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倉敷から尾道に行く、そして宮島に行く

2023年12月の日記の続きです。

12月27日 水

9時半くらいにホテルを出発する。

倉敷駅前は人が少なかった。岡山の中では栄えている場所だと思ってたので、なんだか寂しくなる。
と同時に、ちょっと落ち着く。
忙しない都会よりも断然。
果たして自分はこの先ずっと首都圏で生きていくのだろうか。

しばらく歩いたら、美観地区に着いた。
昨夜歩いたところをもう一周してみる。夜とはまた違った雰囲気だ。

阿智神社に続く階段があって、上は見晴らしが良さそうだったので登ってみる。

階段の途中ですれ違った中学生野球部員たちから一斉に「おはようございます」と挨拶された。
瑞々しくて若々しくて清々しい地元青年たちの声に、観光客のわたしは完全に面食らってしまい、小さく頷くほどのお辞儀で「ども」とつぶやいく。
年長者として情けない。君たちはこんな大人になるなよ。

ということで、顔を真っ赤にしながら上までたどり着いた。
お詣りしようと賽銭箱の前に行くと、そこにQRコードが設置されていた。
なんと進取的な。
賽銭にもシステム手数料みたいなの取られるんだろうか。

昼食はデミカツを食べるつもりだったが、開店前から結構並んでいた。
1時間後の電車に乗って尾道に行きたかったので、デミカツは諦めて、たまたま通りがかった神戸屋カレーに入る。せっかくなので牡蠣フライカレーを食べた。

山陽本線に乗って尾道へ。

およそ1時間で到着し、駅でキャリーケースを預けて早速尾道水道沿いの道を歩く。

東京物語のロケ地である。

ロープウェイで山を登り、千光寺頂上展望台から景色を一望する。

穏やかな尾道水道と、それを挟む尾道・向島の街並み。
ゆったりとした時の流れを感じた。

文学のこみちを下る。

千光寺でお参りして、また尾道の街を見渡す。
海と山が両方あるって素晴らしいなあ。
市街地には高い建物がない。
街は静かで、聞こえてくるのは、風の音と木の葉が揺れる音。あとは船の音と、時折通る貨物列車の音くらい。

もしも自分がここで生まれていたらどうなってたんだろう?
穏やかな時の流れのなかでのびのびと育ってただろうか。それとも退屈して窮屈さを感じていただろうか。
旅行をすると大体、ああここで生まれたかったな、と思う。でも、どこに生まれたとしても、地元から出てる気がする。

古くから海上交通の要衝として栄えた尾道は、今も国内屈指の造船業・造船関連業及び海運業の集積地だそう。

通りかかったみはらし亭という喫茶店に入ってみる。

抹茶ラテを注文して窓際の席に座る。
尾道の街並みを絵画におさめたような窓。

絶景って感じの眺めではなくて、そこで暮らす人間の生活が感じられるような風景だ。

店内は薄く音楽がかかっていて、机の上に本が並んでいる。
そのなかの『マッチと街』という本を手に取る。
この本には、1950年から1990年ごろのあいだに高知市内の飲食店などで作られていたマッチが、なんと700点以上収録されている。
昔は店の宣伝としてマッチが配られていたらしい。
レトロでかわいらしいデザインの箱は、棚の上に飾ってしまいそうなくらいだ。

ちなみに宣伝用のポケットティッシュはマッチから着想を得たそう。ポケットティッシュには、思わず捨てずに取っておきたくなるようなものはないのだろうか。各社もっとデザインにこだわってほしい。

本の話に戻るが、各お店のマッチは町ごとに分類されていて、高知の各エリアの歴史がマッチを通して浮かび上がってくる。
「歴史や文化のない街は、もろい」と書いてあった。

みはらし亭はワンオペで、店員さんは30代くらいの男性。ヒゲとノームコアな服装が似合う、余裕がある雰囲気の、渋い中年おじさんに進化する手前みたいな人。つまりおしゃれな人で、わたしは緊張してしまい、注文時に彼の目すら見れなかった。(全然感じの良い方です。わたしのコミュニケーション能力に問題があるだけです)

しばらくすると50代くらいの女性客が1人入ってきた。
席を確保してカウンターにやって来た女性は、
「えっとね、ホットのカフェラテ1つお願い」と、タメ口で注文した。

この店員さんにタメ口を使えるとは!

景色の良い喫茶店で働く、みんなの憧れの存在である彼に対して!

”年上”という事実のパワーはすごい。
おしゃれだとか、洗練されているとか、そういう俗っぽい物差しが吹き飛ばされて、一気に別の次元に持ち込まれてしまうようだ。

わたしはアラサーだけど、まだまだ外で接触する人の半分以上は自分より年上だろう。
あの女性くらいの年齢になれば、外で接触する人のほとんどが年下になるのか。
そうなったらまた世界の見え方が変わってくるのかなあ。

長い間ぼーっと考え事をしていたら陽が沈んできた。ゆっくりと、オレンジ色の温かな光に包まれる尾道の街を眺める。

夕陽に照らされる家々がきれいだ。 当たり前だけど、一軒の家でも、日が当たっている方はつやつやと明るい光を集めていて、日が当たってない方は対象的な暗さを引き受けている。なんだか人間の頬みたいだ。

ところどころ日の当たっていない家がある。

日当たりが悪い家について、普段はその住みにくさを家の内部環境から語りがちだけど、こうやって俯瞰で見たときにも、孤独を感じさせる冷たさがあるんだな。

「建築家って、山や丘がある町に生まれた人が多かったりするんじゃないか」みたいなことを考える。

みはらし亭を出て坂を下った。

商店街を歩いていたら、おばあちゃんが営む「ブルックリン」という洋服屋があった。

日が沈んだ海沿いを歩く。

『ロスト・イン・トランスレーション』で、スカーレット・ヨハンソンも東京じゃなくて尾道を見てほしかったな。そしたらあんな大都会で孤独を感じずに済んだのに。

どの国の人も、自国が舞台の映画とかを観て「あの主人公はその都市じゃなくて、ここを見てほしかった」って思うのかもな。

駅に向かっていたら、学校帰りの女子高生が2人並んで歩いていた。
2人ともミスドの箱を手に持っている。
放課後のミスドって良すぎる。とりわけあの箱が良い。すべての幸福を運べそうな、取っ手の付いた白い箱。
帰ってそれぞれ、母親や弟と一緒に食べるのだろうか。
なんて幸せな帰り道。

山陽本線に乗って広島駅へ向かう。

この旅行中は川上未映子の『きみは赤ちゃん』を読んでいる。
何年か後に結婚して子どもができたら、こんなにたくさん歩く旅はできないんだろうな。
自分1人の時間も、彼女との2人だけの時間も、段々と終わりが近づいてるのかもしれない。(いまはそんな話全然しないけど)

広島駅についてヴィアインプライムにチェックイン。
広島では3泊するのでアパホテルじゃなくて、ちょっと高いホテルにした。

やはりホテルの部屋には、ベッドとは別にソファと、余裕のある大きさの机(最低限の物を広げてもなお、PC作業ができるくらいの大きさ)と、足の踏み場は必要である。
あと、便器に座ったときの顔と扉の間のスペース。これはとても大事だ。

値段分の勝ちがある良い部屋だ。

少し休憩して、ekieの福ちゃんお好み焼きを食べて、ホテルに戻る。

しかし、大浴場があるホテルなのに、部屋に備え付けてあるフェイスタオルが1枚では、さすがにやりくりするのに無理があるのではないか?
皆さんはどうやってタオル・マネジメントしているのだろう。(フロントで追加の1枚をもらった)

12月28日 木

ホテルに入ってるコメダ珈琲で朝食を食べて、宮島へ。

宮島口駅のトイレは、トイレってより便所って感じだった。

フェリーに乗って上陸。

鹿がたくさんいる。

厳島神社は、回廊の天井が水面の光に照らされてキラキラしていて、とてもかわいい。

ろかい舟が鳥居をくぐっている。
一人で乗るのは勇気がいるな・・・と遠くから眺めていたが、我慢できずに乗った。

一人でもちゃんと笠を被って気分が上がる。

わたしが座った向かいには、お母さんの腕の中ですやすや眠る赤ちゃん。
はじめはそのまま寝ていたのだが、5分くらい経ったら目を覚ましてえんえんと泣いた。
この子からしたら、起きたらいきなり海の上にいるのである。
そりゃ泣くわ。

号泣する赤ちゃんと一緒に鳥居をくぐった。

20分で大人は1,000円のろかい舟、大満足でした。

せっかくだからロープウェイにも乗る。

そういえば小学生の時に祖母と2人で乗ったことを思い出した。当時のことはほとんど覚えてないけれど、もみじ饅頭をたくさん食べた記憶がある。

獅子岩展望台から広島を見下ろす。

青く広がる海と空。瀬戸内海に浮かぶ島々。
こっちはまさに絶景って感じ。

もちろん美しいのだけど、個人的には昨日の尾道の眺めのほうが感動した。

高すぎる場所から遠いところを見ると、それはただの景色になってしまうというか、色になってしまうというか。
獅子岩展望台から見えるのは、海の青、雲の白、島の緑、でしかない。

一方、尾道の坂の上からは、民家の表情が一軒ずつ見えて、そこで生活する人の顔を想像できた。
自分はそっちの方が好きなんだなあということだけわかった。

山頂まで行く気はなかったけど、ちょっとだけ山道を歩いていたら、そこでも鹿と遭遇した。
鹿はわたしの目の前を横切って、弥山の木々のなかへ降りて行った。
そういえば本来は自然のなかで生きる動物だった。市街地にいた鹿よりも逞しく見えた(気がする)。

じゃあ市街地にいた奴らは怠け者なのか? と思って、もっと頑張って生きろよとさっき撮った写真を見返す。のほほんとしている。

(気になって検索すると、市街地の鹿たちは、長く人に依存した生活をしてきたため、自然に戻れなくなっているという。これは鹿にとってとても不幸なことだそう。彼ら彼女らも大変なのだ)

ロープウェイで降りて、商店街へ。
焼き牡蠣の匂いたまらん。日本って感じがする。

堪らず牡蠣屋に入り昼食を食べる。(15時半くらい)
めっちゃくちゃおいしい。
バイトの女子大生たちがとても楽しそうに働いている。良い職場だ。

宮島でバイトしている子たちはどこに住んでるのだろう? 島内? フェリーで通ってる?

帰りのフェリーに乗るとき、高身長の白人男性が、わたしの頭上越しに厳島神社の写真を撮った。

なんという屈辱。

フェリーに乗って宮島口駅で電車を待っていると、貨物列車が通過した。
都内ではほとんど見ることがなかったけれど、尾道から広島で貨物列車をよく見る。
この列車に我々の生活は支えられていることを実感。
物流業の皆さま、いつもありがとうございます。

広島駅の蔦屋家電に行く。

レジのおばさんが「ティーディー楽天などはよろしかったですか?」と言っているのが聞こえた。

一瞬意味がわからなかったけど、ポイントカードのことか。
店員さんは一日に何度も確認するからなんだろうが、さすがに省略しすぎではなかろうか。なんかの呪文にしか聞こえなかった。

連日2万歩以上歩いており、さすがに疲れたのでekieで並ばずに入れる海鮮丼の店に入った。
真っ白で清潔感のある外観で、鮮魚のショーケースには「ランチ海鮮丼、ネタのせ放題」と書いてあった(インスタ映え意識した店)。

うすうす感じていた。ここは見かけほど美味しくないだろうと。

実際その通りだった。

ekieのスーパーに行く。一角にセブンイレブンのスイーツが置いてあるコーナーがあった。

コンビニの数字が小さい値札だと高く感じるけれど、
スーパーの数字が大きいポップな値札だとなぜか安く感じる。
(甘いものを大量に買ってしまった)
これってわたしだけですか?

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