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レストランという場所

テイクアウトのみの営業を続けて1年以上も経ってしまいました。カリフォルニアは6月15日以降、コロナ防止のための規制を全面解除して、現在多くのレストランは食事を楽しむ人々でいっぱいです。

うちもぼちぼちと、店内を開放していますがテイクアウトのみの営業にすっかり慣れてしまって、始めはちょっとあたふたしていました。

ああ、テイクアウトだけのなんて楽ちんな日々だったことでしょう!

店内サービスがないというのは、本当にシンプルな営業形態で、キッチンはまず皿洗いが大幅に時間短縮され、ダイニングは、ウエイトレスやホステス(フロント)、バッサー(ウエイトレス補助)の代わりにキャッシャーが2人もいればいいのですから。

スタッフへのお客様対応の為の、こまごましたトレーニングも必要なければ毎日のダイニングの掃除、メンテナンスも減って、実はこのままダイニングは無しでもいいんじゃないか、とまで思っていたくらいです。

けれど、ずっとサポートしてくれているお客様からの要望の声を聞き続けているうちに、

「そうよね~、うちには小さいけどちゃんとしたダイニングエリアもあることだし、まわりがそう言ってくれることを、自分の好き嫌いで(なまけ心か?)やめてしまうのも何だかね」

と思い直して、準備開始を始めました。

でもね、1年以上もやってなかったから、どこから手を付けていいやら。

それでもダイニングを閉めていた間に、開店してから18年間、文字通りお店を支えてくれつづけたダイニングと、トイレのフロアーを張り替えて、壁のペンキも塗り替えは終了済み

しまい込んでホコリをかぶった大量のお皿やグラス、シルバーウエアーを出してきて、洗って、作業エリアを仕切り直し。ワインやお酒のリストを一新した後、それらをオーダーして このさいワイングラスも新調して。ついでにメニューの見た目も変えてみました。

いったん様々なレストラングッズを引っ張り出してみると、それらは1年以上も経っているせいか、実はお店自体がチェンジしたがっていたのか、何もかもが古く思えて仕方なく、それぞれを新しくしてみました。

店内営業のために新しいスタッフも入ってきています。とは言え、世間はどこも人手不足。レストランだけでなく、大手スパーマーケットから、小さな食品店まで、どこもかしこも「求人」している有様。なんなら、他のレストランからスタッフの引っこ抜きもあったりして。

コロナが起こったばかりのころは一気に売り上げが落ち込んで、先が見えない不安もありましたが、政府からの援助金が十分にあったおかげで安心して店を続けることができました。そして、個人への失業保険も同じく充実していたようで…...

おーい、みんな戻ってきて一緒に働こうよ~!!!


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人が足らなければ、足らなくても大丈夫なようにやっていこうか、

とマネージャーと決めて 毎日その日のスタッフの人数によって、テイクアウトだけ、ダイニングを半分だけ、と臨機応変にやっていくことにしました。お客さまのがっかりした顔を見るのはつらいけど、それでも何もやらないよりまし、と思うことができるようになりました。

始めた頃は、日頃の完璧主義が出てきて何とか切り盛りしようと、朝から晩まで店に出ていたこともありましたが、そんなことが続くわけもなく。今は出来ることだけを淡々と毎日やっていくスタンスに変えました。

実は現在のレストランを開業して数年後に、隣の店舗が開いたとき、まわりからはレストランの拡張を期待されましたが、あえてテイクアウト専門の店を開いているのです。

そこはコロナの間もいつも通り(入店の人数制限はありましたが)営業できていました。

今回、レストランの方も このままテイクアウトのみのシンプルな営業形態でいけるのかな、と店内営業の有無をしばらく考えていました。テイクアウト営業の効率の良さは、人手がかからない他、様々な雑務から私を開放してくれていたのです。

けれど、いったん店内を開けてみればお客様の笑顔、笑顔、笑顔。

笑顔でお店が溢れていたのです。そして「ありがとう」のコトバ。いったい私個人の力でこれほどの心のこもったたくさんの「ありがとう」を頂けることができるでしょうか?それはこうしてレストランという場所(器)があるおかげです。

私が今、人生で大切にしているのは、家族や友人との時間です。年を重ねれば重ねるほど、たまに集まる場(機会)だけでなく、日常の普段の食事の場も、どんなに貴重でかけがえのないひと時なのかがしみじみとわかるのです。

そして気が付くと、私はそんな、人々が一緒に食事をする場所を提供しているのでした。






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