Nao Tokui

Qosmo, AI Creativity & Music Lab代表 / 著書…

Nao Tokui

Qosmo, AI Creativity & Music Lab代表 / 著書『創るためのAI 機械と創造性のはてしない物語』

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    • 26本

    「Qosmo Lab」では、Qosmoのメンバーの実験的な取り組みやプロジェクトの技術解説、制作の裏話などを個性豊かに配信しています。 Medium (English) https://medium.com/qosmo-lab

最近の記事

2023年に読んで印象に残った本

今年も残りわずかになったので、今年2023年に読んで印象に残っている本をまとめておきます。といっても、出産直後の妻の実家での年越しで、手元に肝心の本がない...ということで、Kindleで読んだ本が中心のレビューになります。ここで挙げている本は比較的新しい本が多いですが、中にはずっと積読状態になっていた古い本もあることをご理解ください。 こちらが昨年のリスト 基本的にVR・AR関連のものにはあまり興味がなく、「メタバース」という名前がついているもの全てに懐疑的なスタンスを

    • AI DJ Project#2 Ubiquitous Rhythm — A Spontaneous Jam Session with AI リアルタイムに音楽生成するAIとの即興演奏

      <<< 2021年にQosmoのwebサイトで公開された記事を転載 >>> PERFORMANCE OVERVIEWAI DJ Project#2 Ubiquitous Rhythmは、AIを用いてリアルタイムに音楽を生成しながら行う即興的なDJパフォーマンスです。音楽のシーケンスを事前に用意することなく、その場でAIが作曲(生成)した音楽をDJがコントロールし、AIがそれに反応することで、一連のパフォーマンスが展開していきます。複数のAIモデルとDJが織りなす複雑な相互

      • NAMM2023にて、Neutoneの展示を行いました。

        4月13日から15日にかけてアメリカ、カリフォルニア州のアナハイムで開催されたNAMMショーに、Qosmoとして初めて展示に参加してきました。NAMMショーは、楽器やレコーディング機器、音楽ソフトウェア関連の展示会として世界最大といわれる展示会で、会場となったアナハイム・コンベンションセンター(幕張メッセをさらに大きくした会場を想像してください)には、ドラムやギター、ピアノから、シンセサイザー、DJ機器、音楽ソフトウェアから、スタジオ家具、ライティング機材まで、音楽の演奏や曲

        • Making of "Emergent Rhythm" — リアルタイムAI音響合成を用いたライブ・パフォーマンスの裏側

          AIを用いてこれまでにない音楽体験を作り出せるか。本稿では昨年12月8日 MUTEK Japan (渋谷ストリームホール)で私たちが行ったパフォーマンス、「Emergent Rhythm — AI Generative Live Set」の裏側、技術的な詳細、パフォーマンスの実現に至った流れや動機などを解説します。 なお、MUTEKでのパフォーマンスのビジュアル面については、担当したQosmoの中嶋亮介が詳しい記事を書いています。イームズ夫妻の映像作品『Powers of

        2023年に読んで印象に残った本

        • AI DJ Project#2 Ubiquitous Rhythm — A Spontaneous Jam Session with AI リアルタイムに音楽生成するAIとの即興演奏

        • NAMM2023にて、Neutoneの展示を行いました。

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          2022年に読んだ印象に残った本

          今年も残り二日となりましたが、今年読んだ本の中から特に印象に残った本をご紹介いたします。 "Ways of Being: Animals, Plants, Machines: the Search for a Planetary Intelligence" (2022) James Bridle AI技術の発展によって、人「以外」の知能の可能性について注目が集まる中、動物や生体界全体が持つ知能について考察した一冊。 著者のJames Bridleは、AIを扱ったインスタレ

          2022年に読んだ印象に残った本

          [日記] M.シェーファー 『世界の調律』

          ずっと積読だったM.シェーファーの『世界の調律』を読んでる。ニューエージ的なサウンドスケープ論だと思ってたら(失礼)、もっとずっとスコープが広い本だったんですね。 人を取り巻く「音」が時代、社会体制とテクノロジーとともにどう変化してきたか、それが時代精神とどう相互作用しているか、音楽に与えた影響などなど。サウンドスケープとは何かというサブタイトルはむしろミスリーディングとすら思える。 ギリシャ、ローマの古典からマクルーハン、バッハからジョン・ケージ、ビートルズまで引用の幅は

          [日記] M.シェーファー 『世界の調律』

          Dawn Patrol EP — AI音楽生成モデルとのサーフィン

          ここ数年の私のAIを用いた音楽制作の試みをまとめた作品として、12インチのレコード、Dawn Patrol EPが発売になりました!以前そのリリースをアナウンスして、プレオーダーを開始し始めてから一年近くが経過した今日...ようやくレコードが手元に届きました。コロナ禍によるプレス工場の作業の遅れと予想外のレコード需要の高まり、ウクライナ情勢の悪化による原材料などのロジスティクスの問題。さらにはレコードのプレスの手配を頼んでいた仲介会社の倒産(!!)と度重なる不運に見舞われ、遅

          Dawn Patrol EP — AI音楽生成モデルとのサーフィン

          AIは音楽を変えるか? リアルタイムの音色合成/音響処理を可能にするAIプラグイン・プラットフォーム『Neutone』の紹介

          2021年の初頭。私は、人工知能(AI)を用いた人間の創造性の拡張の可能性について説く『創るためのAI—機械と創造性のはてしない物語』を上梓しました。この本で、AIは単なる人の模倣ではなく新しいアイディアを与えてくれる存在として描かれています。中でも、自分が最も興味がある表現領域=音楽におけるAIの活用や新しい音楽の可能性について、自分でも意識しないうちに一番多くのページを割いていました。私自身もこれまでAI音楽生成を用いた音楽作品やパフォーマンスなどを実践しています。 A

          AIは音楽を変えるか? リアルタイムの音色合成/音響処理を可能にするAIプラグイン・プラットフォーム『Neutone』の紹介

          AI研究と音楽表現 - テクノロジーの「誤用」をめぐって

          このところ少し時間ができたこともあり、音楽の領域で新しいテクノロジー(サンプリング、シンセサイザー、ターンテーブル etc)がどのように使われてきたか、改めてその歴史を振り返っています。 音楽とテクノロジーの歴史の中で繰り返し現れるモチーフ。それは、アーティストがテクノロジーの開発者の意図からは「ズレた」使い方をすることで、新しい表現が生まれるというサイクルです。音楽テクノロジーの歴史は「誤用」の歴史である、そのことを痛感しています。 ‘The history of te

          AI研究と音楽表現 - テクノロジーの「誤用」をめぐって

          卒業生へのメッセージ 2020.3

          《昨年3月に慶應義塾大学SFCの徳井研究室の卒業生に送ったメッセージ》 卒業生のみなさん、ご卒業おめでとうございます! 🌸 徳井研の一年目に、大学最後の一年という非常に大事な時期を共に過ごさせてもらったことを感謝します。進学される方も、社会に出る方もそれぞれの道で頑張ってください。 別のところでも話したのですが、大学卒業後のこの時期、どうしても先行きが見えなかったりして、迷うことがあると思います。僕も大学卒業後の数年間、先が見えずに一番辛い時期でした。あの頃の自分に

          卒業生へのメッセージ 2020.3

          世界的ダンサーと人工知能 - AIはダンサーの創造性を刺激できるか

          --- 今回は人工知能(AI)によって、ダンサーの創造性を拡張しようとしたプロジェクトのお話。 "Israel & イスラエル - Israel Galvan + YCAM"2017年末から筆者は、ある著名なフラメンコダンサーとのプロジェクトに関わっています。フラメンコ?と不思議に思うかもしれませんが、AIを用いて、フラメンコというダンス表現をどう拡張できるかという試みです。山口県にある国内屈指のメディアアートを扱う美術館、研究機関であるYCAM(Yamaguchi Ce

          世界的ダンサーと人工知能 - AIはダンサーの創造性を刺激できるか

          オリジナリティなんて忘れよう

          (SFCの自分の研究室の学生向けのメモ) 模倣したくないなんっていってるやつに限って何も生み出さない!!サルバドール・ダリ どうも今の学生たちと話してると、真似をすることを避けるような傾向があるような印象をよく受けます。ググったらすぐにコピーであることがわかる、そしてSNSで叩かれてしまう...そんな時代に生きてきているからかもしれません。 ダリの言葉じゃないですが、僕は若いうちはどんどん真似をすべきだと思ってます。まずは自分が興味を持っている人、アーティストでも

          オリジナリティなんて忘れよう

          SFC 集中講義 データ・ドリブン・アート BY 真鍋大度

          http://naotokui.net/2020/01/sfc-datadriven-daito-manabe/から転記。 2020/1/12 今日はSFCに 真鍋大度さんをお招きしての特別講義/ワークショップ、データ・ドリブン・アートの初日。 真鍋さんというか、ダイトくんとは学生時代からの付き合いですが、こうやって授業を受けるのは初めての経験です。忙しい中で四日間の集中講義を引き受けてくれたダイトくんにまずは感謝。 初日の今日は彼の作品やライゾマのプロジェクトをメディ

          SFC 集中講義 データ・ドリブン・アート BY 真鍋大度

          東大での授業 - Computational Creativity概論

          今期、東大で「Computational Creativity概論」という新しい授業を担当させていただくことになりました(駒場の1, 2年生向け)。人間がコンピュータを含む機械、システムをつかってどのように自らの創造性を高めて来たか、そもそも創造性とはなにかといった話題を中心に、歴史的なコンテクストから最新の研究事例まで、自分の活動も交えて教えます。明日はそのガイダンス。 半年分の授業となると、資料作りもかなり大変。先日、コンピュータ以前の人の手によるGenerativeな

          東大での授業 - Computational Creativity概論

          セビリアにいます. フラメンコ×人工知能 - イスラエル・ガルバンの公演に向けて.

          来年1月の公演に向けて、YCAMさんを中心に取り組んでいるフラメンコ × テクノロジーのプロジェクトのために、スペインはセビリアに滞在中. フラメンコの踊り手は、フラメンコ界の革命児、イスラエル・ガルバン氏。旧来の僕たちがイメージするフラメンコとは大きく異なる、モダンダンスやバレーの世界にも通じる世界観を持っています。 「自分の分身と踊りたい」「ドンキホーテにとってのサンチョ・パンサのような、相棒・手下が欲しい」という氏の思いにこたえるかたちで、YCAMから参加を要請

          セビリアにいます. フラメンコ×人工知能 - イスラエル・ガルバンの公演に向けて.

          異質なものが出会うとき - 島地保武×環ROY | 「ありか」ツアー2018

          島地保武×環ROY | 「ありか」ツアー2018 昨年末のYCAMでのAI DJの際にはじめてあって意気投合した環ROYくんに誘われて、彼とダンサーの島地さんのパフォーマンス作品を名古屋まで見に言ってきた。ダンスパフォーマンスのことなど全くわからないのに、終演後アフタートークとしてお二人とともに登壇することに。 ダンサーとラッパーという全く異なるバックグラウンドを持つ二人のコラボレーションに、自分がAI DJでやっていることを重ねてみていた。二人に質問しようと思っていた

          異質なものが出会うとき - 島地保武×環ROY | 「ありか」ツアー2018