MHSW表記についての回答?をいただきました・・・これでいいのか?こんなもんなの?

以前アップしたMHSW表記について意見をちゃんとした形で意見を出したらこんな回答が返ってきました。
これは私としては意見募集していたことに対して意見を出したにもかかわらず、理事会で正式ではない回答ということで意味が分からないものをいただいたなあ・・・と半年以上の間なにかしら理事会での見解を待っていたのですが、これ以上の回答はないようなので、どなたが書いたのかは言いませんが、これを読んでPSWはどう考えるのかなあ、と思いましたのでUPしてみます。

といっても回答のところですし、私としては反対……ではなくソーシャルワーカーとしての精神保健福祉士という形が明確な方がいいのでMHSWとしたことで精神保健福祉士がソーシャルワーカー全体に良いものになるのであればそれは賛成します。以下はあくまでも疑問と捉えたものへの回答としていただいたものです。


(前略)
ご提示いただいた疑問につきまして、回答が大変遅くなったことをお詫び申し上げます。また、回答の内容は理事会等において正式に諮ったものではないことをお含みおきいただければ幸いです。


疑問①MHSWという名称は国際的なのか?

まず1点目、国際的にみてPsychiatric Social Workerは使われていないということですが、それが本当であったとしても、ではMental Health Social Workerは国際的であるのか?ということです。国際ソーシャルワーカー連盟はありますが国際メンタルヘルスソーシャルワーカー連盟はあるのでしょうか。知っている人がいたら教えてほしいのです。そしてそこにはどのようなソーシャルワーカーがいてどのような活動が国際標準なのだろうか……そんなことも知りたいと思います。国際的に使われていないのであれば意味は通じても国際的に理解される名称なのかが分からないためMHSWとPSWでの認知度など国際的な比較データかそれに準ずるデータをお教えいただきたいと思います。

(回答)
まず、国際メンタルヘルスソーシャルワーカー連盟は存在しません。また、MHSWとPSWの認知度など国際的な比較データはないと思います。
以下は、主に私が調べた範囲での英語圏での状況になります。
【アメリカ】
MHSWもPSWもソーシャルワーカーのキャリアとして示されていますが、PSWは精神科治療チームの一員に限定された使われ方をしているようです。MHSWはより広い領域で使用されています。いずれにしても精神保健領域においては、臨床ソーシャルワーカー(clinical social worker)のライセンスをもって従事しているSWが多く、各種の心理療法も行っています。
【イギリス】
全英ソーシャルワーカー協会(The British Association of Social Workers (BASW))の公式ウェブサイトにおいてサイト内検索をしたところ、Mental Health Social WorkおよびMental Health Social Workerはヒットしますが、Psychiatric Social WorkおよびPsychiatric Social Workerはヒットしませんでした。
https://www.basw.co.uk/
また、英国ではMental Health Social Workのタイトルがついた書籍がいくつか出版されています。
・Colin Pritchard: Mental Health Social Work: Evidence-Based Practice, 2006
・Martin Webber: Evidence-based Policy and Practice in Mental Health Social Work (Post-Qualifying Social Work Practice Series Book 1545),2011
・Ian Cummins: Mental Health Social Work Reimagined, 2019
・Malcolm Golightley : International Reflections on Approaches to Mental Health Social Work 2019
【オーストラリア】
全豪ソーシャルワーカー協会(AASW)は、連邦政府によって承認された認定メンタルヘルスソーシャルワーカー(Accredited Mental Health Social Workers)の認定機関となっています。
AASWによるとオーストラリアには1万1千人超のソーシャルワーカーがおり、そのうち2,200人以上が認定メンタルヘルスソーシャルワーカーとなっているようです。
https://www.aasw.asn.au/document/item/11704
以上のことをもって「国際的に使われている」と断言はできませんが、国際的に理解される名称ではあると考えます。

疑問②なぜMHSWと呼称するのか?ソーシャルワーカーをメインの名前にしてはいけないのか?

2点目としては「なぜ今更Mental Healthを頭に持ってくるのか?」という点です。今ソーシャルワーカー(というか福祉全体)は人手不足であり、ケアマネージャーなど近接職種がとても増えています。「ソーシャルワーカー」という枠組みで社会福祉士も精神保健福祉士も医療ソーシャルワーカーも団結していくことが必要なのではないか?という議論も出ています。その最中になぜ「ソーシャルワーカー」という統一した名称を選ばずにわざわざ「MHSW」と名乗るタイムスケジュールまで用意して表記を変更しようというのでしょうか。私は協会の英語表記名称を変えるのであれば「Social Worker in Mental Health」でよいのではないかと考えています。これは医療ソーシャルワーカーの専門職団体である日本医療社会福祉士協会が名乗っているやり方と同じです。日本医療社会福祉士協会は「Social Worker in Health Services」としています。ただ名乗りたい人、協会は従来のMSWを名乗っています。「ソーシャルワーカー」という表記を大切にしている形であり、従来から使われている「MSW」も否定するものではないと考えられます。もちろん、これでは「SWHS」と「SWMH」で紛らわしいという議論もあるかもしれませんが、「ソーシャルワーカー」の分野別なので紛らわしくてもさほど問題はないと捉えますが、それではいけない問題なのでしょうか。それとも同じように「in」を使った表記では後追いのようで日本精神保健福祉士協会はいい気がしないのでしょうか。もし、それを気にするのであれば「器量が小さい」としか言いようがないと考えてしまいますが、おそらくもっと違う何か理由があるのでしょう。それ以上にMHSWと名乗ることのメリットが大きいということなのでしょうか。呼称として「ソーシャルワーカー」よりも「MHSW」とする理由が知りたいと考えています。そして議論が尽くされたうえでの決定であればその議論がどのような場で行われ、どういう経過なのか、議事録なども会員だけでよいので閲覧できるようにするのはできないことなのでしょうか。実際にその経過の中でどういうことが基準として「MHSW」となったのかを教えていただければと思います。

(回答)
Social Work in Mental Healthという表記はありますが、Social Worker in Mental Healthという表記は見当たりません。蛇足ながら、Social Worker in Health Servicesという表記も見当たりません。なお、全米ソーシャルワーカー協会は2000年から専門資格プログラムを開始しており、その1つにCertified Social Worker in Health Care(認定ヘルスケアソーシャルワーカー)があります。一般的にはHealthcare Social Workerが使われているようです。

→これに関してはどうも答えをはぐらかされたように感じています。表記さているかどうかということを聞いているのではなかったので、こういう回答されるのはどうなのだろうかと考えてしまいます。そしてMHSWとなった経過などのことが一切記されていません。

疑問③精神保健福祉士の対象は誰?何?なのか。

3点目は法律の問題にもなってしまう問題です。精神保健福祉士法という精神保健福祉士の法律では「精神保健福祉士」とは、第二十八条の登録を受け、精神保健福祉士の名称を用いて、精神障害者の保健及び福祉に関する専門的知識及び技術をもって、精神科病院その他の医療施設において精神障害の医療を受け、又は精神障害者の社会復帰の促進を図ることを目的とする施設を利用している者の地域相談支援(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律 (平成十七年法律第百二十三号)第五条第十六項 に規定する地域相談支援をいう。第四十一条第一項において同じ。)の利用に関する相談その他の社会復帰に関する相談に応じ、助言、指導、日常生活への適応のために必要な訓練その他の援助を行うことを業とする者をいう」となっています。これはいわゆるメンタルヘルス問題を抱えている人たちや国民全体を指しているものではありません。「精神保健福祉士」が対象にしているのは「精神障害者」であってメンタルヘルス問題を抱える国民や人々を表していません。つまり協会が現在目指しているものは法律を変えなければ「名乗るのはそれでいいけど君たちが支援するのは「精神障害者」ですよ」と言われてしまう可能性が高いことを指しているように思えてなりません。まず法律を変えてからでもよいだろうし、変えることを前提にして政治的な動きをしているのでしょうか。動いていたとしても、前述した「Social Worker in Mental Health」であっても何ら問題はないとも思いますので、それであれば2点目の問題に戻っていくことにもなります。

(回答)
 ご承知の通り、精神保健福祉士の養成カリキュラムが改正され、2021年度から新カリキュラムが段階的に導入されることとなりますが、その改正の検討のために厚生労働省に設置された「精神保健福祉士の養成の在り方等に関する検討会」では、精神保健福祉士に求められる役割が拡大している状況を確認しております。
以下少し長くなりますが、同検討会の中間報告書(2019年3月29日)から引用いたします。
【精神保健福祉士の養成の在り方等に関する検討会 中間報告書】(抄)
3.精神保健福祉士の役割について
精神保健福祉士は、精神保健の向上及び精神障害者の福祉の増進に寄与することを目的とした精神保健福祉士法の第2条において、精神障害者の保健及び 福祉に関する専門的知識及び技術をもって、精神科病院その他の医療施設において精神障害の医療を受け、又は精神障害者の社会復帰の促進を図ることを目的とする施設を利用している者の地域相談支援(地域移行支援及び地域定着支 援)の利用に関する相談その他の社会復帰に関する相談に応じ、助言、指導、日常生活への適応のために必要な訓練その他の援助を行うことを業とする者と規定されている。
前述のとおり、精神保健福祉士を取り巻く環境の変化などによって、精神保健福祉士が果たしている役割は、精神障害者に対する援助のみならず、精神障害等によって日常生活又は社会生活に支援を必要とする者や精神保健(メンタルヘルス)の課題を抱える者への援助へと拡大してきている。 さらに、精神保健福祉法の目的にも定められているような、精神障害の発生の予防や国民の精神的健康の保持及び増進への支援、精神障害者の福祉の増進及び国民の精神保健の向上に努めることについても、精神保健福祉士の役割への期待が拡大してきている。加えて、社会における精神疾患や精神障害がある者への意識を変え、偏見や差別のない社会づくりも目指している。
つまり、精神保健福祉士の役割は、ソーシャルワークのグローバル定義2によれば、「社会変革と社会開発、社会的結束、および人々のエンパワメントと解放を促進する、実践に基づいた専門職であり学問である」などとされるように、ソーシャルワーカーとして、各レベル(ミクロ-メゾ-マクロ)の対象や課題、及び構造へ働きかける役割としての期待も増大してきている。 また、これらに伴い、精神保健福祉士の活動の場は、保健、医療、福祉、司法、教育、産業等といった多分野へ拡大し、多職種・多機関との連携・協働の機会も増加している。
このようなことから、精神保健福祉士は、精神障害者をはじめとした精神疾患・障害、精神保健(メンタルヘルス)を中心的課題としつつも、医療・福祉の 発展、法制度や施策の展開、国民の意識の変化などと、時代の変遷やニーズの変化などに伴って、その役割が拡大してきたことが分かる。
今回のカリキュラム改正は、これらの役割の拡大に対応した教育内容とするべく行われたこととなります。
法律上規定する精神保健福祉士の支援対象は精神障害者ですが、必ずしもそこに縛られないことを厚生労働省としても認めていることになると考えます。

→拡大しているからこそ法律として精神障害者が対象となっていることを精神保健福祉士法でも変更すべきかと思っていますが、これは変える気があるのやらないのやら(ないと捉えるほうがいいと考えてしまいますが・・・)

まとめ

ということで回答を無視されるよりはいいかもしれませんが英語表記についてはあまりちゃんとした理由もなかったので何とも言えない複雑な気持ちになっております。

そしてこういうことを会員が提出したのに、その疑問や議論の内容をアップしてくれない協会にもとても残念な気持ちになっております。

とはいえすでにMHSWとして動き出している現状。メンタルヘルス課題に関わるソーシャルワーカーという存在であることは大事なことだと考えています。だからといってMHSWと名乗る必要があるのでしょうか。

医師や看護師が「精神科医」「精神科看護師」と名乗るのでしょうか。まずは「医師」であり「看護師」です。ソーシャルワーカーもまずは「ソーシャルワーカー」であるべきです。そして専門として「精神保健分野」や「医療」や「児童」であることはあってもいいと思っています。MHSWと名乗るか名乗らないかというだけではないのですが、なぜ同じ「ソーシャルワーカー」であることをもっと大事にすべきではないでしょうか。区別を強調するよりもソーシャルワーカーがどの分野で何をするのか、を考えていくべき時代だと思っています。それをしないで自分たちが「ある分野で専門性のあるソーシャルワーカーである」と主張していては、「子ども家庭福祉士」を作ろうとしている国に対して何の説得力もないように感じてしまいますが、そう考えてしまうのは私だけでしょうか。

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