奈良正哉(鳥飼総合法律事務所弁護士)

元 みずほ信託銀行(株)総合リスク管理部長、同執行役員運用企画部長、同常勤監査役。みず…

奈良正哉(鳥飼総合法律事務所弁護士)

元 みずほ信託銀行(株)総合リスク管理部長、同執行役員運用企画部長、同常勤監査役。みずほ不動産販売(株)専務取締役。 現 日弁連信託センター委員、(株)タムロン社外監査役、理想科学工業(株)社外監査役、(株)熊谷組社外取締役。

最近の記事

資産運用教育

 みずほは社員の年金制度をDC(社員が運用責任を負う)に一本化する。同時に資産運用教育も充実させる(4月26日日経)。大手金融機関でさえ社員の資産運用の知識が不足しているという認識だ。金融以外の業種ではなおさらだろう。  ちなみに、筆者はコンプライアンスや不正防止などの法律セミナーなどやるが、資産運用とそのリスク管理の経験があるので、最後に短時間資産運用にかかわることを話すことがある。するとこちらの方がずっと食いつきがいい。法律はどこか他人事で、お金はあくまでも自分事なのだ

    • EVは解なのか

       テスラは大苦戦している。EV全体も失速している。EVが順調にシェアを伸ばしていけば、テスラと中国BYDの2強になるだろうとの予測があった。どちらも外れ、EV界は中国BYDに支配されそうだ。太陽光パネルの二の舞か。  地球温暖化なのか。それを止めるのに人類は一致団結できるのか。その解としてEVなのか。それぞれの段階で疑問が解けない。トランプ氏ほど極端ではないにしろ、一部の活動家を除いて確信を持っている人の方が少ないのではないだろうか。そのような心情の中で、不便と高価格を我慢

      • 物言う社外取締役

         機関投資家からの要請で、社外取締役として面談・意見交換を行った。  これまで、社外取締役といえば、大所高所たる安全地帯にいて、ときたまご高説を垂れるという位置づけであったように思う。しかしこれからはそうはいかないようだ。「戦う」社外取締役までは求められていないが、社内外に「物言う」社外取締役であることは求められつつある。 鳥飼総合法律事務所 弁護士 奈良正哉

        • 内部通報こそ切り札

           内部通報の活用があまり進んでおらず、通報者の30%程度が通報したことを後悔しているとの調査結果がある(4月20日日経)。  上級管理職が不正を働くと、その発見はほぼ内部通報による場合に限られる。特に、社長、支店長や現法長などによる犯罪行為はそうだ。「経営者による内部統制の無効化リスク」として内部管理の教科書にも定義されている。この内部通報を司るのはコンプライアンス部門や内部監査部門などだろう。同部門は、通報しやすいか、通報者に不利益が及んでいないかなど、制度の運用が適正に

          紅麹の影響はどこまで

           紅麹が問題となった小林製薬は、再発防止策を取締役会で定期に話し合うことにしたそうだ(4月16日日経)。よくある「・・・委員会」の設置と同類の「みそぎ」の一つだろう。  同記事によれば、小林製薬の紅麹関連以外のサプリでも売上が落ちている商品があるようだ。文字通りサプリメント(補助)であり必須食品でも薬でもないから、消費者は危険を感じれば購入を控えるだろう。他社のサプリにも影響は及ぶのだろうか。おそらく一斉に自社の製造工程や含有要素の安全確認をしているところだろう。 鳥飼総

          地方金融機関の受難は続く

           相続を期に、地方に住む親から都会に住む子供世代に預金が移動している(4月14日日経参照)。金利が付き始めた最近の傾向ではなく、多死社会になり大相続時代になった近年の傾向だ。  都会に主要な基盤を持つメガバンクは黙っていても預金は集まる。地方金融機関は真逆だ。地方から都会への大きな流れに逆らって預金をつなぎとめなくてはなりない。営業も必要だろう。高い金利をつけることも必要だろう。金利が上がり始めて地方金融機関も短期的にはやっと一息だが受難は続く。 鳥飼総合法律事務所 弁護

          廃業・倒産も悪いことばかりじゃない

           ゼロゼロ融資の麻酔も切れ始めて、2023年度、廃業・休業は5万件を数え、倒産も9千件を超えた。対して、M&Aの件数は8百件弱だ(3月31日、4月9日日経)。スムースに雇用が引き継がれたのはごくわずかということだろう。しかし、失業率へのインパクトはほとんど語られない。そもそも件数の割に従業者数が少ない。また、未曾有の人手不足の中、いったん失業しても次の仕事がすぐ見つかることもある。経験的にも、廃業や事業所の閉鎖により従業員を解雇しても、従業員が再雇用に手間取ることはほとんどな

          廃業・倒産も悪いことばかりじゃない

          中国人の中国脱出

           中国からの脱出は外資だけではない。中国人も大挙して脱出している。メキシコ経由アメリカへの不法中国移民はかねてから報道されている。もちろん日本にも来ていて、在日中国人は、21年末の72万人から23年6月には79万人へと急増している。しかし中国人の移民相手国としてはアメリカは3位、日本は10位だ。1位はタイで、なんと6600万人の人口のうち930万人が中国人になったそうだ(今週号のニューズウィーク日本版)。  力による現状変更すなわち領土の侵略は非難を浴びるが、移民により領土

          ようこそマイクロソフト?

           TSMCに続いてマイクロソフトも日本に巨額投資をする。報道は総じて歓迎ムードだ。もちろん日本の技術者の能力、市場としての日本の魅力などを評価してのことだろう。  ただ、裏には「安い日本」があるだろう。円安だし、物価も安いので投資額を抑えられる。なにより賃金が低い。お買い得感たっぷりと言える。かつての三菱地所によるロックフェラーセンター買収の逆ベクトルだ。 鳥飼総合法律事務所 弁護士 奈良正哉

          中途採用43%

           2024年度の採用計画では、中途採用は43%と5割に迫っている(4月8日日経)。中途入社はごく一般的な入社経路になりつつある。そのうち新卒採用割合を逆転するだろう。  マスコミも「中途採用」という文字通り「中途半端」感のあるネーミングではなく、市民権を得つつある「キャリア採用」や「即戦力採用」というネーミングに切り替えたらどうか。会社人事部も、むしろ中途入社を一般的なキャリアパスのスタートとして人事制度を構築するべきだろう。 鳥飼総合法律事務所 弁護士 奈良正哉

          後継者選びの難しさ

           アクティビストを撃退したディズニーのボブ・アイガー氏は名経営者とされる。だからいったん引退した後にCEOに返り咲いた。ただ返り咲きの理由は、アイガー氏の指名した後継者の評判(おそらく実績も)が芳しくなかったからとされる。  後継者選択は指名委員会の最重要ミッションとされる。それだけ難しいのだろう。日本にも誉れ高い名経営者でありながら後継者選びに選びに失敗したり、迷走したりするケースは多い。後継者選びは私情が色濃く反映されるからか、経営そのものとは別の能力なのだろう。 鳥

          アクティビスト歓迎

           ディズニーがアクティビスト対策に5,000億円使った(4月5日日経)というからなんのことかと思った。記事を読むとアクティビスト攻撃広告等に使った金、つまり純粋な社外流出は60億円ほど。5,000億円の多くは配当と自社株買いに使われたようだ。  これなら経営自体に興味のない個人投資家はアクティビスト歓迎だろう。実際日本市場でもアクティビスト登場で株価が上がるケースは稀ではない。  会社側もアクティビスト排撃ばかり考えていると、機関投資家はもとより個人投資家にもそっぽを向か

          岡口裁判官罷免

           仙台高裁の岡口裁判官が弾劾裁判で罷免された。SNSへの不適切な投稿が問題にされた。  岡口裁判官といっても法曹関係者以外はほとんど知らないだろう。岡口氏は裁判官というよりも法曹向けの専門書の著者として有名だ。司法試験受験生や弁護士の間では、民事裁判手続きに関する著作はほぼ「教科書」として扱われてきた。  半面SNSへの投稿を見てもやや「変な人」だったのだろう。弁護士だったら許されたかもしれないが、裁判官としては許されなかったということだろう。 鳥飼総合法律事務所 弁護

          卒業即起業

           類まれな才能とほとばしる情熱があるなら卒業即起業も止めない。ただ、社会デビューとしては大企業で社会人としてのイロハを学ぶのも悪くはない。遅刻してもちっとも悪びれない「若手起業家?」には苦笑を超えて不信感を持つこともある。  「時を守り、場を清め、礼を正す(森信三)」「時間を守り、職場を整頓し、挨拶を励行するの意」くらいは身に着けても損にはならない。 鳥飼総合法律事務所 弁護士 奈良正哉

          入社即転職

           新入社員は、転職を視野に入れているどころか転職前提で入社する向きもあるそうだ。入社早々転職サイトへの登録は当たり前のようだ。さらに最近の人手不足だ。新人はさぞ大切にされるだろう。もっともこうした環境に甘えない方がいい。給与の本質はストレスの対価だ。昭和なバカ上司も反面教師ではある。  バカな上司が変わらない見込みならさっさと転職するのも手段だが、何がやりたいのかわからないうちに逃げばかり考えても成功しない。 鳥飼総合法律事務所 弁護士 奈良正哉

          新入社員のお金の使い道

           年度が替わって新入社員のおかげで電車が混んでいる。  新NISAをはじめとして投資ブームと言える。新人は、なるべく早く投資信託積立を始めるべしとして、金融機関から勧誘を受けるだろう。ただ、あまり真剣に考えないことだ。  お金があれば、友人知人との飲み食いに使うべきだ。勉強も大切だが、まだなにがやりたいか、何が向いているかはわからないだろう。投資も勉強も必要性を実感してからでも遅くない。 鳥飼総合法律事務所 弁護士 奈良正哉