三世代ヨーグルトのお話。
「熟れたバナナほど美味しくなるのよ」
そう言って母は、ギョッとするほど真っ黒なバナナを嬉しそうに剥いてはボウルに放り込みスプーンで押しつぶした。
そして、ペースト状になったその上に真っ白なヨーグルトを惜しげもなく投入した。
オーブンレンジの操作音が聞こえてから、ほどなくして家の中に香ばしい匂いが立ち込める。
母の焼くバナナケーキはしっとりと濃厚で私の大好物だった。
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幼い頃は毎朝の決まりごとのようにヨーグルトを(ヨーグルトのまま)食べていた。でも社会人になってからは「料理の引き立て役」として蓋をあけることが多くなった。
例えば、手軽に作れてホームパーティでも大助かりのタンドリーチキン。鶏肉を柔らかくするのに欠かせないし、「スパイス入れ過ぎた!」なんて時もなんのこれしきまろやかに仕上げてくれる。
暑い夏にはフローズンヨーグルト。生クリームとヨーグルトをたっぷり入れて、好みのジャムやリキュールで風味づけ。仕上げにミントをちょこんと載せれば、素朴なプレーンヨーグルトがちょっとしたデザートに早変わりだ。
そういえば、長男が1歳の誕生日には水切りヨーグルトを生クリームに仕立ててバースデーケーキを作った。ヨーグルトにはたくさんのお砂糖を加えて、色とりどりのフルーツで飾り付けををして。両手でケーキを頬張る息子のあの時の笑顔と言ったら!
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今日もスーパーに行ったら、いつものヨーグルトを買おう。
バナナも余っていたはずだから、久々にあのケーキを焼こうかしら。
ほの甘い遠い記憶は、母から娘へ、そして孫へと。
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