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タイラー・レイク -命の奪還-の感想(ネタバレあり)

最近休日はモンハンやったり、家に全巻あるワンピースを読み返したり中学生みたいな生活をしている。
職場も田舎の山奥でコロナの脅威もまだそれ程来てないので普通に通えてるけど、ぼちぼち取り引き先とかにも影響出てきたみたいだしどうなるかよく分からないし不安だ。

そんな状況で観た今作だけど、コロナで鬱屈した日々を吹き飛ばす素晴らしい作品だった。

なんといってもルッソ兄弟のプロデュースのゴリゴリアクション映画という事で観ない訳にいかない。
監督さんはMCU作品などでスタントコーディネーターとして第一線で仕事をしてきたサム・ハーグレーヴという人。
MCU以外だと「アトミックブロンド」など、とにかく口アングリな作品に関わってきた人。

そんな布陣で撮る作品なので、アクションシークエンスはめちゃくちゃ凄い事になっていた。ガンアクション、カーアクション、肉弾戦、どのシーンも本当にハイクオリティ。

とにかく前半で驚く様なアクションはほとんどブッ込んで、後半は登場人物に思わず感情移入してしまうドラマ部分にハラハラする様な作りがとてもいい。脚本はジョー・ルッソが担当しているらしいけど、流石。
上映が開始してすぐにスムーズに登場人物の紹介をサラッと語っていく手際がまあ上手い。

オヴィが一人孤独を抱えている事も、ピアノを弾く様子とかでセリフなしでしっかり伝わってくるし、サジュとの関係もなんとなくこの時点で想像出来る。

割とゆったり進んでた同級生とのやりとりなどの日常描写が文字通り暴力的にブツ切られあっという間に誘拐される。
そういえばこの同級生とかもそうだし敵側の子分のちびっ子もそうだけど子供だろうと容赦なく殺されるのが観ていて結構ハードだった。
あと中間管理職として追い詰められていくサジュの描写とかも観ていて胸が詰まる。

次は我らが雷神ことクリス・ヘムズワース演じるタイラーが登場。彼が湖に飛び込む所もオヴィと心を許した時の会話やラストにも繋がる重要なシーン。彼の命をドブに捨て続けてきた生き様がしっかり伝わってくる。

そしていよいよそれぞれの思惑が渦巻くオヴィの奪還へと話が転がりだしていく。

まずタイラーの捕まる所からアクションが始まっていくのだけど、ここのほぼ一人でチンピラを皆殺しにするシークエンスのコップとか鍬とかその場にあるものを使っていく感じがイコライザーみたいで楽しい。
「スタントマンさん大丈夫なの?」って不安になる程の激しさなのだけど全体的にはこの辺は全然序の口なのが凄い。
頭だけぶつかって体がグルって倒れるビックリ映像シーンヤバい。

ここからサジュの裏切りが発覚して怒涛の逃亡劇に突入していくのだけど疑似長回しアクションシークエンスが本当に気が狂っていて最高。

まずカーアクションから始まっていく。
カメラがクリヘムの車を後ろから追いかける形になったり、車内の様子を映したりどうやって撮ってんのか分からなくてひたすら驚くし、メイキングみたらかなり人力でやっている様子にも更にただただ驚く。

次は特殊部隊から隠れる&反撃していくくだり。
この団地みたいな狭い空間で特殊部隊員目線でなかなか二人が出てこない緊張の引き延ばし方にドキドキ、ここぞという所で鬼の形相で出てくるタイラーに思わず声出た。

そしてサジュが襲ってきてからのナイフ戦。
ルッソ兄弟プロデュースという事もあり「キャプテンアメリカウィンターソルジャー」の市街戦とかを思い出すのだけど、あっちは超人VS超人のバトルだったのに対し、こちらはかなりリアルで泥臭い闘い。
ここでの持っていた銃を落としたのでナイフを出し、ナイフがなくなれば殴りあいになっていく見せ場としてではなく、ロジックでアクションを組み立てていく感じが最高。
車でぶっ飛ばされての決着、2回あるけど、どちらのシーンもビクッてなる。

ここの長回し全体がそうなのだけど、そこら中に普通に暮らしている一般人が溢れていて観てるこちらは巻き込まれるんじゃないかとヒヤヒヤする。

どんだけのエキストラを管理して演出したらあんなのが撮れるんだろうか考えたら気が遠くなる。カーアクションのギリギリでよける人達とか本当凄い。

アクションシーンがただアクションを見せる為だけに機能している訳ではなく、登場人物の物語を語る為に必要なモノとして使われているも良いなぁと思う。
アクションを通してそれぞれのキャラクターがちゃんと成長していっている。

オヴィとタイラーの関係性もセリフのやりとりだけではよくある映画として流してしまいそうだけど本当に役者やスタントマンが身体を使って撮影しているのが伝わってくるので「彼を命に代えても守る」という物語的な説得力が半端じゃない。

お話自体は麻薬王の子供を家族を亡くした命知らずの傭兵が子連れ狼的に国境越えを目指す、、、ってこないだやってた「ボーダーライン ソルジャーズ・デイ」と全く一緒じゃん。というか似たような映画を何回も観てきた。

ただソルジャーズデイ程はヒリヒリした冷たさはない。あっちは簡単な救いなど用意していない感じがリアルだったのだけど、「タイラー・レイク」はよりエンターテイメントよりでほとんどの人が楽しめるバランスの作品になっていると思う。

タイラーの「俺を信じるか?」に対し「信じない!」と言っていたオヴィが「彼を信じる」と最後に言う所ととても熱い。

あと僕は最初名前を言わせてカメラで動画を事務的に撮っていたシークエンスで始まった二人の関係性が下水道の所で改めてお互いに自己紹介し合う所の心を許し合っていく感じとかとてもグッときてしまう。こういう繊細さは脚本のジョー・ルッソ流石だと思う。

終盤味方になるサジュも前半での家族への思いが丁寧に語られていたので、やっている事はズルいし悪いのだけど、全く嫌いなれない描き方。

オヴィに対しても愛情をちゃんと感じるし、タイラーとは一度喧嘩(殺し合い)した事によって信頼が生まれているような少年漫画的な絆が良いよね。

悪役側の人達もめちゃくちゃキャラが立っていて好き。

若くてイケメン麻薬アミールも常に静かな物腰なのがサイコパスな存在感で良いし、いつもイライラしてるプロレスラーみたいな側近の人も乱暴すぎて怖くて素敵。こども屋上から落っことす所凄い嫌な感じだった。

後何といっても知恵と度胸で成り上がっていくファラド君が最高。一度目の敗北からタイラーに一撃を喰らわせるに至る成長を考えると感動すらある。もし続編があるなら敵側は彼を主軸にした話になればいいなぁと思う。

気になる所もあるっちゃある。

特にサジュの作戦どうすれば正解なのかよく分からなかった。傭兵雇うお金払えないから、助けてもらった後オヴィを横取りする感じだったと思うのだけど、成功してもアミール側からも絶対また狙われるし、傭兵チームだって黙っていないでしょ。救い出した後の事を何も考えてないんだろうか?もうちょっと彼の作戦の全容を説明してほしかったなぁという気もする。

まあでもアクション映画として本当に素晴らしい所だらけだしそんな事は些細な事。
まあないものねだりにはなるけど、これだけの作品なので映画館で観たかったなぁ、という気持ちはある。コロナ自粛期間終わったらどっかの映画館でやってくれないかな、、、

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