給湯室に置いてあったお土産の草加せんべいを見て、
「誰のお土産ですか煎餅って......渋いな。人に貰って要らないから持ってきたんじゃないですかね（笑）」
と、軽い気持ちで言ってしまったが、あれは白田さんのお土産だったらしい。

そう言われた白田さんの顔は青ざめていたし、あとで人に聞いたところ白田さんは無類の草加せんべいマニアで、なんと深夜番組にも「３６５日草加せんべいを食べる女」として出演したことがあるらしい。

話すきっかけを探しただけだったのに、とんでもない地雷を踏んでしまった。

空腹にビールを一杯ひっかけて、落ち込んだまま家路を歩いていた。あと１０分も歩けば自宅に着くというところで、驚くべき生き物に出会った。

それは硬い煉瓦の舗装を突き破って現れた。

モグラだった。

「スーパーモグラ......」

常識では考えられないところに穴を開けて登場したのだ。スーパーモグラだろう。はっきりとしない目でこちらを一瞥すると、逆さまに潜り漫画のように足をばたつかせて穴の中に消えていった。

穴の周りに盛り上がった土を靴でつつくと、微かにもぞもぞと動いているように感じた。

酒は弱い方だが、流石にビール一杯でここまでの幻覚を見るほどではない。今のは確かに、モグラだった。

「モグラ......都会......アスファルト......」

ひっかかりそうな検索ワードで調べてみると、都市伝説の投稿掲示板に行き当たった。同じ地域で、アスファルト舗装の車道から頭を出して車が来るのと同時に潜って隠れたモグラを見たことがあるという人が投稿していた。投稿者名は「そうか煎餅LOVE」さん。

「帰ってから、投稿するか......」

コンビニでチューハイを買って、俺は急いだ。