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わたしが ”アートコレクター” ではなく ”作家のパトロン” でありたい理由


ここ数年でわたしは、学び直しのため芸大に編入&学芸員資格課程も履修し、これまで以上に、アートとアート業界がとても身近になりました。
そして、いま現在、作家として活動している方々の作品やうつわを、縁あって購入させてもらう機会に恵まれることも増えました。
全て、自宅で大切に愛でています。


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作品を買う。
なんて大人な響きでしょうか。数年前までは想像もしてなかった展開です。

でも、昨年夏、noteで書きましたが、

”作品を買う”という体験をしてみて思うこと

”美術館で観た作家さんの作品を買う”、なんてこと、できるんですね・・・!(中略)いま考えても、たいぶハードルが高いことをやってのけたなぁ、と。

でも、思いきって飛び越えてみて思ったのは、そのハードル、実は自分で勝手に作って、勝手に高くしていただけなのかも、ということ。
超えようと思ったら、案外、簡単に超えられたし、超えてみるとびっくりするくらいに素敵なことがある!!!と、今回、身を持って学びました。

そしてここ半年ほどで、木版画と器という2つの作品を購入してみて、改めて、作品を買うってアーティストへの応援だなぁ、とつくづく思いました。

応援、といえば、クラウドファンディングはまさにそう!
ライブハウスやミニシアターなどへの支援が話題になって、ここ数か月で一層世の中に広まりましたよね。
わたしもクラウドファンディングで二人の作家さんをサポートしています。

思えば、写真集やCDを買うことだって、好きなファッションデザイナーの服やバッグを買うことだって、アーティストの作品を購入している、ってことですもんね。デザイナーズ家具とか、照明なども。

アート作品、というだけで、なんだか漠然と、”限られた人だけができる特別なこと”っていうイメージがありましたが・・・

自分で調べたり体験してみると、金額の多寡は確かにあるけれど、写真集やCDや、家具と同じで、アート作品を買うことって、全然特別なことではない!と、実感しました。


そうなんです、作家さんの作品そのものは特別ですが、それを買うって、全然特別なことではないんですよ。

そして、わたしはこうも書いていました。

コレクターになるつもりは全くないけれど、できる範囲で本当に自分が好きだと思う作品を購入し、日常で使ったりお部屋に置いたりして、アーティストを応援していきたいです。


はい。タイトルにも掲げた通り、わたしはこの先、縁あって作家さんの作品を買わせてもらうことが何度あったとしても、”アートコレクター” ではなく、”作家のパトロン” でありたい、のです。


でも、なぜ今、改めてそんなテーマでnoteを書こうと思ったのか。
なぜそんなにこだわるのか。てかだいたい一緒じゃないの?

否。わたしにとっては、意味が全然違うんですよ。

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活況な現代美術の国内マーケットを見て モヤモヤ

ここ半年から1年くらい、日本国内で現代美術を買う若手世代のコレクターが増えてきている、という話題をよく見かけるようになりました。
皆さまもSNSやニュース、雑誌など、どこかで目にしたことがあるのでは。

『週刊東洋経済』2月15日発売号「アートとお金」特集が、良くも悪くも、なかなかの波紋を広げたことは記憶に新しいですし、

2年振りに開催されたアートフェア東京。わたしも平日の夕方からお邪魔しましたが、なかなか熱く賑わっておりました。過去最高の売上額、というのは、待ってた!方が多かったってことですよね。

先月、4月下旬に開催されたSBIアートオークションの様子も、テレ東・WBSなどでも報道されていましたね。(SBIアートオークション、次は7月ですよ)


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ここで老婆心ながら、少々解説を。
そもそも、アート作品を買う ”場"って、実は2パターンあります。

①  プライマリーマーケット
手掛けた作家さんの手元から離れて、最初の持ち主が所有することになる、一次流通です。簡単に言うと初めて世の中で売買される作品を買う場です。

具体的には、作家さんの個展や展示のときや、委託などで作品を常時扱っているギャラリーやお店などで買う、というパターンです。

また最近は、ギャラリーがオンラインショップを運営していて、そこからポチることもできますし、ネットやSNS経由で、作家さんご本人に直接オーダーして、なんてこともできてしまえる時代です。

② セカンダリーマーケット
前の持ち主から新しい持ち主へと所有者が変わる、二次流通です。
オークションや古美術商、鑑定団の皆さんの値付けなどは、セカンダリーです。

アートオークションと聞くとやっぱり、超高額な作品ばっかり、別世界、限られたセレブリティだけの場、ってイメージが強いですよね。
オークション会社の中のトップオブトップ、超有名で高額な作品が売買される、世界でも著名な会社が、ササビーズやクリスティーズです。バンクシーの作品がシュレッドされたのは、サザビーズですね。

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さて、アートバブルだ!と、流行りに乗っかって、少々煽り気味な記事も見かける一方で、状況を冷静に見ているギャラリストやオークショニアの声を伝えたウェブ版『美術手帖』の記事も。



そして、まさにわたしのモヤモヤの理由はこれだ!と思ったのが、東京・市ヶ谷のミヅマアートギャラリー・三潴末雄さんのインタビューでした。
既出の『週刊東洋経済』からの転載です。一部をご紹介しますので、ぜひリンクから元記事をお読みください!

(中略)
重要なのが、こうしてアートを買う人たちが出すマネーというのはどういう性格のものなのかを考えることです。

最近では、アートもほかの金融資産と並列的に語られることが増えてきましたね。投資的なマネー、そして中には投機的なマネーもあります。

オークションだけでなく、ギャラリーにも投資的なマネーは入ってきますよ。「もしかしたら、将来大物作家になるんじゃないか」という期待によるものです。

そして、もう1種類のマネーが、作家を育成し、育て上げるために応援をする、パトロネージュのためのマネーです。その人の才能をサポートするために、買い支えるのが彼らの目的です。この3種類のマネーを分けて考えないと、話がこんがらがる。

問題なのは、投機的なマネーを投じる人が見ているのが値段ばっかりで、芸術性が忘れられていること。

例えば、奈良美智が20年前にはいくらだったのに、今はこれくらい高くなった、といった。ここでは、作品の持っている芸術的な価値や、歴史的な位置づけといったことは語られません。興味すらない場合もあるでしょう。
だから、投機というのはマネーゲームなんです。私は、アートは色のついた株券ではないとずっといっている。

(中略)
現状では、3000億円もない小さな日本のアート市場で作家を育てることすら難しい。多くの作家たちは、学校の先生やアルバイトをしながら作家活動をしており、専業のフルタイムアーティストは、200人いるかいないか。

なぜそうなるかといったら、日本人が日本人の作家を買わないからです。
(中略)
今、アート市場に投機的なマネーを投じている人たちは、株や不動産の値上がりと同じような感覚で買っているようです。


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お買い物は、応援であり投票である 


そもそも、わたしが思いきって、作家さんの作品を買うときは、

① その作品が心の底から好き 直感で好き ずっと愛でてたいくらい好き
② 手がけた作家さんのことを”この人すごい!ずっと応援したい!”と思う

という2つが、必ずセット。絶対条件です。
言わずもがな、いまの自分が無理せず(ちょっと予算オーバーなこともありますがw)買える価格であることは大前提ですが、いつか大富豪になれたとしても、この絶対条件は変わらない自信があります。

と同時に、自分の目で直接、観て、確かめて、作家さんやギャラリーの方と話して、本当に自分の心が動いたか、自分に問いかけます。

心が動く。つまり、直感です。

わたしは普段から、わりと何事も、最後の最後は ”自分の直感”  を頼りに決断しますが、30代になってますますそうすることが増えました。


世界で・日本で人気があるから、持ってたら自慢できるから、有名だから、この先もっと人気が出るだろうから、もっと作品の価値が上がってお値段も上がるだろうから。
みたいな理由がくっつく作品を、どれでも誰でも、買いたい訳ではありません。
そもそも、そういう作品を所有し、コレクションしたいから買うのでもありません。

自分が、好き!ステキ!と思うから。お家でずっと愛でていたいから。大切に大切に、暮らしの中で愛用していたいから。
そして、そんな素敵な作品をこの世に生み出してくれた、作家さんのことを応援したいから、買いたい。と思うのです。

だからもし、わたしが今持っている作品たちの市場価格が爆上がりしたとしても、自分から作品を手放すことは全く考えてません。

万が一、人生の最終盤で手放す必要が出てきてしまったら・・・作品の素材にもよりますが、可能な限りたくさんの人に観てもらえる場所へ引き継ぎたい、と思っています。美術館・博物館に限らず、図書館か、保育園や幼稚園・学校などの教育施設か、病院や高齢者施設もいいかも。

ちなみに、セカンダリーマーケットを全否定するつもりは全くありません。絶対に必要な場だと思っています。

でも、なんかおかしいよなぁと本当にモヤモヤすることの一つに、現状、国内のセカンダリーマーケットの仕組みでは、いくら高値で取引されても、作家さんの手元には一銭も入って来ないことが大半なのだそう。
確かにセカンダリーの動向をふまえて、プライマリーでの価格も上がるかもしれませんが、なんか釈然としません・・・・
だから現状の在り方のままならば、いつか、もしいつか大富豪になれたとしても、プライマリーマーケットで買い続けたいたいと思ってます。大富豪、なりたいなぁ。


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いま作品を買えなくても、パトロンにはなれる!


作品を買う、ということは、誰が見てもわかりやすい応援の仕方です。
確かに”パトロン”の本来の意味も、金銭的なバックアップが前提でした。

でも、作家さんを応援する方法って、もっとたくさんありますよね。
そして、アートコレクターって所有してる事実が必要だけど、パトロンなら、いつでも誰でも思い立ったが吉日、すぐになれますよ

しかも現代は、パトロンの強い味方が!
そう、インターネット&SNS!!!

自分のアカウントで作品や作家さんについて投稿したり、展覧会や活動の情報をシェアしたり。
素敵だったから 行けたら行って!観て!買って!とおすすめするのって、人が出会う・動くきっかけをつくる、立派な応援です。

(ステマはNGですよもちろん。わたしも本当に自分で良いと思ってなければ書きません。良いと思えば頼まれなくても書いてます。そして、そもそもこのnoteに頼まれて書いた記事はありません。)

作家さんがメディアに出るようなことがあれば、それはもう全力で追いかけて、メディアに感想とか送ってみたり、なんてことも応援ですよね。

特にInstagramやTwitterは、作家さんがアカウントを持っていれば、自分から「いいね」する楽しさはもちろん、自分の投稿に「いいね」を返してくれる = 気づいてくれる!!!だけではなく、ご本人がコメントをくれる!なんてことも!!! 推し活バンザイ✨


ということで、だいぶ長くなりました。
ぜひ今日から、作家さんのパトロン、はじめてみませんか!
楽しいですよ!!!

ふむふむ、へーそうなのかー!って思っていただけたら、Twitterでつぶやいていただいたり、下の方にある♡マークをポチっていただけるととても嬉しいです。noteアカウントがなくてログインしてなくてもポチれたり、ツイート&シェアできます。



◎おまけ
5/10(月)に、この記事が非常に多くの方に読まれました!という後日談を公開しました。

本文には、時系列で結構こまごましたビュー数や♥の数など、ここだけの話を存分に盛り込んだため、途中からの約3,200字分は、¥100でお読みいただける仕組みです。
よろしければ ぜひぜひ✨


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