しませてくれた。

ロベカルのバナナKINGと、スピードKINGに文句言うジーコ

バナナKING。「なんか、すげー曲がるフリーキックを蹴れる選手」だった20歳頃の中村俊輔が初登場した時は本当にワクワクしたし、「アウトサイドでカーブかける選手」だと思っていたロベルト・カルロスがインサイドキックでバナナシュート決めた時は、世界の凄さを教えてもらった。

スピードKING。鹿島アントラーズ編のロケでは、どちらかといえば寡黙な印象があった鹿島の選手たちがワイワイとスピードを競う中、神様ジーコが「シュートに、パワーなんていらないんだヨ!」と怒っていた。けっこう怒っていた。「まあ番組の企画なんだし、そんなにキレなくても…」と小学生ながらに思っていたが、今ならわかる。あの頃の日本のサッカーリテラシーは「シュート=インステップで強く蹴る」だったと思う。「ゴールにパスする」はやっぱり名言だと思う。

華やかなサブキャスター陣

そういえば、歴代のサブキャスター、アシスタントMCも素晴らしかった。

最後を飾ったのは、TBSアナウンサーの上村彩子(かみむらさえこ)さん。「かみむらさえこ」と一発じゃ読めないので、必ず振り仮名付きテロップなのが印象的な方。実は4年間も務めていた。最終回の挨拶では、涙で声をつまらせそうになりながらしっかりコメントを納めていた。一人だけ番組を卒業する女子アナなどは、ちょっとオーバーに涙するケースもあるけど、番組自体の終了なので、加藤さんや他の出演者に尺を残すべく、短くコンパクトにコメントしていた気がした。そんな地味ながらも実直な姿は「実は4年間も務めていた」ことに通じるのかもしれない。

上村アナの前任は、同じくTBSアナウンサーの宇垣美里さん。上村アナと対照的で「あざとかわいい」「イイ女」「港区女子」「東京カレンダー」みたいなワードが似合う。スポーツ好きなイメージがない。趣味レベルを超越したコスプレが素晴らしいイメージ。でも、加藤さんがそのキャラクターをうまく料理して、わりと硬派な路線になっていた晩期のスパサカに、バラエティ要素と圧倒的な「華」を添えてくれていた。宇垣アナが番組を卒業する回はかなり泣いていたのを覚えている。いや、嘘の涙なのかな?騙されているのかな?どっちでもいい、むしろ騙されたい。

そして、なんといっても白石美帆さん。個人的には物心ついた時のスパサカのアシスタントMCだったが、当時、女子大生でオーディションから抜擢されたらしい。そしてなんと、スパサカが初めてのお仕事だったという。最終回の一つ前の放送にもVTRで登場し「その後のあらゆる仕事の原点はスパサカだった」的な熱いコメントを寄せていた。あながち嘘じゃないと思う。ドラマやバラエティで見るたびに「あ、スパサカの人だ」と、どこか見守っているような感覚になったのはめちゃくちゃ記憶にある。

加藤未央さんも、たった2年だったとは思えない鮮烈な印象がある。最終回前の番組公式YouTubeにも、ものすごく長文のお手紙を送っていたし、番組終了の発表時にはとても素敵なツイートもしていた。

現在は素敵なママさんになられたみたいだが、音声配信アプリのstand.fmにサッカーやスパサカの思い出話を残している。興味ある人は聞いてみて欲しい。柏レイソルの「ホペイロ1日体験企画」の話をしてたりする。いや、声も素敵。stand.fm更新続けてほしい。

他にも歴代キャスターには素敵な方がたくさんいる。「初代」の西田ひかるは今見ても本当に美人だし、サッカーの3級審判資格取っちゃった「ガチ勢」三井ゆりさんとか。番組中期、6年間に渡って出演していた「マスパン」こと枡田絵理奈さんは、番組公式YouTubeで「サッカー番組担当していたのに野球選手と結婚した件」に完全武装された100点満点の回答をしていたり「夫(堂林翔太)と『俺アウォーズ』してます!」とか話していたりする。同窓会感溢れててとてもいい空気。

演者も含めた制作陣のサッカー愛

MC、解説者、そして何よりも制作チームのサッカー愛は視聴者にも伝わっている。試合ハイライトも「そこ、注目する?」「その情報よく拾ってきたなー」と感じるものが多かったし、ナレーション原稿もJリーグファンをクスッとさせる小ネタをいちいち放り込んでくる。サポーターもそのスタンスをわかっているから、番組向けに横断幕を出したり、番組がそれを試合ハイライトの中で取り上げたり。そんな番組を介したコミュニケーションも見ていて楽しかった。

DAZNに“移籍”したやべっちFCも、最終回の日に合わせて矢部さんがスパサカへメッセージを送っていた。「テレビ局」というしがらみの中では聞けなかったメッセージかもしれないので、とても素敵だった。スパサカまでDAZNに来ることは考えにくいし、あの制作チームあってのスパサカだからそれに関しては再現不可能だとも思う。白石美帆さんが言っていた「いつか『帰ってきたスーパーサッカー』のテロップを見たい」という感情が、確かに一番しっくりくるかもしれない(そう、テロップもスパサカは特徴的だったよなぁ)。

4月からは、スポーツ番組「S☆1」の中で「スーパーサッカー」という1コーナーとして生まれ変わるようではある。でも、いつかまた番組として「スーパーサッカー」を見たい。4年に一度、W杯の時だけでもいい。日本サッカーがもっと盛り上がれば実現するのかな。もしそうなら、日本がW杯で勝ち進む強豪国になる夢と、セットで抱いていよう。

28年間、本当にありがとうございました。

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