ピーター・スカルソープ 弦楽四重奏第12番From Ubirr 日本初演


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2019年11月30日 第2回あたたかいまなざしの演奏会


ピーター・スカルソープ 弦楽四重奏第12番From Ubirr 日本初演


第一ヴァイオリン 杉原蓮子


第二ヴァイオリン 池田裕紀子


ヴィオラ 大久保勇也


チェロ 永末実


ディジュリドゥ 水越健一


オーストラリアの作曲家スカルソープは、先住民族アボリジニの文化に感銘を受け自らの作品に彼らの伝統楽器であるディジュリドゥを取り入れた作品を多く発表している。


その中でも1994年の弦楽四重奏第12番FromUbirrは彼がオプショナルディジュリドゥを加えた最初期の作品となった。 もともと管弦楽で作曲されたアースクライを弦楽四重奏にアレンジしたものがこの曲である。


作曲者がアーネムランドで耳にしたというアボリジニのソングを中心に置き、荒々しいオーストラリアの灌木地帯の風景を音型化しているかのようだ。


今回の演奏が日本では初演となり、彼の著作権を管理するフェイバーミュージックのサイトには本日の演奏が記録されている。 これまで行われた演奏は、普通のディジュリドウを使ったコンテンポラリー奏法であるが、 本日の演奏では実際に現地で製作されたイダキを使い、伝統奏法を駆使して演奏される。 この試みも世界初であるだけでなく作曲者が意図した、さらに先にある想いを具現化したものである。


この曲は第2ヴァイオリンとヴィオラの活躍が多く、作品全体の基幹を形成する。 第2ヴァイオリン池田佑紀子の明解なタッチとヴィオラ大久保勇也の絶妙なグルーブが正に作品の根幹を力強く形成する。 そして第1ヴァイオリン杉原蓮子が紡ぎだす華麗なカンタービレに現われるメロディこそスカルソープが現地で耳にしたという歌である。 さらにアクセントを加えるのが末永実のチェロが作品のストーリー性を強調するかのようだ。 水越健一のディジュリドゥ(イダキ)がコンテンポラリー奏法とトラッド奏法を融合させた荒々しい音風景を現出させることに成功している。


ピーター・スカルソープとマリクク・ウィルパンダに捧げる。


Dedicated to Peter Sculthorpe and Marikuku Willpanda


弦楽四重奏第12番とアースクライの関係、
スカルソープは1986年に管弦楽のための作品であるアースクライを作曲。後の2003年にスカルソープは、このアースクライにオプショナルディジュリドゥ を加えたバージョンを改作している。
そしてアースクライを1994年に弦楽四重奏へと編曲したものが、この弦楽四重奏第12番となる。ディジュリドゥ はオプショナルとなっている。サブタイトルとして「ユビルーから」と「アースクライ」と書かれている。
さらに2003年に彼は、このアースクライを今度は弦楽オーケストラ版に編曲している。「ユビルーから」というタイトルで、こちらもオプショナルディジュリドゥ となっている。
整理すると、
1、アースクライ=管弦楽曲
2、弦楽四重奏第12番=弦楽四重奏
3、ユビルーから=弦楽オーケストラ
となるわけだ。
さらに、ややこしいことにスカルソープは、1999年にアースクライの短縮版というものを発表している。こちらは管弦楽のみでディジュリドゥ はなし。
アースクライは、よほど彼にとってのお気に入りの作品だったのであろう。


1.第一ヴァイオリン側カメラ



2.ヴィオラ、チェロ側カメラ



3.客席中央カメラ



4.客席後方カメラ


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