ラーメン・半マーボー豆腐丼セット　中華料理 ミッキー飯店＠中野坂上

　中野坂上という場所は、商業エリアというよりも住宅街である。西新宿と中野の間に位置するその構図は渋谷と恵比寿の間にある東という住宅エリアと相似する。
　大通りにはオフィスビルも立ち並ぶが、一本裏通りに入れば、一軒家だらけ。そしてその住宅街の中にちらほらと小さな飲食店が点在する。大通り沿いのそれとは違い、独特の個性を発揮するお店がほとんどだ。

　井之頭五郎もそんなところに魅了されたのかもしれない。住宅街の中の住宅街といった場所に、ポツンとそのお店はある。
　「ミッキー飯店」。
　そう、ここは住宅街にある夢と魔法の町中華。

　１３時半くらいでラストオーダーになるランチだけの営業。孤独のグルメの影響なのか、ランチ帯しかやってないからなのか、いつも数名の待ち人がいる。ただ、回転は早いので、そんなに待たずに店に入ることができる。

　看板メニューはミッキーライス。うん、ギリギリのネーミング。他にもミッキーカタ焼ソバとミッキーメンもあり、３バリエーション展開。レバー、椎茸、野菜などをニンニクで炒めて、ちょっと辛めのスパイシーな餡掛けにしたものを、それぞれのベースにかけるのがこのミッキーシリーズだ。
　あとは孤独のグルメに登場したのか（観てないのでわからないのだけど）、ニンニクチャーハンという黒いチャーハンも人気メニュー。ちなみに、結構ニンニク強めのチャーハンだけど、黒い色のイメージとは異なりそんなに濃い味ではない。ミッキー飯店の味付けは全体的に濃いめなので、そう感じただけかもしれないけど。ただ、ニンニク臭はかなり口に残るので、その後の予定を鑑みてから食べることを推奨する。

　ミッキーとニンニクチャーハンはお客さんの半分くらいが頼んでいるので、パレードのようにどんどん提供されていく。そしてどちらもニンニク臭が結構するので、店内もニンニク臭に満たされている。

　当然、僕もミッキーライスを食べるんだよね？　と思うかもしれないけど、実はミッキーシリーズを食べたことはない。食わず嫌いは良くないのだけど、ミッキーには椎茸入ってるんだよね…。僕は椎茸があんまり得意じゃないのだ。子供の頃から嫌いで、実際に最近まで食べられなかった。今は一応食べられるけど、やっぱりそんなに気乗りはしない。
　店内の残りの半分は、回鍋肉やレバニラ炒めなどの定食か麺類を食べている。常連のリピーターが多いからミッキー食べたい時とそれ以外を食べたい時のバランスが１日のお客さんの割合で言うと半々なのかもしれない。いや、知らんけど。

　ミッキーシリーズ以外にも先ほどの定食や、セットメニューもある。ミッキー以外で言うと、セットメニューを推奨している節もあり、僕はそれに乗ってみることにした。
　ラーメンと半マーボ豆腐丼のセットだ。ラーメンは醤油、塩、味噌から選べる。こういう町中華なので、醤油を選択。
　さて、いかがなものだろうか？　とカウンターの目の前の調理スペースを眺めていると、店主であるお父さんが結構本格的に麻婆豆腐を作り始めた。お、期待できそうだ。

　ラーメンと麻婆丼がそれぞれカウンター越しに提供される。
　なかなかいい感じだ。なるほど。いわば、麻婆丼をランド、ラーメンをシーに見立てているというわけか（そんな事実はありません）。それなら醤油ではなく塩にすれば良かったかなとも思う。
　さて、「ミッキー飯店」でラーメンもマーボー豆腐も初めて食べる。実は今日でまだ３回目の訪問で、食べたのはニンニクチャーハンとしょうが焼き定食だけなのだった。
　まずはラーメンから。スープを一口飲む。
　ん？
　もう一口飲んでみる。
　ん？
　旨くない…。なんだか、まずい町中華の薄っぺらい醤油スープの味がする。それこそ町中華でチャーハンを頼んだ時に出てくるスープくらいの感じ。これでラーメンはないでしょ…。試しに麺を啜ってみる。うん、やっぱりね。この濃い味の店にしてはだいぶ薄っぺらだ。コショーを大量にかけても微妙かもしれない。うーん、やはりシーだけに、塩にしておけば良かったか。
　あー、そういえば、ミッキーメンはこのラーメンの上にあの濃い味あんかけをかけるので元のベースは薄くしてあるはずだ。もしかしたら、店主がミッキー用の分量と間違えただけなのかもしれない。ただ、それを指摘して、もし違っていたら失礼な気がして言えなかった…。

　気を取り直して麻婆丼を食べてみる。
　ん？
　もう一口食べてみる。
　ん？
　超絶に旨い！　麻婆豆腐好きな僕のあるピンポイントの好きを貫いたヤツだ。イッツ、ファンタジア！　陳麻婆的なザ・四川な感じのヤツでもなく、辛さも痺れもない昔からの町中華にあるオレンジ色のヤツでもない。今はもうないのだけど、恵比寿ガーデンプレイスの近くアメリカンビレッジのそばにあった町中華の麻婆豆腐に近い味。そこはホールも含めて全員中国人だけで営んでいるお店でランチは全部１０００円以下で食べれる僕のヘビーユーズ店だった。ここの石焼麻婆豆腐が好きすぎて、近隣にオフィスがあった時代は週１で必ずリピっていた。麻辣どちらも四川的ではあるのだけど、油とひき肉の調理の仕方がめちゃくちゃ好みだったのだ。その麻婆を思い出させるような味なのだ。

　ともあれ、シーは残念だったけど、ランドでは想像以上の満足を得た。
　この麻婆丼はヘビーユーズ確定な味。半マーボー豆腐丼じゃなくて、マーボー豆腐丼単品もあるから、次はそれを狙うとしようか。
　１３時半ラストオーダー。仕事の予定によってはギリギリな気もする。会社からは歩いて５分なので簡単に通えそうでいて、実際にはあと一歩のところで通えなさそうな気もする。食べたいとの願望も、間に合わず消える儚き泡沫のよう。

　夢か現か？　まさに夢と魔法のファンタジアなミッキー。