杵屋直光

長唄宗家派三味線方、長唄解説用のノートです。

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最近の記事

長唄「時雨西行」解説

2018年の杵屋宗家派一門会「杵屋会」にて 両宗家による「時雨西行」をご一緒させて頂いた際、Instagramに投稿したあらすじ。 せっかくなのでノートにも 5年も前に書いたので、読み返して修正するかも? 「時雨西行」 元治元年(1864)九月 作詞 河竹其水 作曲 二代目 杵屋勝三郎 仏道に入り歌を読みながら旅する西行法師。 ある晩、雨に降られとある粗末な家を訪ねると そこは遊女の住まう家でした。 西行法師が一夜の宿にと願い出るものの遊女は情け容赦なく申し出を断

    • 長唄「土蜘 上の巻」(切禿)解説

      歌詞 浮き立つ雲の行方をや 浮き立つ雲の行方をや 風の心に任すらん  此処に消え 彼処に結ぶ水の泡の 浮世に廻る身にこそありけれ  実にや人知れぬ心は重き小夜衣の 恨みん方もなき袖を 片敷きわぶる御夜詰は  君を守護なす両勇士 実にただならぬ多田の御所 武将源の頼光公 御心地例ならず  医祷百計たゆみなく とりどりさまざまの色を尽して 夜昼の界も知らぬよそほひの  心尽しに身を責めて 鬼を欺く武士の 思ひに沈むばかりなり  小夜嵐 身に沁む程に物すごき 宿直の武者も扨こそと

      • 長唄「鷺娘」解説

        歌詞 妄執の雲晴れやらぬ朧夜の 恋に迷ひしわが心  忍山 口舌の種の恋風が 吹けども傘に雪もつて 積もる思ひは泡雪と 消えて果敢なき恋路とや  思ひ重なる胸の闇 せめて哀れと夕暮に ちらちら雪に濡鷺の しょんぼりと可愛らし  迷ふ心の細流れ ちょろちょろ水の一筋に 怨みの外は白鷺の 水に馴れたる足どりも 濡れて雫と消ゆるもの われは涙に乾く間も 袖干しあへぬ月影に 忍ぶその夜の話を捨てて  縁を結ぶの神さんに 取り上げられし嬉しさも 余る色香の恥かしや  須磨の浦辺で潮汲

        • 「長唄」の解説

          初めまして、長唄三味線を弾いております杵屋直光と申します。 自分の所属する長唄宗家派「杵屋会」の年に一度の定期演奏会を機に「長唄」とはどんな音楽なのかをここにしたためていく所存です。 自分なりに調べたものなので間違っていたり「諸説あり」の拙い投稿となりますので遠慮なくご指摘頂ければ幸いです、しれっと修正致します。 1本目の記事ですが、以前お仕事の為に書いた「長唄」というジャンルについての投稿します。 歴史
長唄は歌舞伎舞踊の伴奏音楽として18世紀のはじめに成立した三味線音

        長唄「時雨西行」解説

          長唄「安宅の松」解説

          【歌詞】 旅の衣は篠懸の 旅の衣は篠懸の 露けき袖やしをるらん  都の外の旅の空 日もはるばると越路の末 思ひやるこそ遙かなれ 東雲早く明け行けば  浅茅色づく有乳山 気比の海 宮居久しき神垣や 松の木の芽山 なほ行く先に見えたるは  杣山人の板取 川瀬の水の浅洲津や 末は三国の湊なる 蘆の篠原波寄せて 靡く嵐の烈しきは 花の安宅に着きにけり 落葉掻くなる里の童の 野辺の遊びも余念なく こりゃたがめづき ちっちゃこもちや桂の葉 ちんがちがちがちんがらこ 走り走り走りついて

          長唄「安宅の松」解説

          長唄「菖蒲浴衣」解説

          菖蒲浴衣 作曲:二代目杵屋 勝三郎 三代目杵屋 正次郎 【歌詞】 五月雨や 傘につけたる小人形 晋子が吟もまのあたり  己が換名を市中の 四方の諸君へ売り弘む 拙き業を身に重き  飾り兜の面影うつす 皐月の鏡曇りなき 梛の二た葉の床しさは  今日の晴着に風薫る 菖蒲浴衣の白襲ね  表は縹紫に 裏むらさきの朱奪ふ 紅もまた重ぬるとかや  それは端午の辻が花 五とこ紋のかげひなた  暑さにつくる雲の峯 散らして果は筑波根の  遠山夕ぐれ茂り枝を 脱いで着替の染浴衣 古代模様

          長唄「菖蒲浴衣」解説