スロバキア共和国の歴史を考えます。チェコ人もスロバキア人もともにスラブ民族です。
まず、スラブ人について考えます。
スラブ人はカルパティア山脈北方を原住地とする民族です。言語と居住地域によって東スラブ人、西スラブ人、南スラブ人に分類されます。
①東スラブ人
・ロシア人
・ウクライナ人
・ベラルーシ人
東方に広がったスラブ系の人々であり、ギリシア正教の文化圏に入りました。
②西スラブ人
・ポーランド人
・チェック人
・スロバキア人
西方に広がったスラブ系の人々であり、ローマ＝カトリック文化圏に入りました。
③南スラブ人
・セルビア人
・クロアチア人
・スロベニア人

・ブルガリア人
バルカン半島に定住したスラブ系の人々です。
スラブ人の分布図を見ると、チェコ、スロバキア、ポーランドが西スラブ人に分類されることが分かります。そして、スロバキア共和国の南にあるのはハンガリーです。そして、ハンガリーはスラブ人の国ではありません。ここに注目して下さい。
現在のハンガリー、ルーマニア、クロアチア等を含む広大な領域は、かつてパンノニアと呼ばれた地域です。歴史的にアジア系のマジャール人が治めてきた地域です。かつて、このパンノニアにはハンガリー王国（1000〜1918）という大きな国がありました。現在のハンガリーからは想像できないほどの領域を治めていました。
スロバキア共和国という国を考えていますが、かつて「チェコスロバキア」という呼称で覚えたせいか僕には少し違和感があります。
チェコスロバキア共和国は、第一次世界大戦後の1918年10月にオーストリア＝ハンガリー帝国の解体に伴って、チェコ人とスロバキア人が統一国家の形成を宣言して成立しました。そして、スロバキア共和国は冷戦末期の1989年のビロード革命を経て1993年1月1日にチェコスロバキア共和国から分離独立して成立しています。スロバキア共和国は独立国としてはまだ30年に満たない若い国なのです。チェコ人もスロバキア人もともに西スラブ人の代表的な民族ですが、歩んできた歴史的な道のりはかなり違います。

【チェコ共和国】
チェコ共和国の首都はプラハ。
国の人口は1,043万人、首都プラハの人口は120万人。9世紀にカトリックを受容し、10世紀にボヘミア（ベーメン）王国を建国。11世紀以降は神聖ローマ帝国に編入され、ハプスブルク家の支配を受けました。首都プラハには中欧で最古の大学カレル大学があり、市内中心部を有名なモルダウ（ヴルタヴァ）川が流れています。一時期神聖ローマ帝国の都となり、尖塔が多くあることから「百塔のプラハ」と呼ばれています。チェコ人が支配を受けることとなった神聖ローマ帝国。その都はウィーンです。ウィーンは中欧最大の都市であり、芸術の都でした。

【スロバキア共和国】
スロバキア共和国の首都はブラチスラバ。国の人口は544万人、首都ブラチスラバの人口は41万人。ローマ＝カトリック文化を受容したものの、ハンガリーに起こったマジャール人の支配を受けました。1541年にオスマン帝国がハンガリー王国の都であるブダを支配して以降は、1784年までおよそ250年間ハンガリー王国の首都となりました。

【ハンガリー共和国】
ハンガリー共和国の首都はブダペスト。国の人口は980万人、首都ブダペストの人口は175万人。
パンノニア平原にマジャール人が建てた王国であるハンガリー王国が原形。ローマ＝カトリックを受容し、1000年にイシュトバーン1世が教皇に初代ハンガリー国王と認められた。13世紀にモンゴルの侵入を受けたが、15世紀には中欧最強の王国に発展。しかし、16世紀には領土の大半をオスマン帝国に占領され、17世紀末以降オーストリアの支配下に入る（オーストリア＝ハンガリー帝国）。第一次世界大戦後の1918年11月、オーストリア＝ハンガリー帝国から分離して共和国が成立し、現在に至る。