青木柚は

青木柚はもっと遊んでほしい

以前投稿した「青木柚という「人」を多くの人に知ってほしい。」という記事。ありがたいことに、Google検索で「青木柚」と検索するとWikipedia、本人のInstagramに次いで3番目に表記されるようになった。本当にありがとうございます。
本人にも届いているみたいで、書いた翌日の舞台挨拶で「書いたので読んでください」と言う前に読んでくれていたのも、本当に嬉しかった。
さて、今回また新たに柚くんについて書きたいなと思ったのは、彼の演技について。

10/24~11/4に上演された今泉力哉と玉田企画『街の下で』を観劇、更にその間にあった東京国際映画祭での『サクリファイス』を観賞して改めて思ったことを書いていこうと思う。

青木柚だけど青木柚じゃない

彼の凄いところはまず演技を観た瞬間に「あれ、青木柚じゃん。」となること。え、それって駄目なんじゃないの?そう思う人もいるだろう。
不思議なことに、それに違和感がないのだ。徐々に、青木柚がその役になっているのだ。その役を演じている青木柚がいるのではなくて、青木柚というその役がいるのだ。青木柚であり、その役でもあるのだ。そのキャラクターがその役としてハマっているのである。少し、分かりづらい書き方かもしれないが、実際にそうなのである。

『タスクとリンコ』『主人公』の監督である木村真人さんは、『主人公』主演の神尾楓珠さんとこのような会話をしている。

これを観た瞬間、凄い分かると思った。
しかしこれは「青木柚」という人間や役者を知ってからではないと、分からない魅力だろう。逆に、彼を観れば観るほど、深まっていく魅力である。

この魅力をみて、青木柚という人間は「表と裏の顔」という誰もが持っている「顔」を、誰よりも多く持っている人間なのかもしれないと思った。だからこそ「何を観ても青木柚だが、青木柚じゃない」という技術を持てるのだろう。

細かい演技

次に注目したいのは、細かい演技。
彼の細かい演技を観たいのであれば「サクリファイス」がオススメだ。今まで観た青木柚作品で、彼の細かい演技をこれほどまでに上手く演出出来ている作品を僕はまだ知らない。何より青木柚のアップが多いし、青木柚の細かい演技を最大限に生かした役柄だというのも素晴らしい点である。

以前の記事にも記載したが、細かい演技として一番目立つのは「目」の演技力である。表現力。魅せ方。『サクリファイス』はそれが特に素晴らしい。
少しネタバレになってしまうのは大変恐縮だが、青木柚演じる沖田が目を覚ますシーン。ただ目を開けて周りを見渡す数秒間のはずなのに、その一瞬のシーンがとても意味のあるものになっていた。

『教誨師』でも『暁闇』でも『14の夜』でも。どこか見抜かれている、見透かされているようなその目の奥にある想いは、そのどれもが素敵なものである。

「目」となるとやはり付随してくるものは「涙」になるだろう。彼は涙の流し方も魅せ方も綺麗なのだ。
『主人公』第3話で魅せる涙は、必見である。(※3話だけも良いが、物語としても楽しめるので1話から最終6話まで観ることをオススメする)

そして最近まで上演されていた『街の下で』。こちらでも彼は涙を流している。
最初の内は主人公の時に魅せた泣き方の癖もあったのだが、その癖も徐々に消え、演技の上達にも舌を巻いた。その涙がとても綺麗で美しかったし、その涙の地面への落とし方も素敵だった。更に、そのシーンが日によって笑い声が起きるくらいにただの悲しいシーンではなかったというのも素晴らしい点である。

次に細かい演技として目に付くのは「手」である。
『暁闇』では、劇中曲を作ったLOWPOPLTD.さんの役ということもあり、ギターを弾くシーンもある。そのギターの弾くシーンや、パソコンを使って作業している時のシーンは、まるで本当に弾いていたり、その音楽の作業をパソコンでやっている人にしか見えない手の動きであった。

次に『暁闇』『またね』での食事のシーン。食事のシーンというのはとても難しいものだと思っていて。その理由は食べている瞬間は役というよりも自分に近いものになってしまい、役とは離れてしまうのではないか、と思っているからである。
彼も素に少し近づいてしまっていたのかもしれない。しかし、上記に書いた「青木柚だけど青木柚じゃない」というのは食事のシーンにも表れていて。「おそらく青木柚の食べ方なんだろうけど、その役の食べ方なんだろう」という気にさせてくれた、なってしまったのだ。それはたぶん凄いことなんだろう。

『サクリファイス』も、手の動きでとても素晴らしいシーンがあったのだが、こちらは書いてしまうと大きなネタバレになってしまうので、2020年3月6日からアップリンク吉祥寺より上映されるので、そちらで確認してほしい。

舞台を経て青木柚はどう成長したか

舞台というものは始まってしまうと、誰が喋っていようと観る場所は客の自由であるため、人によって観る場所が分かれる。なので喋っていなくても、本人が焦点に合っていなくても、舞台上にいれば演技をし続けなければならない。映画やドラマと違い、映っている部分だけの演技だけでは済まされなくなるのだ。だからこそ神経をより使うし、細かい演技が求められる。
彼は表情や目と行った魅力が強いが、全身を使った、全身で魅せる作品は『アイスと雨音』くらいしかなく、出演が発表された時はとてつもない成長をしてくれるだろうと確信していた。

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こまばアゴラ劇場で行われた『街の下で』。7回観にいき、結局7回ともほぼ青木柚を観ていた。全身の演技が、出来ていた。回数を繰り返すごとに、自然になっていった。動きが細かい。
全ての動きが「祐介」「演劇初挑戦の若者」という人間だった。さらに、はっちゃけていたシーンも今までに観たことのないタイプの演技で、観る度に笑ってしまった。演劇というあまり体験したことないジャンルから、確実に得たものを感じたし、純粋に楽しんでいるのも見て取れた。

しかし、自然過ぎて不自然だった部分もある。7回とも、全部「同じ祐介」「同じ演劇初挑戦の若者」だったのだ。
舞台というのは生ものだ。演じる人によって、喋り方や感情、台詞が変わってしまう人もいる。その変わった感情に対しても同じ「感情」で返してしまっており、違和感があった。相手の変わった感情に対しても微妙な感情の変化だったので、その「感情」で問題はなかった。何度も観た人にしか感じない違和感だった。1回しか観ない人は、その「感情」しか観ていないから、それがもちろん正解となる。もちろん、その日によってあったアクシデントなどによって、動きが変わった部分はあったが、「感情」は同じだった。動きが変わっても「感情」が同じということは、演技が上手いのだろう。上手すぎたのだのだろう。

そう思った時に感じたのが「あ、まだ映像の演技の部分があるんだ」ということ。映像の演技は「全く同じ演技」でないといけない。その癖がまだあるのだろう。

個人的に舞台というのは、「楽しむ」というのは当たり前のことだが、感情や台詞、動きを変えるといったいわゆるアドリブ、そう「遊ぶ」ことも大事だと思っている。まだ「遊ぶ」ことに慣れていないのかもしれない。もちろん「遊べない」舞台もある。今回は(劇中劇内での主宰の島田順平役師岡広明さん以外は)それだったのかもしれないし、そういった「遊ばない」・「映像芝居で」という演出だったのかもしれない。
なので、これからどんどん舞台に出て「遊ぶ演技」ということを是非してほしいと思った。それでこそ「舞台での演技力」というものが上達するのではないかな、とも思えた。
そういう意味も含めて『街の下で』では、青木柚という役者としての可能性をもっと感じた舞台だった。

これから

舞台も終わり、今の情報は2020年3月6日からアップリンク吉祥寺で上映予定の『サクリファイス』のみとなっている。
早く次の情報が欲しいと思いながらワクワクドキドキしている。

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Twitter - 映画『サクリファイス』より ©Tomoyuki Matsushita

以前書いた「どんな役者になってほしいか」。
今でも明るい役はやってほしいし、声優(特に新海誠作品)もやってほしいし、「はっちゃける」舞台も是非もっと出てほしい。ゴジゲンとか、ヨーロッパ企画とか。どこかのQ&Aで「現代版碇シンジみたいな感じ」と言われていたので実写ヱヴァンゲリヲンとかで碇シンジをやるのも面白そうだし、スポーツものだったり、歌を歌ったり、ホラーだったり、大河ドラマだったり、朝ドラだったりと、『教誨師』での演技力や『暁闇』の舞台挨拶で言っていた「年よりも若く見られることと老いて見られることが半々だ」と言うことから、様々な時代にも年齢にも合う・合わせられるだろう。だからこそ映画も、舞台も是非もっと色々なジャンルに挑戦していってほしい。

可能性は広がったのだから、俳優として、もっと遊んでほしい。もっと遊べる技術はある。あとは、その現場だ。その現場も、これから絶対増え続ける。それによって、絶対に変わっていく。進化し続けていくだろう。役者として応援しているし、人としても好きだ。色々な青木柚を観るのは好きだ。これから観れていくのも、観ていくのも楽しみだ。
青木柚という人間は、人を変えてくれる。変えてくれた。これからもっと変えてくれる。青木柚を知れば知るほどに、自分自身の想いが震えあがっていく。自分の可能性ももっと広げたい、そう思わせてくれる。僕は、そんな人を変えてくれる青木柚という人間を、もっと人に広めたい。ファンとして、1人の人間として。
そしていつの日か、1人の演出家もしくは監督として、青木柚という人間を、変えさせたい。青木柚を変えさせた1人になりたい。その可能性は、捨てずに持ち続け、広げていきたいと思っている。

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