自分が恐れている場所に、成長がある
30代の女友達は、ボーイフレンドと数年前から一緒に住み、ビジネスも共にスタートさせた。
私の周りには、結婚制度にこだわらない人も多いので、彼らもそうだと思っていたら、最近になって、彼の方が結婚をほのめかしてきたらしい。
「その時、違う、って思ったの。
今となっては、彼は素晴らしいビジネスパートナー。私は、彼とは結婚はできないわ」
そう彼女は、私に打ち明けた。
彼らのビジネスは、うまくいき、始めた頃よりも大きくなっていた。2人の努力をずっと見てきた私には、彼らが公私ともにお互いを支え合う、素敵なカップルだと思っていた。
そして、それはこれまでにおいては、事実だった。
けれど、彼が結婚を持ち出したことで、これまでの関係性のバランスが崩れてしまったのだろうか。
彼女の中に生まれた疑問。
このままでいいの?
おりしも彼女は新しいビジネスを、今度は自分ひとりで始めていた。これまでとは違う畑で、それが彼女にはフィットしたのだろう。
仕事への意欲に日々満たされて、会うたびにその情熱を語ってくれる。
新しい知識、これまでとは違う職種の人たちとの出会いは、彼女がいつも、自分の仕事に求めていること、「自己成長」を促してくれるようだった。
もともと彼女は「付き合う男を踏み台にして、成長していくタイプ」なんだと感じていた。
こう言うと、ネガティブなイメージがあるかもしれないけれど、人間関係とは、パートナーシップとは、そもそもお互いを高め合うことなのだ。
ひとりでは躊躇することも、その時に付き合っている人と一緒に、様々な体験をし、自分を広げていった。
誰かと付き合うごとに、彼女はどんどん開いていくようだった。
そう伝えると、彼女は笑って私に言った。
「でも、恋人と別れる時は、いつも不安だったのよ」
納得して別れたはずなのに、淋しくて、淋しくて、そしてこれから先、経済的にも精神的にも、どうやって暮らしていこうかと思ったこともあったの」
けれど、よりを戻そうと、恋人に言われても、心の中のひっそりとしたものが、「それは違う」と言い、どんなに淋しくとも、彼女はそちらの方を選ぶのだった。
今ある関係性の中で、お互いに成長し合えるところの限界まで来たら、その関係は終わりを告げる。
それは誰のせいでもない。
いつまでも一緒にいられる関係は、お互いが同じように成長しているか、もしくはどちらかが我慢しているか、または両方が諦めているのかもしれない。
だから、その時はやってくる。
そして、それがやってきた時に、選択するのだ。
もし、今のボーイフレンドと別れると思うと、とても怖いの、と彼女は言う。
「でもね、その怖さがサインなの。これまで、自分が怖いと思う場所に、いつも宝物があったから。
そこに自分を成長させてくれるものがある、って私は、もう知ってるのよ」
そしてそれを思い出すと、どこかわくわくしている自分にも気づくのだと。
恐れているところに、自分さえも、まだ知らない自分を見出すチャンスが隠れている。
昔の彼女は、ビジネスを立ち上げるような人ではなかった。いつの間に、こんなふうに強く生きるようになったのだろうと思っていた。
見ないように、目をつぶるのではなくて自分の中にある「恐れ」を覗き込んでみる。すると、その恐れは、実際のところ幻想でしかなく、手の込んだ招待状なのかもしれない。
新たな自分への。
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