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「教職員に恋愛する時間はありますか?」校長先生からのストレートな質問

こんにちは!

オランダで学校視察を繰り返し、様々な教育を行っている小学校や中高一貫校を訪れています。子どもたちや生徒たちが学校生活を送る様子を見学させてもらったり、主に校長先生にインタビューをしています。

初めて出会い、話をした人と「人生とは?」ということについて話ができる。私はオランダのそんなところが大好きです。少なくとも私がこれまで訪れた学校の校長先生と人生観や大切にしている哲学について話せなかったことは一度もありません。

「そういったプライベートなことはちょっと...」
「一体、何の話をするんですか」

というような雰囲気を感じたことは一度もないのです。


「いくら教師という仕事が好きでも、週末は働きません」

「残業をすることはありますか?」
「週末に働かなければいけないことはありますか?」

私は個人的にオランダ人、特に「教育者の人生」に興味があります。
教育とは終わりがなく「もっともっと」を簡単に求めることができるもの。

「生徒のため」という枕詞を用いて、自分の人生の"全て"を教育に尽くす人がいる...日本の教職員が情熱がある故に働きすぎてしまう...そういった日本の教職員の人生についてどう思うのか、率直な感想を聞きたいのです。

ちなみに、オランダは世界で最もワークライフバランスのとれた国の一つ(OECD調査)だとされています。

「残業をすることがありますか?」という質問に

オランダは深刻な教員不足の問題を抱えています。私が訪れた学校でも、教員の確保に頭を悩ませている学校はいくつもありました。オランダではそれを「新しい仕組み」で乗り越えようとしていますが、なかなかそれだけでは解決されていないのが現状です。

「残業をすることがありますか?」

私はこの質問を恐らく全ての先生たちにしてきました。
答えは「はい、時々」です。しかし、彼らの指す"残業"とは、日本人の残業とは比べものにならないのでは?と思ってしまいます。

何故なら、19時には家に帰っている人がほとんどだからです。

また、朝もほとんどが8時台に出勤していると言います。
(学校によって差がありますがオランダの小学校はだいたい8:15-8:40の間に学校が始まります)

「週末に働かなければいけないことがありますか?」という質問に

この回答に対しては、ほとんどの先生が「いいえ」と答えます。

「どうして週末に働く必要があるのですか?」
→「日々の業務が終わっていない」「部活動があるからです」

「どうして、月曜から金曜で終わる程度の仕事量の管理ができないのですか?」
→「様々な問題がありますが、ハード面が整っていない場合もあります」
→「終わるように仕事量が整えられていない場合もあります」
→「部活動は学校によっては強制的に担当しなければいけない場合もあります」

「そもそも、週末に働くことが"変だ"という感覚はありますか?」
→「社会全体的に見て、そういう感覚は薄いかもしれません」
→「同調圧力という言葉もあって、なかなか自分の心の中で抱いている疑問を改善するために行動に移すことができないかもしれません」

いつもこういった話になります。

この辺までいくと、だいたいオランダの先生方は苦笑いになります。

「教職員に仕事以外の人生を楽しみたいという"強い"気持ちはありますか?」

「教職という仕事はとても素敵な仕事ですが、教職員が幸せであるということが前提として必要です」

「教育に終わりはありません。子どもたちのために、"できることをできる限り"という気持ちがあることは良いことです。でも、教育に携わる人だからこそ、その人が自分の人生をもって、"人生のバランスを取っていること"が大切だと思います。そういった人生を歩む背中を見せることも教師だけではなく、社会に生きる大人の役目ではないでしょうか。もちろんそのためには、仕組みも必要です」

教職という仕事の素晴らしさを多く語ってくれるオランダの先生たちは、恥ずかしがることなくその仕事の尊さを話してくれます。

子どもたちの「幸せ」を願うのならば、教職員だけではなく、社会全体で生きる大人たちが幸せに生きるという勇気を持たなければいけない。オランダの先生たちはその勇気、いや、ある意味の「わがままさ」を貫き通す必要があるのではないか?と問いかけてくれます。

「恋愛をする時間と余裕はありますか?」

「先生の働き方」と「恋愛」
...それはあまりにプライベート過ぎることであり、教師が話すべきことではない、もしくは無関係に見えるでしょうか?

「教職員だけに限らず、社会の人々が恋愛をする余裕はありますか?誰かを愛おしいと思うこと、大切にすること、それはとても美しい感情です。その美しさを経験した人、例えば教育者が教育を通して子どもたちに伝えられるメッセージがあると僕は思います」

「恋愛ができるくらい余裕のある働き方が社会にあるか?」

「恋愛だけではなく、趣味を通してでも、教職員一人ひとりが人生を豊かにすることが教育に良い影響を与えると考えるべきではないか?」

「私は教職員が恋愛もできない、恋愛をするような時間のないような職場環境は異常だと思います。それは、家族を持つ教職員にとっても同じです。家族で過ごす時間を大切にできないような働き方は異常です。だから、私の役目は「教職員の生活を守る」ということなんですよ」

校長先生は、教育者そのものが、仕事以外の「人生の豊かさ」について考える哲学を持っていますか?と問いかけてくれます。

これは教職員にだけ関係することではなく、社会全体の大人に向けた言葉なのではないかと思っています。

私たちの活動内容に賛同いただける方々からのサポートをお待ちしています。ご協力いただいたサポートは、インタビューさせていただいた方々へのお礼や、交通費等として使わせていただきます。よろしくお願いいたします!