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バリュエーションを「先送り」?!(3)

前回の記事はこちら。


社債の良さを活かして、バリュエーションを先送りにし、スタートアップにふさわしい資金調達ができないか。

これを日本で実現する方法のひとつが、「新株予約権付社債」です。

その名のとおり、「新株予約権」がついた「社債」です。

社債の説明は前回の記事で行いましたので、ここでは新株予約権の説明をします。


新株予約権とは

新株予約権とは、その日本語のとおり、将来、その会社の株式を買うことができる権利です。

なかなか良い例えが思い浮かびませんが、あえて例えると、超人気アーティストのファンクラブに入会した会員が、年会費を払う代わりに、ライブのチケットの先行販売にありつける、といったところでしょうか(すいません、全然いい例えじゃないですね、、、笑)

たとえばA社の株一株を取得できる新株予約権をもらうのに500円かかるとします(これを取得価格といいます)。

その後、この新株予約権を行使して、株一株をもらうのに必要な金額が300円とします(これを発行価格といいます。)

この新株予約権を買ったXさんは、一株800円でA社の株を取得できたことになります。

もし、新株予約権を買った時点のA社の株の時価は800円だったが、その後成長して2000円に値上がりしていた場合、Xさんは2000円の株を800円で手に入れたことになり、1200円儲けたことになります。

これが、新株予約権です。


新株予約権付社債とは

さて、ここからが本番です。

新株予約権付社債は、「新株予約権」がついた「社債」です。

たとえば、A社が500万円の社債を発行したら、A社は社債の発行要領に定めた時期に、この500万円を投資家に返済しなければなりません(さらに、利息の定めがあれば利息も払う)。

しかし、投資家が借金を返してもらうよりもその会社の株を持ちたい!と思ったら、この新株予約権を行使して、500万円分のA社の株を取得できる(その代わり社債は消滅する)、というのが新株予約権付社債です。

 

なぜ新株予約権付社債でバリュエーションを先送りできるのか

ここまでくると、なんとなくわかってきたかと思いますが、

新株予約権付社債を発行するときに、発行要領で、「次のラウンドで資金調達をしたときに発行される株式の発行価格で、社債を株にできる」と定めておけば、バリュエーションを先送りできるわけです。

例)
2020年8月 A社、投資家Xに新株予約権付社債1000万円を発行。この時点でのA社のバリュエーションは5000万円から2億円まで、評価によって様々であり、議論が紛糾してしまった。
2021年3月 A社、シリーズAに成功。5億円のバリュエーションで、一株1万円で投資家Yから5000万円を調達。
→ 投資家Xのもつ1000万円分の新株予約権(付社債)が、1000株(=1000万円÷1万円)のA社株式に(その代わり社債は消滅)。

投資家Xは、2020年8月段階でのバリュエーション評価(なんともいえない)を回避して、もうちょっとちゃんとA社が成長した、2021年3月(シリーズA)の段階でのバリュエーションにあわせた株式を取得することができるわけです。

この話はまだまだ続きます。

今日も1万回の失敗と挑戦を繰り返す起業家・スタートアップを応援しています。



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