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ミッドサマーを咀嚼する(考察と想像) 2/26追記


2/26 追記しました

観るドラッグ、ミッドサマー。映画そのものだけでもコンテンツとして十分すぎる力を宿しておりましたが、解説を読んだり考察や想像を膨らませることでそのコンテンツ力が何倍にも増幅しているように感じます。

ルーン文字とか服の色とかそういった解説に関しては他の方が素晴らしいnoteを書かれていますし公式解説もありますから、解説はそちらをどうぞ。このnoteでは頭の整理も兼ねて気になったことの考察を書こうと思います。
ネタバレ全開です。

観てない方で視聴を迷われている方はこちらのnoteをどうぞ。

観たけど内容を復習したい方は以下のサイトへどうぞ。

ジョシュがマークの皮をかぶった村人に襲われたの、村人じゃなくてマークのゾンビが襲ってきたんだと思ってました。サイモンの死体も何が起きているのか全くわからなかったので、このサイトで補完できてよかったです。


90年に一度、という違和感

90年に一度の盛大なお祭りである夏至祭に招かれた一行。最初は納得しておりましたが、祝祭の全貌が暴かれて行くにつれて違和感が膨れ上がります。

これ、毎年やってない?

そう思った理由を列挙します。

⒈ メイクイーンの写真多すぎ
世界に現存する最古の写真が1825年のものらしいので(写真のWikipediaより)、写真が発明されてから現在まででだいたい195年。90年周期なら、やっても祝祭は3回。なのにメイクイーンの写真はパッと見ただけで結構ずらっとありましたね。少なくとも数十回くらいはメイクイーン選出してそう
⒉ 72歳で死ぬ老人
今回の祝祭では輪廻転生的な思想で村の老人とその他プラスアルファを殺していましたが、他の年はどうしてるんですかね。勝手に崖から死んどいてってかんじなんですかね。あの死と伝統(?)を大切にするホルガで、そのように死が適当に扱われるのは不自然です。なにかしらの祝祭で弔ってはいそうですね。
⒊ 手慣れたホルガの人たち
90年に1回なら全員はじめての儀式なはずなのに当たり前のように手馴れてんなあ!いくら座学で学んでたとして、相当リハーサルするか毎年やってなきゃあんな風にはならないと思います。
そもそも90年に1度で72歳が寿命なら、後世に体験を直接伝えられる人は存在しないはず。伝言ゲームにするよりは記録に残した方が効率もいいし正しく伝わるでしょう。にもかかわらず、熊の剥ぎ方を次の90年後には死んでいるはずの子供たちに教えていました。いずれお前たちがやるんだよ、という空気で。
⒋ 親を焼き殺されたペレ
普通に生きててそう簡単に両親焼け死ぬ機会なんて巡ってきませんし、ペレの両親は恐らく祝祭で焼かれたのでしょう。老人二人の投身→焼却が先に描写されていたのでそれで死んだのかと最初は思いましたが、そうなるとペレの両親72歳で死んでることになります。どんだけ高齢出産だよってことで最後の家ごと焼却の際に死んでいるので間違いないと思います。
話が逸れますが、ペレの「子供の時両親が焼け死んでいる」「辛かったが周りに支えてもらって今は平気」という発言から、ダニーと似たような経緯を経ている可能性も考えられます。つまり、ペレもかつてのホルガの客人であったと。家族旅行で来ちゃ絶対だめな場所ですけどね。
⒌ 18歳から36歳まで旅に出るしきたり
これはまあ十中八九生贄連れてくるためなんでしょうが、90年に1度だったら祝祭してない時期の旅いらないよねってことになります。あんなに閉鎖的空間で独自の価値観を持って互いに共感しあい家族家族と大切にしあうホルガの民が、新たな価値観の獲得とか精神的成長とか、そんな理由で青年期の人員を無駄に海外で過ごさせるわけがないと考えます。農業は若い男いた方が圧倒的に楽ですしね。
⒍ 三角の建物だけぴかぴか
毎年焼いて建て直しているからぴかぴかなんでしょうね。祭の直前に建てたからと考えることもできますが、90年後に大事な大事なお祭りがあるってわかってたら祝祭終わった直後から早めに建て直し始まりそうなもんですよね。それこそ建物の形状や構造を直に見ている人たちが生きているうちに。


上記のような理由から、祝祭での殺人は毎年行われているんじゃないかと思います。そう考えると、今回の祝祭に90年に一度の特別要素はあまり見当たりません。90年に一度と謳うことで特別感を出して客人の興味をひいている、もしくはちゃんと90年に一度の特別な演出はあったけど我々視聴者が普段の祝祭を知らないから気づけなかった、ということなのでしょうか。


ホルガに招かれる客人について

儀式はホルガから4人、外から4人、メイクイーン選抜の1人で行われます。
90年とか9人とか、北欧神話に絡めて9の数字がよく出てくることは既に多くの方が言及されていますね。

ホルガの規模からして72歳で死を迎える人数は年に0〜4人程度(調整してそう)。もしくは計4人の死をもって人数バランスを保っている。だからホルガからは4人の生贄で、寿命で足りないぶんは志願者を募る。
合計9人なのは解説でもある通り北欧神話がホルガの思想のもとになっているから。そうなるとあと5人必要だが、そんなにホルガ民を殺したら人口が減り続けてしまう。じゃあ外注すればいいじゃない、そんで遺伝子ももらっちゃお!ってかんじで客人の人数が決められたのではないでしょうか。
メイクイーン選抜の犠牲は基本的には外の人が選ばれる。メイクイーンになるのは基本ホルガ民だからそれはほぼ確実に達成できる(メイクイーンに関しては後述)。

なので、毎年連れてこられる客人の人数も基本的には5人。できれば男多めがいい。殺す前に精子だけ貰っておけるから。女を遺伝子要因として迎えるには、ダニーのようにホルガを受け入れてもらわなくてはいけない。普通はコニーみたいに帰る!!!ってなりますよね。それを頑張って洗脳するのはコスパが悪い。
タペストリーの「ラブストーリー」も、誘う側は女でした。毎年、生殖可能年齢のホルガ女子のオキニ男子が精子提供させられているのでしょう。あの一回で妊娠するのか問題はありますけど、あの団体なら排卵日狙って提供させるくらいのことはやってそう。
また、ペレ一行が挨拶するとなぜかダニーだけ飛ばして最後に挨拶される、という違和感のある描写がありました。これはホルガにとって女の客人より男の客人の方が圧倒的に大切だからなのでしょう。

今回、ダニーは最初参加予定ではなかったので元々の人数は5人の予定でした。
その5人も、行方不明になることでホルガが白日の元(白夜だけに)に晒されることのないよう毎年いろいろな国から集められていそうです。今回もアメリカとイギリスという別の地域から集められていました。


メイクイーンになる必然性

もともと参加予定ではなかったダニー。
ダニーが参加することになった直後、ペレはとても嬉しそうにダニーを歓迎し、祝祭の様子をスマホで見せます。ダニーが自分と同じような喪失体験を経ていることから、ワンチャンホルガ入信あるで、と思ったんでしょう。物語後半で長めのキスをしていることから、もしかしたらもともとダニーのことが気になっていて絶望から救ってあげたいという気持ちもあったかもしれません。似顔絵をプレゼントして彼氏の愚痴を聞いてあげたり、つらさに共感してあげたり、ホルガじゃなかったらただ友達の彼女とろうとしてる男ですもんね。じわじわクリスチャンへの信頼を崩していってますね。

浮気を見せた(見ちゃだめって止めてたけど完全にダチョウ倶楽部でしたね)のは彼氏を失った悲しみに共感してダニーをホルガと一体化させるためであると同時に、最後の犠牲者に彼氏を選ばせるためでしょう。ホルガの全貌を知ってしまったクリスチャンはどのみち殺さなくてはいけない。だったら無駄にホルガ民から死人を出すよりクリスチャンを生贄にした方がコスパいいですもんね。

ダニーがメイクイーンになったのは必然ではなかったと思います。ドラッグでバッドトリップしてすぐ転んじゃう可能性だってあった。メイクイーンでなくとも同じこと(彼氏の浮気を見せて悲しむダニーに共感・肯定してともにホルガ入信の流れをつくる)をして入信させることはできたわけですから、メイクイーンに仕立て上げる必要性はそこまで重大じゃない。入信しないなら殺せばいいし。メイクイーンとしてクリスチャンとの決別を自ら選ばせることでもといた世界との決別を決定的にするため、できればメイクイーンになってほしいなあくらいのかんじだったんじゃないかと。もともと、客人は5人(つまりメイクイーンはホルガから選出される)の予定でしたから。


追記(2/26)

後から気づいたことを付け足します。

・経血ジュースについて
客人についての考察で「排卵日狙って提供させるぐらいはやってそう」と記述しましたが、経血ジュースがとれたて新鮮であった場合、あの時期に性交し着床するのは不可能であることに気づいてしまいました・・・。
祝祭に排卵日がかぶる女子をあらかじめ選出しておき、経血を前もって採取し祝祭まで何らかの方法で保存しているのかもしれません。血液なのでそのまま置いといたら固まっちゃいそうですけどどうしているのでしょうね。
書いてて気持ち悪くなってきました。


さいごに

いっぱい書いたから疲れちゃいました。
考察すればするほど、想像すればするほど深みが増すミッドサマー。ほんとうに面白い作品と出会うことができました。

以下のnoteは伏線やオブジェクトの意味についてすごくわかりやすく解説してくださっています。公式の解説とあわせて是非お読みください。





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