見出し画像

オランダのオフィスはケーキがいっぱい。職場でも祝う誕生日

オランダ人は子供も大人も盛大に誕生日を祝う。その祝い方は、誕生日の本人が皆にケーキをふるまうというもの。職場でも誕生日は特別。1フロアに100人以上が働くオフィスは、そりゃあもう大変なことになる……。

バースデーケーキは本人がふるまう

 オランダ人の誕生日は、祝ってもらう本人がいちばん貧乏になる日だ。もちろん、花やプレゼントやお祝いの言葉をたくさんもらえる日ではあるが、誕生日の本人が皆にケーキや飲み物をふるまう日なのだ。自宅でパーティを開く場合など、本人が皆にコーヒーを注いだり、ケーキを配ったり……楽しいながらも、いちばん忙しい思いをしなければならず、この日が終わると正直ホッとする人も多いのである。

 誕生日には、職場でも日頃お世話になっている同僚にケーキがふるまわれる。家からお菓子を持って行ったり、職場の近所のケーキ屋で調達したり……。配り方はいろいろで、同じフロアで働く周りの同僚に配って歩くケースもあれば、コーヒーコーナーにケーキの箱ごと置いておき、自由に食べてもらうケースも。時間もまちまちで、午後のお茶の時間に出てくると、もらえる側としては嬉しいのだが、誕生日の本人の都合で、午前中に配られることも多々ある。そんな時は、まるで王侯貴族のように、朝からケーキを楽しむのである。

キスの行列――ある誕生日の光景

 たまにしかオフィスに顔を出さない私も、何度か職場での誕生日に立ち会った。ある朝、同じフロアで働く年配の男性が「今日は僕の誕生日なんです」と言って、皆にチョコレートを配り始めた。すると、「おめでとうございます!」と言って、ある女性社員は立ち上がって彼の頬に右、左、右と3回、チュッチュッチュッとキスをした。これはオランダの挨拶で、よく男性と女性の間で交わされる。

 すると次の瞬間、そのフロアにいた15人ほどの女性達がみんな彼のもとに集まってきて、次々に「おめでとうございます!」と言って、「チュッチュッチュッ」の挨拶をし始めた。男性は「ありがとう!」と言いながら、箱に入ったチョコレートを差し出し、皆に好きなのを選んでもらっている。その1人1人のプロセスにちょっとした時間がかかるため、いつしか彼の前には長い行列ができていた。その光景は、王様に祝福の謁見をするためのようでもあり、小学校の時の予防注射の列のようでもあり、何となく滑稽だった。

 私はフリーランスとして飛び入り的にオフィスに来ていたし、彼のことを知らないので、「さて、どうしたものか……」と迷ってしまったが、同じフロアにいながら知らんぷりするのも悪いので、私もその列の最後尾に並んでみた。ふ~む、あのチュッチュッチュッをするべきなのか……?

 私の順番がやってきた。私は「おめでとうございます!」と言って、さっと右手を差し出した。彼は何となく右頬を出して構えていたのだが、私の動作に素早く体制を変え、右手を差し出して「ありがとう!」と言いながら握手をした。東洋人で、初対面の職場の人間としては、これでよかったのだろう。私は彼が差し出した箱から、小さい「スニッカーズ」を受け取った。私の後ろには男性社員も並んでいて、彼らも右手を差し出していた。

まとめて「合同誕生会」も

 小さなオフィスだと、こうした誕生日はたまに巡ってくる程度だろうが、従業員が100人以上の大きなオフィスになると、職場は誕生日の嵐になる。誕生日の人が多い月になると、毎日のようにケーキがふるまわれ、コーワーカーズもさすがに「うへ~」という気分になる。ある上場企業を訪れた時には、大きなケーキがテーブルに置かれていたが、半分以上は食べられずに余っていた。 

 こういう問題を解決するため、ある職場は誕生月が同じ人達をまとめて、一気にお祝いする形にしているのだという。月に1回、誕生月の重なる人達で一緒にケーキを買うので、各人の負担が減るし、月に1回のケーキだと有難みも増すというものだ。職場には、誕生日カレンダーが貼ってあり、その月に誕生日を迎える人が一目で分かるようになっている。実にオランダ人的な、合理的なソリューションと言えるだろう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?