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「クルエラ」の感想(ネタバレあり)

イオンシネマ京都桂川で鑑賞。
ほぼ女性のお客さんだけで満席。
観終わって後ろから「今まで観たディズニー映画で一番良かった、、、」と話している女性が居て、これまでにないディズニーヒロイン像を作りたい!という気合がビシビシ伝わってくる作品だったし、作り手に教えてあげたい。

アイ,トーニャ感

「アイ,トーニャ史上最大のスキャンダル」のクレイグ・ギレスピー監督作品。
僕はこの監督作品は「アイ,トーニャ」しか観れてなかったけどかなり通じる要素が多かった。
母親との確執、主人公の主観的な視点で進む語り口、それでいてサクセスストーリーとしても上がる感じもそうだし、今回のエマ・ストーンの配役は最高なのだけど、ちらちらマーゴット・ロビー版とかも想像しながら観てしまった(そうなると完全にハーレクインになるのでもちろんエマ・ストーンの方が良いというのは大前提で)。

ファッション映画

そしてもう一つの主役はおびただしい数のお洒落な服の数々で観てるだけで圧倒される。「MADMAX怒りのデスロード」でも最高だった衣装デザインのジェニー・ビーヴァンがめちゃくちゃ良い仕事をしている。
僕はもちろん服のデザインの事とかは分からないのだけど、それでもデザインを比較する時に「確かにこっちのデザインの方が美しい」というのが、観ていてなんとなく分かる様に出来ているのは凄い気がする。
後、ファッションショーに乱入してクルエラがバロネスにかますシーンはどれも楽しい。中盤の噴水でのライブシーンがめちゃくちゃカッコ良くて観てるだけで気持ちが上がるし、あそこのやってやったり感は最高。

音楽使いも印象的で実際のヒット曲がガンガン流れるので、これまでのディズニープリンセス映画と違って現実との地続き感がより増している気がした。
ファッションと同じく音楽も全く詳しくないので選曲の意味合いとかは読み解けないのだけど、どのシーンも映像とバッチリ合ってカッコいい。

クルエラ

自分の出自を知ってなお、母親と同じ「人と違う自分」を肯定し、呪われた性だとしても「努力はしたけど良い子になれない。なぜなら私は私以外の生き方は出来ないから。」と、高らかに宣言し、亡き育ての母に愛の言葉を送るシーンは演じるエマ・ストーンの素晴らしい表情もあって思わず涙が出てくる。

ここで彼女は実の母親と同じ様な他者を道具として見ないやり方では彼女を越えられない事を理解し、育ての母親の優しさも少し受け継ぐことで他者を信頼しチームで戦う事を選ぶのが、とても熱いと思う。

正直この柔軟さを手に入れた事で、ヴィランとしての前日譚としてこの後に繋がっていくという意味では微妙な気もする。だって悪人じゃないじゃんっていう。
ただここまで観てきた映画そのものが、あまり信用出来ない彼女自身のモノローグでも分かる通り「主観で美化した物語」でもあるし、客観的な視点では実際に起こったことは全然違うという可能性もある気がする。この辺は「アイ、トーニャ」とかとも通じる要素。
でもそれはこの映画の魅力を損なっている訳ではなくて「正しく生きれないとしても自分で自分を肯定する」という軸からは、ずれていないのでそれも含めて僕はこの映画が好きだ。

エマ・ストーン的には「女王陛下のお気に入り」のしたたかに成り上がっていくアビゲイルと、かなり通じる要素が多いキャラクターだと思う。
前半の奴隷の様な扱いを受けるシーンでもめちゃくちゃ表情がコミカルで笑えるバランスになっているのは流石。本当コメディエンヌとしても素晴らしい女優さんだと思う。

バロネス

実際の母親だと明らかになった所でますます「アイ,トーニャ」のアリソン・ジャネイと一緒じゃん、という構図になる。

ただ「アイ,トーニャ」ではこのクソ母親に対して復讐する様な場面はないけど(実話なので当然なのだけど)、今作では「母親越え」がテーマになっていくのがエンターテイメント映画としてスカッとして良い。

ただやはり仕事のセンスに関しては超一流で途中のお酒を飲む所でも分かるけど、クルエラに対して憎たらしい感情だけではなく自分と同じ天才だからこそリスペクトもしていて、複雑さも含めて愛嬌と人間味たっぷりにエマ・トンプソンが演じていて、観ているだけで楽しい。スタンガンの威力試すのに2人も使う所、意味無くて笑った。

後、ケルベロス的に連れている犬がダルメシアンという絵面が若干のマヌケ感も含めて凄く良い。

他の登場人物で印象的だったのは、ダメ可愛いポール・ウォルター・ハウザーが何気にしっかりディズニー映画感あって良い。ほぼアイトーニャと変わらない佇まいなのだけど。
片目のチワワとの相性抜群でどっちも可愛い。

ディズニーヴィランを主役にした映画で言うと「マレフィセント」があったけど、そちらの様に「実は悪い人じゃなくて良い人でした!」でハッピーエンドにするのではなく、悪い部分も含め自分を肯定する事をハッピーエンドにしているのが、とても真摯だと思った。
今作の方が僕は断然好き。

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