見出し画像

「自費出版本3000部完売」を達成した日に書くnote

2022年5月30日、夫との共同作品集にして自費出版本の『sketch』が完売した。

これが現実として起こることを、ほんの数ヶ月前まで、わたし自身イメージできていなかった。

出版社から出させていただく本は、重版がかかることがあっても、完売の瞬間に立ち会うことはまずない。
むしろ売り切れてはいけないわけで、しかるべきタイミングで増刷をして、欲しいと思ってくださる人が品切れで買えないといった状況をつくらないようにしなくては、商機を逃してしまう。

今後、電子化によって本が物体として存在するものでなくなっていくと、「売り切れる」という現象も意味合いも、従来とは違うものになっていくのだろうか。
だとすると、紙の本をゼロから自費で製作し、販売して、売り切ったこの経験と、同じプロセスをたどることは、この先の人生においてもうないのか。そう思うと、さらに感慨も深くなる。

やってよかったな。
しかし、たいへんだったな。
同じことはもうできないかな。
だからこそ、やっておいてよかったんだな。
いろんな思いが交錯して、胸があつくなりながら、『sketch』3000部が入荷してきた日のブログを、ひさしぶりに読み返した。

この日から約7年半。途中、ほとんど在庫が動かない時期もあったけれど、voicyを始めて、新しい読者の方々と出会い、西野亮廣さんの宣伝の姿勢に感動して触発されて、動いてよかった。
いろんな方への感謝の気持ちででいっぱいである。

voicyでの宣伝開始から完売までの経緯


いつも前を向いて突き進むわたしは、この感動さえ、きっとすぐに忘れてしまう。だから、まだ感動冷めやらぬ状態で、ここ数ヶ月を振り返りながら、経緯を書き残しておくことにする。

まず、voicyをスタートしてから、自分の著作には『sketch』という自主制作本があること、その在庫がまだ残っていることを話し、一人読書会というかたちで内容を一部朗読しながら、本の魅力を紹介をした。
それによって、在庫が再び売れ始めた話は、まだスタートからひと月も経っていないvoicyで話している。

一人読書会は結局、シリーズ化と呼べるほど回数を重ねることはなかった。
なぜなら、4月に入ってからキングコングの西野さんのvoicyのおもしろさにハマり、放送内で毎日なんらかの活動や商品の宣伝をしている姿勢に感動して、自分も『sketch』のおしらせコーナーを毎回の放送にはさもう!と決意したから。

voicyでおしらせをするたびに、必ず数件のお申し込みがあったものの、しばらくは、流れはまだゆるやかで、おだやかなものだった。
ところが、5月13日のnoteで、「sketch 1」の残部数を明記し、「もう在庫は山とよぶほどのものではない」と書いて公開した日から、潮目が変わった。

さらに、上の記事公開から3日後、あきらかな「異変」が起こった。
voicyの「sketchのおしらせ」コーナーで、「noteの記事を読んだ方からの申し込みが増えていて、思った以上にハイペースで動いています」「この作品は在庫がなくなりしだい販売終了となります」「再販はせず、売り切りと決めています」「なので、いつか買おうと思っている方は、どうぞお早めに」と話した日から、まさに「爆発的」ともいえる売れ方に変わった。

これは狙ったわけでも、煽ったわけでもなく、「みんなわかってると思うけど、念のため言っときますね?」という感じで、本当になにげなく、口からついて出たのだった。
ところがそこから、よくドラマで見る「問い合わせの電話がなりやまない状態」と同じ現象、つまり、オンラインショップ購入通知音がわたしのスマホにひっきりなしに届く、異例の事態が発生。

↓ 異変のきっかけとなったアナウンスは、下の貼り付けの 5.チャプター。

それまで、多くても1日10セット程度だった購入数が、一気に30セット、40セット、最終的には50セットを超える日も続き、noteの記事から8日後の5月21日、「sketch 1」が完売。2冊セットは販売終了となった。
約1週間で、200セット400冊以上の『sketch』が、全国へと旅立っていった。

フランスからvoicyを毎日聴いてくださっているという方が「先に支払いをするので帰国する日まで取り置きをしてほしい」とメールを送ってきてくださったり、韓国の読者の方の要望で、送料先方負担の海外発送も行った。

下の写真は、発想に大わらわのなか、インスタグラムのストーリーズにアップした一枚。
帯を巻くところから、袋詰め、お礼のカードと宛名書きまで、すべて手作業で一人でやっていたので、この週は新作の執筆は中断し、文字通り発送に明け暮れた。
食事をとる間も惜しいほどで、家から出るのは夕方郵便局に出かけるときだけ。5日間で体重が1キロ落ちた(アラフィフでもこんなにあっさり1キロやせるのかという発見)。

金継ぎワークショップ2回目を催行した5月21日の朝、「sketch 1」は完売し、参加者のみなさんに労っていただいた。
もちろんインスタグラムでも報告した。

『sketch 2』を単品で最後まで売り切る決心


しかし、そこからが、地味に試練のときであった。
というのも、2冊セットが売り切れても、『sketch 2』の方はまだ92冊残っていたのである。

これは、数年前、直取引をしてくださる書店さんに、『sketch』を取り扱っていただいていた時期があったため。
店頭では『1』と『2』は単品で販売されていたため、『sketch 1』から売れていき、するとありがたいことに、書店さんから追加注文をいただいた。そういう例が何度も重なった結果、生じた在庫数の差だった。

全体の在庫がたくさん残っていたときは、自分自身も、家族も、「とにかく2冊セットを売り切ること。それが達成できれば十分でしょう」と言っていたのだけど、いざ『sketch 1』が完売すると、「『2』も売り切らないと完売とはいえない」という気持ちがムクムクとふくらんできた。

そこで、voicy内でのsketchのおしらせを継続し、『sketch 2』の在庫が多く残っている理由を説明して、『sketch 1』の続編ではないので単独でも楽しめる本であること、これまで反響をよせられたエッセイの多くも『2』に収録されていること、こちらが好きと言ってくださる読者さんも多いことなどを、毎回ていねいに伝えた(それによって放送時間が伸びることを気にしながらも)。
すると、その放送を受けて、『2』単品でも、1日平均10冊ペースで売れていったのである。なかには「『sketch 2』だけ購入して読んだらとてもよかったので、友人にもプレゼントしたい」と再購入までしてくださる方もいた。もう、涙が出るほどうれしかった。

しかし、日に50冊という異常事態を一度経験してしまったせいもあって、「さすがに今月中に完売はむずかしいんじゃないだろうか」と弱気になる日もあった。
とくに、残り50冊から20冊を切るまでの数日間は、じりじりして、しんどかった。

そうそう、これを書いておかねば。
今回の目標達成のカギとなったのは、「在庫を見える化したこと」が大きかったと思っている。
自分に発破をかけるために、在庫をすべて机の上に並べ、「残りはあとこれだけある」という事実に向き合い続けたのだった。
これはきびしいぶん、自らを奮い立たせる効果としてかなり高かった。
「最後の1冊が売れるまでおしらせを続ける」という意志が揺らがずに済んだから。

本が1日10冊売れるって、冷静に考えたら、すごいことである。
でも、2冊セット完売をとりあえずのゴールとしていたせいもあって、その後に間をおかず『2』を単品として売り続けた9日間は、体の疲れと、日中は新刊の執筆に戻っていたこともあり、販促活動自体にしんどさを感じた時期でもあった。
それでも、西野さんのvoicyからは今日もさわやかにおしらせが聞こえてくる。そのたびに、たった1ヶ月程度で疲れたと言っている自分がはずかしくなった。
夫も、「宇宙から試されていると思って、もうちょっとだからがんばりなよ」と励ましてくれた。

でも、それよりなにより、『sketch 2』を単品でいいから欲しいと購入してきてくださる方が、毎日10人もいてくださったこと。この事実が、折れそうな心を支えてくれた。

そして迎えた5月30日の朝。

双子座新月の日。やはり宇宙からのエネルギーなのか!?
ここ数日わたしを試していた宇宙が、がんばりを認めてくれたのか!?
voicy配信後、また、トトトトトン、と数冊一気に売れ、9時過ぎの時点で、残り6冊(娘の部屋の目覚まし時計がたまたまその日は机の上にあって、ドラちゃんの笑顔に見守られながらのカウントダウンとなった)

そして午後1時過ぎ。とうとう! とうとう!!


以上、わたしが7年半前に3000部を自費出版した作品の、ここ数年動かなかった在庫約700冊を売り切った、最後の数ヶ月間の記録でした。

お読みいただいてのとおり、そのうち200冊は4ヶ月という時間をかけて、ゆるやかにマイペースに売れていき、と思っていたら、不意打ちでラストスパートを仕掛ける走者のような豹変ぶりで、残り500冊が、約2週間で売れていったのでした。

この経験から学んだ教訓は、

◎自分にとっては毎日やっている宣伝でも、必ずはじめての受け取り手がいる事実を忘れないこと

◎人が「興味を持つ」から「買う」の行動に移るとき、「今買わないと手に入らなくなる」という焦りが多分に作用すること

◎数字をきちんと報告して、「在庫は着実に減っている」というイメージを具体的にもってもらうこと

◎在庫数を見える化して、「これをすべて売り切るまでは終わらない」と自分を奮い立たせること


以上、長い備忘録にお付き合いくださってありがとうございました。

この記録が、もし、手元に残った商品の在庫を売り切りたい、と思っている方のなにかお役に立てるならうれしいです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?