昼グリル
久しぶりに高校時代からの親友とランチに。
お互いの子供は成人し巣立っている。そうなるとイベントも減るので積極的に気分転換しようと誘い合う。
店内は、赤ちゃん連れの三人と、お店の子供だろうか?カウンターで一人の女の子が勉強していた。
窓際に通され、庭のコブシを眺める。ここならゆっくりできそう。
春野菜のサラダ・グリルチキン・丸焼き筍・赤ワインを注文。
互いの近状報告が終わるころ、焼きたての料理が揃った。
チキンを食べながら 映画 グリーンブックの話。
「奥さんの最後の台詞が一番好き。」
「あれは賢くてキュートすぎる。惚れるね。」
二杯目頼もうと店内を見回すと、カウンターにいた子が厨房の女性に大声で呼びかけている。
「終わったー♡ 見て見てー。」
「静かに!」
「もぉーはーやーくー みて!!」
「怒るよ!ほら、」
その声で少女はクルリとこちらに振り返った。漫画みたいに頬っぺを膨らまして、ふて腐れた顔で小さく頭を下げた。
ベビーカーに移された赤ちゃんはよく眠っている。夫婦はお喋りに夢中で全く気にしていない。
「うわぁー本気でほっぺ膨らます子、久しぶりに見た。懐かしい!」
「うん。可愛いねー、ウチの子達もあんな感じだったけど、もう大人になっちゃた。寂しいね。」
「ハハッ、おばあちゃんみたい、やめてー!」
「大人になったと言ってよ、卒業なんだよ。」
さすがに、おばあちゃんではないけれど、子育ては一区切り、卒業したんだった。
いつの間に大人になったんだろう?側にいたのに、見過ごした気分。
あれ?そもそも私はちゃんとした親だった?
ワインが廻る。
気がつけば、本当にグリルでお喋りしてる主婦の一人となっていた。
ちゃんと大人になれてる?自分が?娘が?
どんな大人を目指してたんだっけ?
何をしたいと思ってたんだっけ?
『昼グリル』この曲を初めて聴いた高校生の自分に尋ねてみたい。
今はこんな感じだけど、どうでしょう?
今もこんな感じで、なんか ごめん。
7thアルバム 『1234』 昼グリル
言葉からオシャレ感漂う "グリル" も、もちろん これで覚えた。
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