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精神保健福祉士のソーシャルワーカージェネレーション

精神保健福祉士の支援として

最近聞いたPSWの支援の仕方。詳しい話はできないが、ざっくり言えばこんな話・・・

A「制度を利用したいと家族が言ってきたのでその制度を利用させたい」
B「この制度を利用するとすれば家族間トラブルにもなる可能性があるので家族からの依頼があるからと言って動くわけにはいかない。本人はどう思っているのか、どう考えているのか?制度を使うにしてももっといろいろな方法をとってからにしたほうがその人の将来のためにも大切なことですから」
A「なるほど。本人と話すことはできていません。話を聞いてくれないので。あまりしつこくするのは本人にとってもよくない。ではその制度を使うために何が必要か言ってください。必要なことを埋めて使える形を作ります」

・・・これは私にとって、いやおそらくほとんどのソーシャルワーカーにとってとても問題がある支援の仕方だと思いたいですが・・・。こういう支援が増えているのは現実に頻発してると感じています。

例えば、就労支援の現場でも本人が使いたいと言っているので、というだけでその人の状況などもほとんど聞かずに就労移行支援事業所を紹介するPSW、部屋が汚れているからヘルパーを無理矢理入れるPSW……これって若いPSWがまだよくよく分からないままやっているだけなんでしょ?というのがこれまでの支援現場で言われてきたことですが、実は若い人だけではないのが大きな問題で、そういう支援が当たり前になってきているのではないか?と思えてしまう事例を聞くことが本当に増えています。

若い人だけでないのはなぜなのか?ソーシャルワーカーとしての経験知がない?これが正しいと思っているのでしょうか?
疑問しか湧いてこないのです。

精神保健福祉士は現在第何世代なのか

以前もう7、8年くらい前にどこかの発表の中で自分たちは何世代なのかで結構違いが出てくる可能性を示したことがありました。最近はえらい先生方も同じようなことをおっしゃっているのであながち間違いではないので少しうれしく思っていますが、自分は何世代なのか考えてもらってもいいかもしれません。

第1世代:医療機関や施設で初めてソーシャルワーカーを雇い入れたまさしく第一人者。周囲にもなかなかソーシャルワーカーがいなかった世代。他機関同士で助け合うことが必要だった世代。・・・と聞いております。

第2世代:一人ワーカーだがソーシャルワーカー同士の連携が作れるようになってきた世代。ワーカーは一人だったが近くの医療機関や施設にもソーシャルワーカーが増えてきた時代。第1世代がいるところは複数になってきている世代でもある。・・・そんな話を若い時によく聞かされました。

第3世代:複数ワーカーの世代。第2世代のところにも複数のソーシャルワーカーがいることとがだんだん当たり前になってきた時代。法律的には精神保健福祉法になった時代。精神障害が「障害者」になった時代でもある。・・・というのが詠み人知らずの世代でしょうか。

第4世代:精神保健福祉士ができた後の世代。これまでの世代は精神保健福祉士ができるまでにすでにソーシャルワーカーになっていた世代。ここからは仕事に就くとき「精神保健福祉士がある」時代。・・・資格がある状態か資格がない時からやっていたかは案外違う感じでしょうか。

第5世代:自立支援法ができた後の世代。措置から契約という形に変更されたあとの世代。共同作業所ではなく法人格を持ったところに変更になったあとです。・・・さまざまな施設や制度もあるので自分たちが何かを作るという意識はなくてもよくなってきている世代でもあるかもしれない。

第6世代:総合支援法になり、社会復帰=就労のように「就労支援」に注目される形になってきた世代・・・現在もここなのかもしれませんが、就労支援のあり方も少し変わってきたように思いますので世代が分かれてもいいのかもしれません。

第7世代:これまでの福祉や医療の形だけでなく株式会社などが入ってきた時代。精神保健福祉士以外の人もソーシャルワークを行っている。企業が福祉に入り込んできた時代であり独立型精神保健福祉士も登場。・・・いろいろなソーシャルワークが出てきて、多様化しています。拡散したらあとは統合化かな?

「・・・」あとは私の感想です。お話をした当時は第6世代まででしたが、第6世代と第7世代は今のところ過渡期であり少しあいまいなところもあるという感じで考えていますが、いかがでしょうか。こんな分け方どう思われますか?

世代による精神保健福祉士としての考え方は違うのか?

さてこのようなジェネレーションによって支援の在り方は変化しているでしょうか。変わっていないところもあるはずで、ソーシャルワーカーの価値・倫理についてはある程度、不変でなければならないと思っていますが、どうなのでしょうか。

昔のソーシャルワーカーからすれば今はソーシャルアクションが弱い、もっとソーシャルアクションをしないといけないと考えたり、ソーシャルワークは地道にやっていくものだ!という感覚のことのほうが多いように思います。若い世代からすればもっとスタイリッシュな福祉にしなければ誰も福祉に人が関心を持ってくれない、もっとマーケティングなども駆使したほうがいいんじゃないか?そういうのもソーシャルアクションだ!と考えたりしているようにも思います。

どちらも必要なことですし、ソーシャルワークの形はそれぞれにあるようにも思えます。
しかし支援に関しては制度が少なからず以前に比べれば充実したことによって「制度にに当てはめる」形が強くなったようにも思います。私のような第3世代からすれば、上記のように家族の話を聞いたが本人とは話すことがないまま制度を使いたいというのは、たとえ家族がとても困っていたとしても大問題なのだと考えます。制度を使うためにもまず本人と話をする、話をしてくれないならどうにかして話す機会を作る、その中で本当に使っても大丈夫なのか自分でも逡巡し、そのメリットデメリットも伝えていくことは一応ベースとして考えてます。「制度はあるので使う……どうやれば使えるのかを教えてほしい」というのではあまりにも手段が目的化してしまっているように思います。
現在の世代のワーカーの考え方はどうなっているのでしょうか。といってもなかなかイメージしかありませんが。
初任者研修を担当しているとアンケートなどで見かける内容では「制度の使い方が分からない」「苦手な人との面接の仕方」「他機関とどのように関係を作るのか」「飲みにケーション以外の交流の取り方」などのキーワードが目につきます。これらをみると対人関係の取り方や結び付ける調整機能で苦労しているんだろうと思えます。そこはこれまでも同じような悩みを持っているのだろうと思えますが、なんとなくそこに質の変化があるようにも見えます。このへんは基本的な感覚の違いにもなってくるのかもしれません。そうであれば教育をするソーシャルワーカーはどこが苦手でどうやって伸ばしていくのかをもっとしっかりと考えていかなければなりません。「私の背中をみてついてきてください!」という時代でないことはすでに分かっている話でもあります。しかし考え方が決していいとは言えないソーシャルワーカーが育てる側になった時にそこで育てられたソーシャルワーカーはどうなってしまうのでしょうか?

ソーシャルワーカーはAI世代を迎えるのか?

どういう考え方がベースにあったとしてもクライエントを支援する形は今も昔も変わらないところは多いはずです。制度利用はあくまでもその人が生活するために必要なこととして使うものであり、当てはめて行う支援ならソーシャルワークはAIで十分できるものになってしまいます。日本のソーシャルワークはそんなAIでできるものにしたいのでしょうか(あ、たぶん政府の考え方でいけばそうしたいのだろうと思いますが・・・)。

契約の時代になり、本人がやりたいと言っているのだからその制度を使うのだ、という紹介の仕方で良いのであれば、例えば目が見えない人が「僕は白杖を使いたくないから何も持たずに外に出るのだ」と言ってきたとしても本人が歩きたいのであれば歩くことを良しとするのがソーシャルワーカーの仕事になってしまいます。そうではないはずで、何があってそうしたいのか話を聞いてそこに起きる問題点や危険性なども含めて話し合うことを繰り返すことからソーシャルワークは始まるはずなのですが、精神障害の世界ではなぜかそれがあまり本人と話し合うこともなく通ってしまっている現状も少なくないように思います。そこには支援者側の「精神障害者はコミュニケーションが取れないから話しても無駄である」という意識が話をする前からあるように思います。また別のケースでは「その人がそうしたいと言っているのだから」ということでそう至った経緯やそういう気持ちになった経緯や経過を聞かないまま「支援」しているという形になっていないでしょうか(それは支援ではなくただの紹介であり、内容を聞かないならAIでなくPCで十分な話です)。そういう意味では支援の仕方や支援のために必要なことを教えていけばAIが発達すればAIのほうが優れたソーシャルワークをしている時代が来るのかもしれませんね。劣化したソーシャルワークが横行してしまうような時代がもし来るのであればAI世代を迎えてもいいのかもしれません。ということはAIよりもひどい対応をするソーシャルワーカーも出てくるのかもしれないということですね・・・(すでにいるかもしれません)。

どの世代にも「???」と思えるソーシャルワーカーはいますし、その人にはその人の信念があり支援をしていることは多いのですが、各世代で特徴的なトラブルワーカーにはどのような人がいるのでしょうか。その正しいと思っている信念が周囲や支援している人たちを悩ましていることも多いのも事実です。ここまで書いてみて自分がそのようなトラブルワーカーになっていないかどうか不安を感じずにはいられないのですが・・・。今度誰か世代別のトラブルワーカーの特徴を考えてみてくれないかな・・・。


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