【物語#1】星洗い

【 物語 #1 】 星洗い


*自作です。続きでるかも。


💗そのうち朗読UPします!パッと読むと硬めにみえる場合がありますが、ふわっふわのファンタジーの雰囲気です。わたしの声と雰囲気で読んでちょうどよくなるように作ってあります。お楽しみに!




◇◇◇◇◇◇ 【 星洗い 】◇◇◇◇◇◇
◇◇◇◇◇◇ ふじおひろみ ◇◇◇◇◇◇


じいちゃんの 仕事は 「かなしみ」を 洗うこと。

ほら、そこにある惑星の。

世界中の ひとたちから 吸い上げた

たくさんの「かなしみ」を

じいちゃんが ひとりで 洗っている。


『おーとまてぃっく』だって言ってるけど

じいちゃんは

いつだって、カラコロ 機械を 回しているんだ。

 

最初は

すっごく どろどろで

ぐちゃぐちゃで、でろでろ なんだけど

じいちゃんが カラコロ 音を鳴らすたびに

少しずつ、少しずつ、透きとおって

キレイな ヒカリを 放ちはじめる。

あわくて

やわらかくて、ふわふわ している。 

カラコロ。カラコロ。

じいちゃんが 洗った「かなしみ」は

長ぁい レーンに 乗って

からくり式の 機械に 通される。

仕掛けだって、ぜんぶ、じいちゃんが 作った。

これが、いちばん「かなしみ」に、ぴったりなんだって。

《すべてがととのった「かなしみ」》は

やっぱり、じいちゃんの手で、つぎの居場所へ導かれる。

空だ。

ひとつずつ。とっても、ていねいに。

ふわり。ふわり。ゆらり。

宇宙のほうへ向かって 上がっていく。

そこには、いままでに じいちゃんが洗ってきた

たくさんの「かなしみ」が飾られている。

きらきらと あわく光りながら

しっこくの やみの なかを、たゆたっている。

しっこく っていうのは、

さみしくて、たいくつ なんだって。

じいちゃんは、たまに、

すごく、かなしそうな 目を するんだ。

あるとき。

じいちゃんが飾った

《すべてがととのった「かなしみ」》が

ふっと またたいたかと思うと

ひゅんっと速度を上げ、どこかへと消えていくのを見た。

じいちゃんも、見た。

じいちゃんは泣いてた。

うれしそうに、泣いていた。

きっと、逢いたいひとが、みつかったんだ。

 

その姿は、惑星から 見たら

どんなにか、美しいことだろう。

宇宙には

惑星でいうところの オキアミが いる。

《すべてがととのった「かなしみ」》の食事。

オキアミは、

センタクウオの うんちを 食べて

大人になる。

センタクウオっていうのは

じいちゃんが回している

手動の回転レバーのついた

おおきなガラスボウルにいて

「かなしみ」たちの 汚れを 食べて 生きている。

どろどろで

ぐちゃぐちゃで

でろでろの アレが なくなったころに

機械の うえのほうから やってくる。

そうして

「かなしみ」たちが

きらきらの ぴかぴかに なるまで

カラコロ。カラコロ。いっしょに回っている。

オキアミがチギョのうちは

おなじガラスボウルのなかで

カラコロしているんだけど

大人になったら、宇宙へ 放たれるんだ。


ある日、ぼくは

ふしぎな《すべてがととのった「かなしみ」》をみた。

いっかしょを、ふわふわ、うろうろ している。

ぼうっと光って。ゆらりと光って。

ちいさく。おおきく。

もっと、おおきく。

どうやら 惑星に 気になるものが あるようだ。

ぼくは、手持ちの双眼鏡で、

カレが(カノジョかもしれない)

見ている先を のぞいてみた。

[ヒト]だ。

ヒトが、こちらを 見上げている。 

よくみると

たくさんの[ヒト]が

こちらを みあげている。

カレは、そのなかの

たったひとりにむけて、またたいている。

まるで、メッセージを 送るかのように。

やさしく、あたたかな ヒカリ。

何日も、何日も。

カレは、おなじ場所で またたいた。

季節がめぐれば、そのたびに、カレは

たったひとりを追いかけて、宇宙をたゆたった。

じいちゃんは、カレのために

元気なオキアミをたくさん放ったけれど

カレの ヒカリは だんだん 弱っていった。

遠く、惑星の、たったひとりの

[ヒト]を、みつめながら。

宇宙にも 冬が やってきた。

さみしくて かなしい しっこくの 冬。

空を見上げる あの [ヒト] は

今日も こちらを 見上げていた。

ぼくじゃない。カレだ。

響きあっている ふたりは

ずうっと お互いを 見つめている。

凍えるような、ちいさなヒカリに、

じいちゃんは 言った。

『わしが、夢をみせてやろうかの』

惑星に 朝が 来た。

宇宙に、カレの姿は なかった。

 『《すべてがととのった「かなしみ」》と

 ヒトが 出逢うには

 ちぃっと コツが いってな』 

 じいちゃんは、にんまりと 笑った。

 『心からの 憧れに その身をこがし

 燃えつきるほどの ヒカリを 求めることじゃ』

 

その日、惑星では

世界で いちばんの ほうき星が 流れたという。


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