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プロダクトマネジメントの”守”


はじめに

こんにちは、Startup StudioでProduct Managerとして働いているnaniwanです。プロダクトマネージャーとして、早4年が経過しようとしており、実際のプロダクトマネジメントの実務経験と様々なプロダクトマネジメントに関する文献の読み込みを行なっていく中で、私個人の基準ではありますが、プロダクトマネジメントの基本となる要素を一つの”型”として整理していきたいという想いが芽生えてきました。

こういった想いの背景としては、大きく2点あります。

ひとつは、個人的な思いとして、基本となる型を早く体に染み込ませて、その型を破り、そこから離れて自分の独自のプロダクトマネジメントスタイルを確立する、要するに、芸能や武道でいう”守破離”に則って、独自の型を築いていきたいと考えたことが理由になります。そんな想いがある中で、プロダクトマネジメントの文献が色々と出版されるようになってきており、どれも非常に参考になり確からしいと感じている反面、正直なところ、同じところを堂々巡りしている感覚を覚えることが多くなりました。このような課題感を抱く中で、いっそのことそれらの文献を参考に、自分オリジナルのプロダクトマネジメントの”守”に関してはある程度整理できるのではないか、と考えるようになってきました。

ふたつ目は、プロダクトマネジメントに関する全体像について定義している資料が、私の把握する限り存在していないということです。なぜ、存在しないのか?という問いについて、現状の個人的な見解としては、プロダクトマネージャーの職責に関して、そのプロダクトを取り巻く環境の中で求められる役割が劇的かつ迅速に変化していることが理由として挙げられると思います。社会が変化し、テクノロジーも進化する中でプロダクトに求められる価値が代わり、プロダクトマネージャーの役割も変わっていきます。この変化を迅速に捉えて自らがその時にどんなバリューを発揮するべきかを認識できることがプロダクトマネージャーの特別なスキルとして求められているということです。
このような形で、プロダクトマネージャーの職責を単純に体系化することが難しいのは最もではありますが、私自身、事業会社とStartup Studioのプロダクトマネージャーをトータル4年程経験した中では、プロダクトマネジメントを構成する要素として”不変”となるものは必ず存在すると考えております。その不変となるものを型として整理して、それを破り、独自の”新たな型”を築いていくための土台を作りたいと考えるに至りました。

改めて今回やること

今回の内容に関しては、プロダクトマネジメントの”守”となる要素の全体像を俯瞰できること、またその”守”を習得するにあたり、学びの効果を最大化できる切り口を提供することを目的としたいと考えております。もう少し具体的に説明すると、ひとつ目は、プロダクトマネジメントの”守”となる要素を項目レベルで一通り洗い出してリスト化すること、また、プロダクトマネージャーとしてカバーすべきスキルレベルを記載しすることをゴールとしたいと思います。ふたつ目は、既存のフレームワークを活用してフレームワーク毎に要素を振り分け学びを進めるにあたっての濃淡をつけることをゴールとしました。
(なお、各々の要素の中身に関しては別の記事で詳しく説明するような流れにしようと考えております。)

プロダクトマネジメントの要素

プロダクトマネジメントを構成する要素について、一旦の洗い出しを行いたいと思います。一旦とお伝えしてあるのは、先でも述べた通りプロダクトマネージャーの役割が流動的に変化しているものであり、定期的にアップデートする必要があると考えているからです。この定期的なアップデートの中でも常にプロダクトマネージャーのタスクとして維持し続けるものが、プロダクトマネジメントにおける“守”として定義ができるものと言えるかと思います。また、各々の要素に対して、スキルの度合いも合わせて、定義しておこうと思います。

プロダクトマネジメントの要素①
プロダクトマネジメントの要素②

※スキルレベル
1:理解納得ができるレベル
2:日常業務において納得ができる
3:日常業務に支障がない
4:イレギュラーな事象にも対応できる
5:指導や拡散が行える

フレームワークの紹介

各要素の学びを進めるにあたって、切り口となるフレームワークを4つご紹介します。

プロダクトマネージャーの仕事

まずは、プロダクトマネージャーの仕事という軸で見てみることにします。私が考えるプロダクトマネージャーの仕事について、大きく2点あげると、以下の通りだと私は考えております。

プロダクトマネージャーの仕事

1点目の”プロダクトを育てる”という点に関しては、後述で述べるユーザー、ビジネス、テクノロジーの各領域の視点をバランスよく取り入れながら、動くプロダクトを責任もって作り上げる旗振り役を担うということです。2つ目の”プロダクトを届ける”という点に関しては、動くプロダクトを作り上げることができ、世の中に公開することができたとしても、そのプロダクトの価値がユーザーに伝わらないと意味がありません。そういった意味でプロダクトの開発を進める前の検討段階からプロダクトをユーザーにどう届けていくかという視点で検討を重ね、実際にインタビューなどでその価値がターゲットユーザーに対して受容されているのか、慎重に検証していく必要があります。
この2つがプロダクトマネージャーの仕事であると述べさせていただきましたが、よりスピード感をもって”プロダクトを育てる”ことと”プロダクトを届ける”ことをドライブさせていくためには、複数のメンバーとチームを組成して、プロジェクトを推し進めていく必要があります。そういった視点においては、社内外の各ステークホルダーの意見を取りまとめたり、チームを引っ張るマネジメントに関する仕事も大いにプロダクトマネージャーの仕事のスコープに入ってくることになります。

プロダクトマネージャーの責任領域

プロダクトマネージャーがカバーすべき責任領域として、『PRODUCT LEADERSHIP』(Martin Eriksson 他 著)には、ビジネス、デザイン、テクノロジーという各々の領域が重なり合う点が示されております。少しだけ補足すると、ビジネス領域においては、セールスやマーケティングなど、デザイン領域では、ユーザーインタフェースやユーザー体験など、テクノロジー領域では、フロントエンドやバックエンドなどに関する知識領域が内包されております。プロダクトマネージャーとしては、ビジネス、デザイン、テクノロジーの各々の視点を上手く使い分けながらプロダクトの設計、開発を進めていくことにより、バランスの良いプロダクトが出来上がることに繋がっていきます。

プロダクトマネージャーの責任領域

プロダクトの4階層

アイデア出しからプロダクトをユーザーに届けるまでにいくつもの仮説検討を行ないますが、その連鎖を可視化し行き来するためのフレームワークとして、『プロダクトマネジメントのすべて』(及川 卓也、曽根原 春樹、小城 久美子 著)に記されているプロダクトの4階層というものがああります。

プロダクトの4階層 出典『プロダクトマネジメントのすべて』(及川 卓也、曽根原 春樹、小城 久美子 著)

Core領域に関する主なタスクとしては、「プロダクトの世界観」「事業戦略」が該当します。全社のビジョン、ミッションや戦略が会社の経営層から提示されて、それらをインプットにプロダクトマネージャーとしてプロダクトビジョンや事業戦略、プロダクト戦略の策定を行います。Why領域に関しては、「誰をどんな状態にしたいか」というビジョン視点とその中にターゲットユーザーが何をゴールとしていて、どんなペインやゲインを抱えているのかという現状のユーザー視点を内包しております。そして、「なぜ自社がするのか」というビジネス視点の3つの視点でタスクが構成されております。What領域に関する主なタスクは、「ユーザー体験」「ビジネスモデル」「ロードマップ」と記されております。ユーザーの課題を解決するソリューションを検討する階層として、理想とするユーザー視点、そのソリューションでどのようにビジネスを成り立たせるのかというビジネス視点、これらをどういった優先順位、スケジュールで実現していくか、というプロジェクトマネジメント寄りの視点でタスクが構成されております。最後にHow領域に関する主なタスクは、「ユーザーインターフェース」「設計と実装」「Go To Market」で構成されております。主にプロダクトをどのように作り上げていくのかという具体的な実現方法が記されております。この中でプロダクトをどのようにマーケットに届けていくか、という視点にもここで新しく触れられております。

プロダクトマネジメントトライアングル

「プロダクトマネージャーとは何か」という問いに対して、その職責を古くから分かりやすく可視化しているものがDan Schmidt氏が取りまとめている『The Product Management Triangle』というものである。この中では、プロダクトを中心として、開発者、ユーザー、ビジネスサイドとのやり取りが繰り広げられることになるのですが、この3者の間の空白を埋めるのがプロダクトマネージャーの役割であると謳っております。
この空白の埋め合わせを誰が行っているのかについては、在籍している組織やプロジェクトによって異なるのが実情になります。例えば、ユーザー体験と実装を繋ぐUX/UI設計の部分について、一般的にはデザイナーが旗振り役としての役割を全うし、意思決定をプロダクトマネージャーが担うことが多いですが、組織によってはここに人がアサインされていないことも往々にしてあると思います。このような場合の埋め合わせをプロダクトマネージャーがする、などがあります。
プロダクトマネージャーとしては、全ての空白における概要レベルでの知識を兼ね添えておいて、状況に応じて、推進役や実行役としての役割を全うできるように準備をしておく必要があります。

The Product Management Triangle (by Dan Schmidt)

プロダクトマネジメントの要素×フレームワーク

プロダクトマネージャーがカバーする範囲が非常に多岐に渡るため、基本を固める上での優先順位をつける上で上記4つのフレームワークを切り口としてご紹介させていただきましたが、こちらに則ってプロダクトマネジメントの要素を振り分けていきたいと思います。

仕事×要素

上述で述べたプロダクトマネジメントの仕事という切り口で各要素を振り分けてみると以下の通りになります。関わっているプロダクトに何が不足しているか、もしくは自分の役割として何が求められているのか、はたまた自分が何を伸ばしていきたいのか、という観点でどの基本を押さえるべきか優先順位をつけていく進め方が良いと思います。もう一つ付け加えると、最近よく耳にするPDM(プロダクトマネージャー)とPMM(プロダクトマーケティングマネージャー)という括りで見ていると”プロダクトを育てる”役割が前者で、”プロダクトを届ける”役割が後者に値するとも言えるので、自分のキャリアプランに照らし合わせてみるのも良いかと思います。

プロダクトマネージャーの仕事×要素

責任領域×要素

プロダクトマネージャーがカバーする責任領域に対して振り分けてみると以下の通りになります。
ビジネス、デザイン、テクノロジーの狭間に立つのがプロダクトマネジメントであるため、全ての知識を一定程度持ち合わせていることが望ましいのですが、個人としてはどこを強みに置きたいかという視点で学ぶ段取りを組み立ててみると良いと思います。

プロダクトマネージャーの責任領域×要素

4階層×要素

プロダクトの4階層に対して要素を振り分けていくと以下の通りとなります。こちらは少し規模が大きめなプロダクトや組織に適応すると良いと思いますが、この中で役割が分かれている場合に今の役割におけるスキルを伸ばしていきたい、また今後この部分に携わりたいなどの観点で学びの段取りを組むと良いと思います。

プロダクトマネジメントの4階層×要素

トライアングル×要素

プロダクトマネジメントトライアングルにおける各ステークホルダーの狭間で発生する要素を以下の通り振り分けてみました。
こちらも責任領域と似ておりますが、個人としてどこに強みをおきたいかで優先順位をつけてみると良いと思います。

プロダクトマネジメントトライアングル×要素

まとめ

今回、プロダクトマネジメントの“守”を固める上での要素の洗い出しと各々の基礎固めの学びを進める上での切り口について、既存のフレームとの掛け合わせでどう学びを進めるかを提示させていただきました。各々の要素や切り口を眺めていただき、皆様の状況に合わせて適切にご活用いただけると幸いです。

※2023/08/05時点の内容であり、適宜アップデートを入れていこうと思います。




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