だや@光と私語

吉田恭大。1989年鳥取生まれ。歌人・舞台製作者。2014年より公共劇場の事業制作に携…

だや@光と私語

吉田恭大。1989年鳥取生まれ。歌人・舞台製作者。2014年より公共劇場の事業制作に携わる。 2019年3月、歌集『光と私語』(いぬのせなか座)刊行。第54回造本装幀コンクール読者賞・日本タイポグラフィ年鑑2020入選。同年より短歌の一箱書店『うたとポルスカ』を運営。

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最近の記事

エモと西成

 二〇二一年四月。とあるインターネットの記事をしばらく観測していた。ライターの島田彩による『ティファニーで朝食を。松のやで定食を。』という「エッセイ」として書かれたテキストで、仕事で西成を訪れた作者が、偶然現地で出会ったホームレスのお兄さんとデートをする、というような内容であった。  ルポルタージュとして考えるならば、大変グロテスクな取材ではないか。例えば、西成地区の状況、取材対象のホームレス自身の経済的、社会的な困難さについては何も踏まえることなく、単にエモーショナルな異文

    • 2023年の活動と私語

      ↓これまでのやつ。 作品 「五年で辞める」(短歌研究5・6月号) 「フェイルセーフ」(現代短歌パスポート1 シュガーしらしら号) 「山へ免許を取りに行く」(半券005) 「2023.8.17−18」(みやざきぽかぽかたんか) 「否定形と提携」(現代短歌11月号・巻頭50首) 評・エッセイ 砂子屋書房 月のコラム 『運用と手順2』(1〜6月) 『短歌研究』時評(4〜8月) インフラと物量戦/長谷川麟『延長戦』評(塔) その他 「旅先から旅行記を送る旅」(

      • 山へ免許を取りに行く⑦

        山形で食べたものの記録。 時々抜けてますが、毎日きちんと3食食べておりました。思い返せばこの十年で一番健康的な日々だった。 朝晩は宿舎の食堂、お昼は学校で仕出しの弁当を貰い、校内か持ち帰って自室で食べます。 食堂では山形産コシヒカリがお代わりし放題、で毎日2杯3杯食べていた。 あまりに健康的過ぎたので、日によっては片道4キロあるいてマクドナルドに行ったり、片道4キロあるいて山形ラーメンを食べに行ったりしました。 以下、健康的な食事の記録。 このあと送迎バスでまっすぐ東京

        • 短歌連作「されど雑司ヶ谷」

          この暮れも寒い 都電の車内には老人ばかり目についている 巣鴨のマクドナルドには、 ナゲットに「とりのからあげ」と大きくルビがあるという。 老人は赤いものだと知りながら巣鴨の先をゆく西巣鴨 西巣鴨には劇場がある。 劇場はもともと中学校だった。 その前は墓地だった。 墓地のそばに、もう人のいなくなった古い新興宗教の教会があって、 そこも確かに劇場だった。 乗り換え案内。 一例として、都電を大塚で乗り換えたら山手線は日暮里を経て鴬谷に至る。 欲望と無縁の電車を待ちながら

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          20本
        • 『光と私語』についての反響・感想など
          38本

        記事

          1/28都電歌会祭

          都電荒川線を一両貸し切ったので、みんなで乗りにいきましょう。三ノ輪から早稲田まで貸切車両に乗って、そこからグループに分かれて各地で吟行や歌会をします。 日時:1月28日(日)12時30分〜17時 参加費:車内着席2000円/車内立席1500円/中学生以下500円(膝上無料) 当日の予定: 1230 三ノ輪橋都電おもいで館集合 1257 三ノ輪橋駅発 車内で公開歌会(題詠「電車」司会:温)を開催。 自由参加・詳細はお申し込みの方にお伝えします。 1400 早稲田駅着→チー

          1/28都電歌会祭

          インフラと物量戦/長谷川麟『延長戦』

           この二十年で口語短歌は急速に整備されてきた。競技人口と作品数の増加を遠因とする、詩歌の中に使用される語彙や構文(よく誤解されているけれど、これは別に発話体に限らない)の拡張と共有があり、その更新スピードは年々上がっている。  近年の口語による歌集の多くは拡張された詩語の領域を踏まえており、長谷川麟の第一歌集『延長戦』もまた、その延長線に位置している一冊と言えるだろうか。  「ワンバン」も「インスタ」も特に、これらの歌で短歌に初めて登場した単語ではない。ここでは、語が新しく

          インフラと物量戦/長谷川麟『延長戦』

          「ならぶこと、えらぶこと」(短歌研究2023年8月号)

           「短歌研究」5・6月号の特集は、すっかり恒例となった三〇〇歌人新作作品集。今年のテーマは「一周回って」であった。特集が現在の形になって四年目であるが、2021年の「ディスタンス」、2022年の「リ・スタート」に比べると、寄せられた作品の方向性は最も幅があるように思われる。2021年は「ディスタンス」というまさにど真ん中なテーマ設定もあり、広い意味で「コロナ詠」と呼ばれるような作品が多かった。2022年は、原稿依頼のタイミング的にロシアのウクライナ侵攻についての歌が多く見られ

          「ならぶこと、えらぶこと」(短歌研究2023年8月号)

          「揺り戻しに備えて」(短歌研究2023年7月号)

           短歌研究4月号の特集「短歌の場でのハラスメントを考える」について考える。特集についての、ネットでの反応は(それこそ刊行前から)追っていたが、短歌研究誌の「ネットに表出しない読者層」にはどう届いたのだろうか。総合誌でこの特集が組まれたことにより具体的な問題に初めて触れた層もいるだろう。継続的な企画としても、広範な反応をピックアップする必要がある。もちろん、ネットに触れている人間であれば正しい知見を持って適切に行動できるのかというと全くそんなことはないので、だからこそ現段階のト

          「揺り戻しに備えて」(短歌研究2023年7月号)

          「エンタメとその対岸にいるもの」(短歌研究2023年4月号)

           短歌研究2022年12月号には、次号予告として「多角的分析『成長するエンタメ短歌』」という特集名が掲載されている。その後、1月号を見ると当該の特集は掲載されておらず、エンタメ短歌はどこかへ消えた。  その後2月号から連続企画と題し山田航、渡辺祐真(スケザネ)による特集「新時代『現代短歌2.0』」が始まるが、これが「エンタメ短歌」として当初企画されていたものなのかは分からない。予告が最終的に本編と大きく変わることはどのジャンルでもよくあるし、特に気にする話でもないのだけれど。

          「エンタメとその対岸にいるもの」(短歌研究2023年4月号)

          11/11東京文フリのお知らせ

          11月11日(土)文学フリマ東京37のお知らせ。吉田の作品はこの辺りにおります。 歌集『光と私語』2300円 て-13・14 いぬのせなか座 2019年の本ですが、文フリ出ると毎回ちゃんと売れてるとのことで、大変ありがたいですね。3刷目の在庫も残り少なくなってきました。 新刊『みやざきぽかぽかたんか』1000円 S-23 みやざきぽかぽか通信社 連作10首「2023.08.17−18」 雨月さんの企画に呼んでもらいました。 今年の夏に、宮崎で牧水短歌甲子園を観に行きま

          11/11東京文フリのお知らせ

          運用と手順23(「塔」2021年12月)

          皆様いかがお過ごしですか。 「現代詩手帳」二〇二一年十月号は「定型と/の自由」というテーマで、久しぶりの短詩形特集であった。(前回が二〇一〇年六月号、黒瀬珂瀾の編による「ゼロ年代の短歌100選」を読み返すと感慨深い) コンテンツとしては、佐藤文香・山田航・佐藤雄一による三詩形座談会「俳句・短歌の十年とこれから」や、藪内亮輔「多様化するリアリズムと、その先」など、最近の状況を概説するような記事が、各人の歴史観が浮き彫りになって興味深かった。藪内の論考を引く。 これは前提共有と

          運用と手順23(「塔」2021年12月)

          まちおかのある街に暮らして/絹川柊佳『短歌になりたい』

          短歌になりたい。わかる。わたしだってなれるならなりたい。本当に? わたしたち人間は、短歌を作ることも、あるいは見方によっては短歌の中の登場人物になることもできるのだけれども、人間は短歌ではないので、短歌そのものになることはできない。 いずれも、都市部の年若い人間の暮らしを読み取ることができるが、とはいえこの歌集を、日常を丹念に描写するタイプの、いわゆる既存の「日常詠」「生活詠」の範疇で扱うのはなかなか難しい。 例えば、この歌集の飲食の歌の多くは菓子類で、しかも「おかしのま

          まちおかのある街に暮らして/絹川柊佳『短歌になりたい』

          山へ免許を取りに行く⑥

          無職なりに色々と忙しく、しばらく間が空いてしまいました。 これの続き。今月中に完結させたいですね。 ◎ 免許合宿に行く、ことについて、基本的にあまり人に言わないようにしていました。仕事関係では、しばらく山へ行きます、とか適当な感じではぐらかしていたら、ヨシダがいつの間にか地方移住することになっていた。 いや、別に隠さなくてもいいんだけどね。色々理屈こねて旅立った挙げ句、もし免許取れなくて泣いて帰ってくることになったら恥ずかしいじゃん。 万が一泣いて帰ってきてもネタにし

          山へ免許を取りに行く⑥

          9/10大阪文フリのお知らせ

          大阪文フリのお知らせです。 例によって吉田本人はいません。 『半券005』に呼んでいただきました。 連作「山に免許を取りに行く」 エッセイ「ティファールを沸かす」 を寄稿しています。 ブースは【O-39】半券。 新刊『半券005』は頒価400円。 歌集『光と私語』(2300円)も置いていただきます。 吉田の新作「山に免許を取りに行く」は これの短歌バージョンですね。 しばらく別の原稿で中断してましたが、note連載版も再開します。併せてお楽しみいただければ。 どうぞ

          9/10大阪文フリのお知らせ

          第13回牧水・短歌甲子園の歌

          8/19・20と宮崎県日向市の第13回牧水・短歌甲子園に行ってきました。 一緒に行った長谷川さんと雨月さんが短評書かれてましたので、わたしも何首か引いておきたいと思います。 ざりざりと血が滲んでいる新学期 談笑って右足からだっけ/岩本菖 下の句の言い回しから、混乱している様子、過度の緊張が伝わってきます。気負いのつたわる歌。上の句の『血が滲んでいる』は心理的な描写だと取ったけれど、噛み締めた唇とか、具体的なところに落とし込んでも良いのかも。 競技会張り詰めた空気解けると

          第13回牧水・短歌甲子園の歌

          山へ免許を取りに行く⑤

          前回はこちら ようやく一日目の授業がおわりました。 初日から車乗ると思わなかった…というか、一念発起して申し込んだ割に、自動車学校についてほとんどなにも把握していませんでした。 まずは仮免を取らないと路上に出られない、とかそういうことすら、ついさっき理解したところです。 こんな感じで本当に18日後に卒業できるのか…?不安とか焦りよりも、何一つピンと来ていないまま免許合宿が始まりました。 何一つピンと来ていないまま、送迎バスで宿舎へ。 宿舎は、近隣に何ヶ所か散らばっていて、

          山へ免許を取りに行く⑤