Forgotten Millions

これまで日記のタイトルがその日の日付でしたがこれからトピックによって変えてみたいと思います。今日のタイトルはForgotten Millions「忘れられた僕たち」

それは2012年イギリスのヨークシャー州に暮らし始めた時のこと。バンドまではいかなくても何か音楽に携わることがしたいと考えていたらある施設でボランティアを募集していることを知った。

募集要項には「あなたができること何でもいい」とあったので、その時点で何ができるのかはわからなかったけど面白そうなのでとりあえず行ってみることに。

そこは鬱病や統合失調症の患者さん、無職の若者などが社会と関わりを持つために集う場所で、随時いるスタッフの他はミュージシャンやアーティストが入れ替わりボランティアで音楽やアートを教える、または一緒に何かするというシステム(他にパソコン教室やガーデニングクラブなども)

結局私は次々と来る患者さんたちに時には音楽セオリーを教えたり、一緒に曲を作ったり、ピアノの練習をサポートしたり、バンドで演奏したり、話を聞いたりといわば何でも屋としてできることをやらせてもらいました。

施設といってもライブハウスやレコーディングスタジオがあって場所もシアターの裏のガレージみたいな、むしろアーティストのハングアウトスペースという感じ。

中には入院中の方が病院から来られることもあり、なかなか難しい患者さんに対応することも。来るとまず自分の人生についてのお喋りが止まらず、時には一緒に泣いてしまうくらい深い心の闇を感じることも多々ありました。

その中でとても印象に残ってるアントンの話をしたいと思います。

彼は統合失調症で病院には入退院を繰り返してました。その当時は自宅から施設へ週に2回くらい来ていたかと。来るとそわそわと落ち着かず、自分の歌詞を書いたノートを使い古したスーパーの袋に大量に入れて毎回必ず持参してました。

スタジオに入るとだいたいギターを弾いて他のスタッフと共に適当な曲を演奏しつつ、エアーオーディエンスに向かってシャウト。でもすぐに飽きてしまうので最後はいつも私に歌え歌えとせがむ始末で、ストーンズの「Angie」をよく一緒に歌ったことを覚えてます。

彼のその架空のバンドには名前があり、それが今日の日記のタイトルの「Forgotten Millions」ある時何故その名前なのか聞いてみたところ、自分たちのような人間は社会から忘れられてるからねという答えが。

アントンに関する思い出はたくさんあって、公的な書類を書く時に生年月日や症状を書きながら「統合失調症って書くの恥ずかしいよな」と漏らしたり、自作の曲の歌詞を見せては入院してた時に知り合ったその歌詞の中の彼女について話してくれたり、時には気分が高まって何もできずただ椅子に座って祈っていたり。。

私は彼と接した経験から多くのことを学び考えさせられました。今でも時折ふとForgotten Millionsのことを思い出します。

「忘れられた僕たち」

それは私がこれから創作活動をしていく上でのルーツであり、立ち返る場所。今では天国にいるアントンと共に、いつか彼らが、社会から外れてしまった過去の自分のような人たちが、Remembered Millionsになるようにこれからも音楽に携わっていきたいと思ってます。

読んでくれてありがとう💙


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