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中医学とは part1

こんにちは、水藤直子です。

薬膳と中医学の勉強をはじめて10年くらいになります。ようやく基礎がしっかり固まり、 理解が深まり、すべてが繋がって応用できている気がしています。基礎が?と思われるかも しれませんが、その基礎がものすごく深いのです。中医学の深さを、数千語程度のブログで お伝えできるとは思えませんが、これを読んで少しでも何か感じて頂ければうれしいです。

中医学の勉強を始めて苦労したことは、まず難しい漢字と四字熟語が多いことでした。読め ない漢字がたくさんあり、教科書を読み進めようとしても、漢字や熟語の意味を調べるのに 時間をとられました。通学で勉強していれば、少しは違ったのかもしれませんが、通信で孤 独な勉強でしたので。時々常用漢字ではなさそうな漢字もあります。日本語で書かれている のに日本語でないような教科書は、慣れるまでに1,2年かかりました。英語の文法や英単 語の知識が十分ないのに、難しい英文を読もうとしても、読めないのと同じ感じだったと思います。

もちろん難しかったのは、漢字だけではありませんでした。中医学は、医学でありながら、 文学でもあり、哲学でもあります。1つのことを表現するのに、色々な漢字を使い、別の表 現方法があります。例えば、貧血の人の治療をするときの治療名は「補血(血を補う)」と 書きますが、「養血(血を養う)」と表現しても同じ意味になります。冷え症の人への治療名 は「補陽」ですが、「助陽」や「温陽」とも表現します。どちらも、体の温めるパワーを補 うとか助ける、といった意味になります。英語のエッセイを書くときに、同じ単語は何度も 使わず、違う単語やフレーズで表現しますが、中医学にも文学的なエッセンスを感じます。

また覚えることもたくさんあります。年齢を重ねると、若いときのようには簡単に記憶でき ないので、苦労しました。基礎理論がしっかり理解できていない中、覚えていくのは大変で す。骨があるところに肉を盛っていくのは簡単にできますが、骨組みがないとコンクリート をいくら盛っても家が建たないように、勉強も基礎理論という骨組みがあれば、色々なこと の記憶もしやすくなります。覚えることは、食材と生薬では、それぞれの分類、味と性質、 帰経(どの臓腑に作用しやすいか)、具体的な効能。いくつかの方剤(漢方薬)の組成(そ の漢方薬にどんな生薬がどれくらい入っているか)とそれぞれの働きも記憶します。季節ご とに引きやすいカゼの特徴や治療法、病気の原因の種類と症状、等々...まだあります。 なんとか国際薬膳師、国際中医師の試験を乗り切りましたが、今思えば完全に理解はしてい なかったと思います。

さらに中医学は、私たちがいつもお世話になっている医学とは全く違った見方をします。中 医学には、ベースとなる学説がたくさんあり、病気をみるときにそれらを複合的に、同時に適用します。多く学問や日々の暮らしの中のことが、二次元的に考えられ、見られることが 多いなか、そのことに気がつくまでしばらくかかりました。例えば、日常において気温が高 ければ、服を一枚脱ぐとか、涼しい素材に変える、もしくはアイスクリームを食べるとか冷 たいドリンクを飲む、涼しい部屋に行くなどをします。頭痛がすれば、痛み止めを呑むか横 になって休む。その頭痛が起きている原因がどこにあるかは関係なく、同じ薬で対処する。 効かなければ、別の薬で。それのどこがおかしいのか、と思われる方も多いと思いますが、 中医学ではもう一歩踏み込んだ考えをし、治療にあたり、養生法を伝えます。

中医学の複合的に考え、一歩踏み込んだ養生、治療をするとは、具体的に次のようなことに なります。自然の変化、年齢による体の変化、生まれ持っているもの、五臓六腑の状態、体 の内部の繋がりや流れ、精神の状態や感情、飲食の状態、日々の生活状態や睡眠、さらに病 気の治療であれば、現れている症状、病気の真の原因、どこから治療するか、病気の特性、 病気は次にどこへ伝わるのか、またその速さは、などになります。これらすべてを総括し、 結論を出し、治療や養生を行っていきます。もちろん包括的なアプローチなので、現代医学 のような詳細な分析や対応はできません。また私たちの体は非常に複雑なので、特に病気の 治療になると、中医師(医者)により差が出てしまうところはあると思います。

上に書いた、複合的な考えの具体例には、それぞれに学説名がついています。自然の変化は 主に「陰陽学説」と「五行学説」に著わされています。ただ多くの人が、中医学の基礎がこ の2つの学説だと、勘違いしているようです。これらは古代の人々が自然を観察し、言葉に して表現した論理システムです。地球は宇宙の中にあり、宇宙で起こっている変化は、地球 での活動に影響を与えます。特に太陽と月の影響は良く知られています。例えば、太陽フレ アは、私たちの日常に欠かせない通信システムに影響が及びます。色々とパニックになるよ うな報道もされていたと思います。また月の満ち欠けは、海の潮の満ち引きに影響があります。大潮の時には、たくさん赤ちゃんが生まれてくる、なんていう古くからの言い伝えもあ ります。 人間は地球に住んでいるので、地球上で起こる変化は、私たちの体に少なからず影響があります。乾燥の季節になると、咳が出やすくなり、寒い季節になると心脳血管の病気が起こりやすくなります。この地球に生きている限り、必ず自然の変化の影響を受ける。そんなとこ ろから、陰陽学説・五行学説は、人間は自然の変化に対応しているという「整体観念」とし て、中医学の理論形成時に取り込まれていきました。しかし、中医学はあくまでも「医学」 ですので、からだのつくり、働き、体表に現れる変化や症状、病気の原因や進行、それに対 する基本的な対処方法までが基礎となります。

この体のつくり、働き、病気になるメカニズムも現代医学と全く違った見方をします。中医 学で”細胞“という言葉はありません。その代わり、私たちの体を作っている重要物質を「精・気・血・津液・神(精気血津液学説)」とし、それらを作り出す場所、また最も大切な体の 機能として「五臓六腑奇恒の府(蔵象学説)」があります。それから臓腑と気血津液との相 互関係や、病理変化をみる経絡学説(ツボでよく知られています)。病気の原因を表わす、 病因学説など使うわけです。

中医学は、中国伝統医学を略したものです。伝統と名前がついていますが、決して時代遅れ で、非科学的な医学ではありません。数千年にわたり、中医師たちが観察し治療をしてきた、 臨床データを元にした医学システムです。外科的な対処や、救急救命などを除き、中医学は、更年期障害、不妊症、消化器官のトラブル、耳鳴り、頻尿などの日常の不快な症状に対し、現代医学よりも効果を発揮しています。

また本国中国では、そのレベルを向上させることを目的に、科学技術を使って中医学を整理 し、研究がされています(中西医結合医学)。漢方薬の資源を保護することにも務めています。 中医学ですべてが解決するわけではないですが、自分の体のこと、頭痛や耳鳴りがなぜ起こ るのか、更年期障害を防ぐには、老化防止はどうすれば効果的なのか、中医学を学べば答え があります。何かひとつ、これを摂れば治るといった、秘薬はありませんが。基本をしっか りと理解すること、学び続けること、先生方がいつも言われていることです。そうすること で、薬膳の智恵もより生きてくると思います。
色々な薬膳の資格を一度勉強された方、体はどうなっているのか中医学からの見方を学びたい方、一緒に勉強しましょう。わかりやすく教えていますよ。

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~プロフィール~
水藤 直子(すいとう なおこ)
国際薬膳師
国際中医師
本草薬膳学院 広島校講師

広島県呉市出身。学習院大学卒業後、大手総合商社での勤務後、渡米。カナダのブリティッ シュコロンビア州立大学(The University of British Columbia)を卒業後、バンクーバーで会計士として働く。アメリカ・カナダでは勉強、仕事、友人を通じ、様々な文化思想に触れ、食が健康に与える影響についても気づかされる。日本に帰国してからは、難病の母の面倒をみながら薬膳学・中医学を学び始め、国際薬膳師・国際中医師の資格を取得し、今に至る。現在は、本草薬膳学院広島校講師、お寺で薬膳茶会、自宅で薬膳教室など、薬膳普及活動をしている。

~強み~
薬膳、英語、豊富な海外経験(英会話教室や個人的にも英語を教えている)

~やりたいこと~
薬膳を広める

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