ヤコブ・ニールセンのユーザビリティ10箇条を、今あらためて(おまけ付き)
ヤコブ・ニールセンのユーザビリティ10箇条
プロダクトデザインを行う際に、知っておいて損のない知見として、『ヤコブ・ニールセンのユーザビリティ10箇条』というものがあります。
もう20年近くこういう仕事をしていると、"あたりまえのもの"扱いされますが、「便利ツール」として、たびたび真正面から思い出すことに大きな意味があると感じます。ので、自分なりの解釈込みで概要をまとめてみました。
ひとつずつ見てみます。
1. Visibility of system status
(システムの状態が可視化されている)
「今何が起きているの?」をユーザーインターフェース上で表現することです。
デジタルプロダクトはシステムと人間が呼応することで機能します。そのとき、人間の状況が変わるように、システムもまた刻々と変化します。その「状態」を可視化することが求められます。例えば、ステップ型のプロセス表示、ローディングアニメーションなどをよく目にしますよね。
2. Match between system and the real world
(システムは実世界とマッチしている)
ユーザーが実世界で慣れ親しんでいる言葉や形状、操作時の振る舞いで、プロダクトの姿かたちをつくることです。
例えば、電子書籍のUIに「表紙」にあたるビューがあることで、デジタル空間上でも読み物の存在が認知しやすくなります。「メンタルモデル」と「デザインモデル」が一致していることにより、ユーザーがその機能の価値や振る舞いの意味を認識しやすいプロダクトになります。
3. User control and freedom
(ユーザーが制御することにより、自由である)
主導権はユーザー側にあります。だからユーザーが進むも引くも制御できるようにプロダクトのUIをつくる、ということです。
例えば、サービス利用開始後のアカウント名称の変更はユーザーが自由に行えるよう、編集機能を設けて常時アクセスできるようナビゲーションを用意する必要があります。「使いやすさ」のためには、ユーザーの自由意思をいかに尊重した設計をするか、が重要です。
4. Consistency and standards
(一貫性があり標準的である)
プロダクトの中でユーザーインターフェースの一貫性があり、広く一般と照らして標準的であること。
ユーザーは多種多様なプロダクトに接しながら生活をしています。その中で形作られたメンタルモデルに合致させるためには「標準的か?」という視点での評価が大切です。さらに、プロダクトの中に一貫したルールが存在していることで、混乱を防ぎ、学習しやすくなります。
5. Error prevention
(エラーが防止されている)
操作の誤り、認知の誤り、の発生をユーザーインターフェースで防ぐこと。
近すぎる位置にある小さい複数のボタンは押し間違いを発生させますし、ラベルの言い回しが煩雑なボタンは認識間違いを発生させます。目に見える情報と、操作時の振る舞いをかけ合わせて、ユーザーのミスを起こしにくいデザインをしなければなりません。
6. Recognition rather than recall
(思い出すことを強制されず、認識できる)
その意味や機能を必死に思い出さなくても済む状態であること。
ユーザーは単回あるいは複数回の利用経験の中で、あるいはプロダクトの外の生活の中で、ユーザーインターフェースのさまざまな意味や規則を記憶します。ただし、それが常に主観的に呼び出せるとは限りません。また記憶を呼び出す手がかりがなければ負荷がかかります。ユーザーインターフェースには常にその「認知の手がかり」を仕込んでおきたいです。例えば、情報を入力する操作具を自由入力型ではなく選択肢型にする、などもその工夫のひとつです。
7. Flexibility and efficiency of use
(柔軟性があり、使用効率がよい)
一通りではないユーザーの操作方法が受け入れられる設計をすること。
初心者のユーザーと、熟練者のユーザーの間でも、その操作方法は変わります。ユーザーのペルソナによって変わる操作方法に都度対応したユーザーインターフェースを作ってしまっては、プロダクトは煩雑になります。統合して多くの操作方法を受け入れられるような柔軟な設計を施すことが求められます。
8. Aesthetic and minimalist design
(美的で最小限のデザイン)
美しく単純で簡素なこと。
シンプルなものは使いやすい。ハサミ、ペン、スプーン、財布、われわれが普段から慣れ親しんでいる道具を思い出せば、それは明らかです。ここで、よく相反するケースは「多くの顧客ニーズを満たす製品が欲しい」ビジネス要求です。いかにして複雑な要求をシンプルな構造・骨格の形と表層の表現で応えるか、デザインの腕の見せ所です。ここで有効に働くのはオブジェクト指向ユーザーインターフェース(OOUI)と呼ばれる考え方です。ユーザーの真の関心事はなんなのか、に目を向けて、プロダクトの形を仕立てることで、簡潔な形を目指すことができます。
9. Help users recognize, diagnose, and recover from errors
(ユーザーがエラーを認識、診断、および回復できる)
エラーは起きるものとして、起きても認識し回復できること。
ユーザーはエラーが起きた時、こちらが想像する以上に不安を感じています。その不安を和らげ、解決に導くことで、総体としてのユーザー体験は向上します。何か起きてしまったときの振る舞いが優れたプロダクトは、ユーザーの信頼が得られやすいと思います。
10. Help and documentation
(ヘルプとドキュメントがある)
ヘルプコンテンツがあること。
前述のように、ユーザーが困らないユーザーインターフェースをつくる努力は必須ですが、それでもユーザーの利用のシナリオの中で「困った」な瞬間は訪れます。そのときに、よりどころとなれるようなコンテンツが用意されていることが、安心安全につながります。すぐにアクセスできるところに、困りを具体的に解決するための打ち手を添えて、置いておくこと。
おまけ:勝手にキーワード版 『ヤコブ・ニールセンのユーザビリティ10箇条』
10個一字一句違わず必ず覚えるべき、とまでは言いませんが、10個くらいなんとなくキーワードで覚えておくと、とても便利なのでおすすめです。
勝手にキーワード版 『ヤコブ・ニールセンのユーザビリティ10箇条』
1. 状態可視化
2. 実世界
3. 自由
4. 一貫性
5. エラー防止
6. 思い出さないでいい
7. 柔軟性
8. 最小限
9. エラー回復
10. ヘルプ
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