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マーケティングはアートなのかサイエンスなのか

確立思考の戦略論

*まず、amazon以外では入手困難です。メルカリなどのフリマサイトでもなかなか出回ってなく、もしあったとしても定価より高いです。

元P&Gの伝説のマーケターの森岡毅さんの名著。数学をマーケティングで用いる「数学マーケティング」でP&Gのブランド認知、UFJの集客数を圧倒的に飛躍させた。森岡さんは著書で、数学はサイエンスだって言ってます。おそらく文系の人は、数学はアートだって考える人もいるけど、この著書を見てると、たびたび数式で確率をはじき出しているので、さすが数学マーケターだなと。印象に残った7フレーズを引用し、その中で補足として3つ取り上げます。

1,市場構造を決定しているDNAは、消費者プリファレンスである。

2,人間は意思決定をできるだけ避ける生き物である

3,成功するためには、「成功する確率が高い戦略を見つけられるか?そしてそれを選べるか?」

4,戦略がある程度正しいことは、成功するための必要条件ですが、それだけでは全く十分ではない

5,マーケティング組織が共有すべき最重要な原則は「消費者視点である」

6,組織において学習する文化を確立することは、個人の成長のためにもなる

7,良いことは良いことを呼び、成功は成功を呼ぶ

ブランド認知は、消費者プリファレンスによって決まります。プリファレンスとは、消費者のブランドに対する相対的な好みのことで、主に
・ブランド・エクイティー
・価格
・製品パフォーマンス

の3つによって決まる。
本書では配荷率が重要だと言ってますが、これは個人的にも経験があって同意です。リテールECの経験があるので、配荷率の数値がどれだけ重要かは経験を持って感じました。

*配荷率:市場にいる何%の消費者がその商品を買おうと思えば物理的に買える状態にあるかという指標

同じ商品でもどれだけ販売チャネルがあるかで、ブランド認知も変わってくるし、P&Gの例で言うと、商品のSKU数を増やして店舗に応じた消費者プリファレンスに合わせて最適化していく「店舗SKU最適化プロジェクト」が秀逸すぎる。
*SKU:Stock Keeping Unitの略で受発注・在庫管理を行う際の、最小管理単位

市場構造を決定しているDNAは、消費者プリファレンスである。

ビジネス戦略は、いきつくところ

好意度×認知×配荷

になり、特に好意度(プリファレンス)は無限の伸び代がある。ここをいかに伸ばしていくかで、ポテンシャルが上がりビジネスが成長するのです。当然掛け算なので他が良くなければ、プリファレンスがいくら上がっても意味がありません。同じように認知度や配荷率も大事になるのですが、ここが仮に1だとしてもプリファレンスはいくらでも高めることができるのでまずはプリファレンスに絞ったマーケティング戦略が大切になると感じました。

人間は意思決定をできるだけ避ける生き物である

そもそも意思決定は人間にとってストレスなんです。何百とある大学から志望校を選ぶこと、400万社ある会社から1社を選ぶなんて意思決定は普通できません。なので、無意識にセグメントして自分の学力や市場価値を冷静に判断しながら選択をしていくのです。
つまり、意思決定は脳みそをフルスパークしながらあらゆる事象を考慮して選択するので圧倒的にストレスです。
消費者には、なるべく意思決定という行為をさせない、自然と選択ができる設計が理想だと思いました。

マーケティング組織が共有すべき最重要な原則は「消費者視点である」

マーケティングの神様であるコトラーはこう言ってます。

顧客を理解すること。そして顧客ごとの異なるニーズを見抜くことが重要だ

マーケティングの基本となる最も重要な概念は、人間のニーズである

また、米アマゾン社のジェフ・べゾスも似たようなことを。

もっとも重要なことは、執拗なまでに顧客にフォーカスすること。アマゾンにおける我々の目標は、地球上でもっとも顧客中心主義の会社になることだ。

つまり、プロダクトを購入してくれる消費者がいないとビジネスは成り立たないので、顧客目線で物事を考え、ニーズを的確に見極めることが重要だと言っています。
よく経営者が利益を還元する際に、頑張った従業員に報酬として渡すか、顧客にセールとして還元するかなどES(従業員満足)やCS(顧客満足)どちらに還元するかなどありますが、ピラミッドのトップに立つ顧客に還元することが会社としても従業員にとっても一番メリットがあるのではないでしょうか。

コメント 2020-05-06 193956

会社というベースがあって、その上に従業員が雇用されて、消費者がプロダクトを購入して利益を会社が得る。ビジネスのキホンは「顧客満足」つまり消費者プリファレンスをいかに高められるかがカギになりますね。

全体の書評

おそらく、実用書を見る習慣がない人には全体的に難解な書籍だと思います。ただし、ある程度実績のある人や慣れている人には「おぉ~」って感じる内容です。書籍のタイトルが「確立思考」なので理系脳の人にはさらに読みやすいかもしれません。文系の私でもさくさく読めました。
ただし、途中でポアソン分布という難解な数式がでてくるので、数式が苦手な人は読み飛ばしましょう。超難解です。

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最後に共同著者の今西聖貴さんの素晴らしい言葉で締めます。

「人生は、確率」

「できることは確率をあげること、結果に対して悔いはない」。常にこのような姿勢で臨んでいただきたい。起こったことは変更できない。変えることができるのは未来のみです。
「判断に迷った時は、目的を明確化する」

人は知性を持ってしまったがゆえに、選択に迷い苦しみます。そのような時には、目的に立ち返りましょう。自分の人生の重要な目的を自分以外の誰かに決めさせてはいけません。
物事や問題の本質を見極める

物事の多くは「現象」なので、考えない限り本質はなかなか見えるものではありません。本質を見極める方法は、極端な状況を思い浮かべること、あるいは自分と関係のない状況に置きかえてみること。不思議と本質が見えてきます。

ちなみに、この本を読んで僕はマーケティングとはサイエンスともアートという問いには答えられず、statistics(統計)とexperimentation(実験)の集合体だという結論に至りました。(完全に僕の主観です)
サイエンスに近いニュアンスになりますかね。


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