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日本社会の髪型や服装に対する考え方が狂っているという話

●おしゃれをすると怒られる国、日本


ここ数週間、早起きをして世界陸上を見ていた。

僕は体育会系の考え方は大の苦手だが、スポーツを見ることは大好きなのだ。

見ていて好感を持ったのが、
おしゃれを楽しんでいる海外選手が多い
という点である。

例えば、ジャマイカのシェリーアン・フレイザープライスという女子短距離の選手は、レースごとに髪の色が変わる。

といっても、毎回染めているわけではなく、ウィッグを被って走るのだ。
何でも、レースの際には宿舎に大量のウィッグを持ち込んでいるのだとか。

オレンジのウィッグを被っていた時には、

「オレンジ、好きな色なの。ロケットから出る炎の色ね」

という言葉を残している。

そして、本当にロケットのように速く走り、メダルを獲得した。なんとまぁかっこいいこと。

↑フレーザープライス選手のGoogle画像検索のページはこちら。


ここまではいかなくても、他の多くの海外選手(男女問わず)も、それぞれがルールの範囲内で、おしゃれな姿を披露していた。

好きな格好を楽しみ、注目されることを楽しみ、競技を楽しむ。
素直にかっこいいし、魅力的だ。

もしも、これを日本人の選手がやったらどうなるだろうか。
たぶん、チャラチャラするなとか、競技に集中しろとか、それはもうボロクソに批判されてしまうだろう。

事実、スキージャンプの高梨沙羅選手は、「メイクが濃くなった」というだけの理由で、ひどく批判をされていたことがある。
かわいそうに。

彼女に結果が出ていない時など、

「整形したのではないか」
「見た目ばかり気にして練習に身が入っていないんだ」

という声も少なからず上がっていた。
とても失礼だし、宇宙一大きなお世話だ。

狂っているとしか言いようがない。

これに対して、

「結果を出して見返してほしい」
「すでに十分な実績があるんだからいいだろう」

というような擁護する意見も上がっていた。

これらの意見は、一見肯定しているように見えるが、僕はこれもこれで違うと思っている。

「結果」とか「実績」とか、関係ないだろう。

別に、結果が出ていようが出ていまいが、好きにすればいいのだ。

世界1位の選手だろうが、地区大会で最下位の選手だろうが、好きな髪の色にして、好きなメイクをすればいい。
そこには平等な権利があるはずだ。

おしゃれをすることが、さも「結果を出している人の特権」であるような認識をしている時点で、もうおかしいのだ。

●「無頓着」が大人とされるおかしな風潮


これは、スポーツだけの問題ではない。

日本ではいまだに、会社員がちょっと派手目のメイクやネイルをしたり、髪の毛を染めたり、強めのパーマをかけたりするだけで苦言を呈されることが多い。

もちろん、業種によっては厳しくせざるを得ない場合もあるだろう。
TPOをわきまえるとか、お客さんに与える印象とか、そういったものを否定するつもりは毛頭ない。

でも、その「TPO」だとか、「お客さんに与える印象」とかの基準は、何とも曖昧だ。

そもそも、「お客さんに与える印象」を理由にするのだとしたら、一般的に「注意をする側」として認識されている中堅・ベテラン陣の方が、直すべき点が多いのである。

  • 「あんたどうせすぐ大きくなるんだから」と2サイズ上の制服を買われた中学1年生くらいダボダボなスーツを着ている主任

  • 自分で噛んで切っているせいでガッチャガチャな爪になっている係長

  • 気象衛星ひまわりから見た熱帯低気圧くらいハゲ散らかした課長

  • タイムカプセルから取り出した直後なのかと思うくらいシワシワなワイシャツを着ている部長

  • 両耳に藁人形突っ込んだのかと思うくらい耳毛が出ている専務

これらを全部、改善しなくてはならない。

少なくとも僕がお客さんだったら、パーマやネイルや染髪なんかよりも、上記のほうがよっぽど悪い印象を持つ。

なぜなら、「おしゃれ」とか言う前に、「身だしなみ」ができていないからだ。

ところが、日本の社会では「おしゃれ」と「身だしなみ」を一緒くたにしてしまう。
それどころか、本来重視すべき「身だしなみ」を二の次にして、「おしゃれ」の方を忌み嫌うのである。

「薄毛はその人の自然な姿なんだから、ネイルやパーマと一緒にするな」

という声が聞こえてきそうだが、それは全く的はずれだ。
薄毛を批判しているのではなく、「整えていない」ことを批判しているのだ。

重視するのが「お客さんに与える印象」であるならば、自然かどうかは関係がない。お客さんが「うわ」と思ったら、それはもうダメになるはずだろう。

僕は以前、ゆるふわパーマのイケメン若手が、禿げ散らかした上司に

「パーマなんかかけやがって!」

と怒られているのを見たことがある。

いやいや、お前はその若手に、少しは見た目の改善についてのアドバイスをもらえ。
出勤前に戦に出陣してきたみたいな髪型しやがって。

もっと言うと、「お客さんに与える印象」を重視するならば、パーマや染髪なんかよりも、実は丸坊主の方がよっぽどアウトだ。

僕はパーマをかけている人や、髪を染めている人に何か特別な感情を持ったことはないが、丸坊主の人については、ちょっと「怖い」と思うときがある。

丸坊主でちょっと色付きのメガネをかけているような、「極道のジェネリック」みたいなベテラン社員なんか、間違いなくお客さんに恐怖心を与えるんだから、本来は真っ先にアウトになるべきだろう。

●「身だしなみ」を整えて、「おしゃれ」をすればいい

結局、「TPO」とか「お客さんに与える印象」なんてもんはあくまで大義名分であって、その根底には
「見た目で個性を出そうとするのは下品なこと」
という、なんとも愚かで浅はかな認識が根強く残っているのだろう。

見た目に気を使っている人が、気を使っていない人に苦言を呈されるような風潮は、控えめに言ってもクレイジーだ。

「自由な発想」とか「ダイバーシティ」とか「誰もが活躍できる社会」とか「個性を活かした社会」とか、そんなものを打ち出す前に、まず社会に蔓延している、

「派手な格好ははしたない」
「おしゃれをする=仕事に身が入っていない」

というような、世にも恐ろしい価値観を根絶させないといけない。

そして、「おしゃれ」と「身だしなみ」の区別くらいはつけられるようにする必要がある。

少しでも個性的な服装をしているだけで苦言を呈するようなやつらは、せめて最低でも、毎朝髪に櫛を入れ、爪をきれいに整え、清潔でサイズが合った服を着やがれってんだ。

他人の見た目にケチをつけるのは、まずそれができてからだ。

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