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目黒区美術館(東京都目黒区・目黒駅 コレクション展)〜郷さくら美術館(同上・中目黒駅)〜東京都写真美術館(同上・恵比寿駅 松江泰治展&FIRE)〜恵比寿ビール記念館(同上)

・目黒区美術館(日々のよろこび2021 目黒区美術館コレクション展)

目黒川を見てみようと思い立ち、自然教育園を後にして目黒駅方面へ。目黒駅もまた高台に存在しており、微妙な勾配を登りながら駅へ。駅を通りすぎた反対側が目黒川方面となる。権之助坂というこれまた急勾配の坂道を下りながら、カラビンカ、目黒鹿鳴館の移ろいを感じながらいろんなことがあったなあとホテホテ歩く。

目黒川を渡り、川沿いの遊歩道を進めばすぐに案内板が出てくる。目黒区美術館は図書館などと同じ敷地内にある比較的広い場所。ちなみに近くにはラーメン二郎の目黒店もある。この日は酉の市が行われており、普段にも増してやばいくらいの行列になっていた。ああ怖い怖い(空いてれば行こうと思っていた)。

目黒区美術館では2階でコレクション展が開催。美術館が購入あるいは寄贈を受けた収蔵品を展示するという興味深い企画展。草間彌生、青木野枝、李禹煥といった現代作家や、駒井哲郎、浜口陽三、浜田知明といった版画家、吉村弘といった音楽家まで展示作品は多岐にわたる。撮影は不可。靉嘔による『虹のエンバイラメント』のみ撮影できる。

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面白かったのは前述した吉村弘の作品。音楽家らしく五線譜を音になぞらえた形に表現した絵本や、独自で発明した楽器(おもちゃや小物を組み合わせて作ったもの)などがあって気持ちが明るくなる。あとは洋画家の武内鶴之助による風景画が印象的。パステル画の草分けと言われているらしい。空の鮮やかな色彩に見とれてしまう。矢柳剛の毒々しい作品も目を引く。

2階ではブロックなどを使ってオリジナルのデザインをしてみよう、という参加型の企画が行なわれており、渡されたブロックを手にしながら色々と作っている人がいる。見学者は少なかったが、親子で楽しんでいる様子も見られた。近所に住んでいるのかもしれない。惜しくも会期前だったけれど、1階では障がいのあるアーティストによる作品展を行うらしく、これも合わせて見たいところ。トイレは和式と洋式。

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・郷さくら美術館(現代日本画「WABI/SABI」展)

目黒川を中目黒方面へとしばらく歩く。やや空が薄曇り気味になってきたものの、まだ雨が降る感じはしない。
郷さくら美術館は現代日本画を基調とする美術館でニューヨークにもある。今回は現代日本画をメインテーマとした企画展で、日本特有の美意識である「わびさび」をテーマに、建築物や草花などのジャンルに分けながら紹介している。今回は写真撮影はできない。初公開の作品もある。

日本画は大判の作品が多く圧倒的な鮮やかさに魅入られる。入り口すぐにいきなり飛び込んでくるのが佐藤晨『冬の月』。静謐な月の冷たさが骨にしみてくるようである。いくつかの作品では作者による作品へのコメントが寄せられている。なかでも那波多目功一『寂』には惹かれる。本当に寂しく、そして静寂が伝わってくる。

中1階では吉川優『夏日』、吉田舟汪『神象那智』が個人的に好みである。ソファも備えられているのでしばらく座りながらぼんやりと眺める。ニューヨーク館の紹介映像もある。作風は本当に様々で、古来からの日本画イメージそのものの作風もあれば、アニメやゲームの背景画のようなタッチの作風もある。どれも写実的で美しい。

エレベータで3階に上がって企画展の続き、この中では松村公嗣『冬さぶ』齋藤満栄『金魚』が印象的。いい加減に足が疲れてきたので各フロアにあるソファに必ず腰掛けながら休み休み拝見する。それができる環境というのはとてもありがたい。

階段で2階に降りれば、『桜百景』と称して収蔵品の展示を行っている。美術館でも目玉となっている中島千波など現役画家の桜をテーマにした作品がある。栗原幸彦のコメントが中島千波を意識していて面白い。
トイレは1階の多目的トイレ(ウォシュレット式)のみ使用可能。中目黒駅徒歩5分という好立地にあるものの、まだ知名度が少ないのか見物者は少ない。フロアを独占する時間もできるほど。もったいない。

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・東京都写真美術館(松江泰治 マキエタCC)

中目黒駅から旧山手通りへと出て恵比寿方面へ。冬の時期の恵比寿ガーデンプレイスではクリスマスシーズンに合わせた仕様で映えの写真を撮る人たちであふれている。

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東京都写真美術館はガーデンプレイスの中にある。1階ではフィルムフェスティバルが開催中。展示室は2階と3階、それと地下1階にある。今回は2階の企画展を見学。

2階で行なわれている企画展は写真家の松江泰治による作品。
世界中の都市を俯瞰で撮影するシリーズの「CC」と、ジオラマを作成し本物の都市と見紛うような写真を撮影する「マキエタ」を一緒に展示している。

何が本物で何が偽物か? 展示品の作品プレートではそのヒントはないため、それを考えながら謎解きをしてみるのも面白い。実際によく注目して見てみるとわかってくる。現実と虚構を分けるのは人間の存在によるところが大きいのも興味深い。人間のいない現実の都市は、あるいは虚構そのものなのかもしれない。なんてね。帰り際に学芸員の方に尋ねてみたところ答えをそっと教えてくれた。なるほど。

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硬質でかっこいい階段をひたすら下りて地下一階にたどり着くと、地下1階では「FIRE」という別の企画展が行なわれている。


スイスの資産運用会社によって設立されたピクプリテ賞。各回ごとに設けられたテーマをもとにして4800人を超える作家がノミネートされ、その優秀者による展示(今回は「火」をテーマにしている)が今回は行なわれている。今回は12人の写真家による展示。日本人から川内倫子と横田大輔の2名。
印象的なのはほとんどの写真家が社会派といえる、割とダイレクトな表現をしていること。ほとんどの写真家が個人的には気に入ったのだけれど、中でもインパクトがあったのは以下の写真家。

ベイルートのポストカードに火をつけることでレバノンの内戦を表したアブダラ・ファラー(ジョアナ・ハッジトマスとハリール・ジョレイジュという二人によって設定された架空の人物)、

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アメリカ南部の山火事をもってアメリカに根強く残る人種差別を謳ったサリー・マン、

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マスカレードにゴミをまとわせてアフリカにおけるゴミ処理問題を提起したファブリス・モンテイロ、

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カンボジアで起きた大虐殺を影絵にして伝えたマク・レミッサ、

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やけど被害者に挑むシング医師を通してインドの貧困問題を浮き彫りにしたブレント・スタートン、

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報道写真とはまた一味ちがったアートというアプローチで警鐘を鳴らしていて、それがとてもわかりやすいし、真摯な想いが伝わってくる。


・恵比寿ビール記念館

最終目的である。長旅の終わりにはね、グイッと行きたいものですよね。
恵比寿ガーデンプレイスの奥まったところにあるビール記念館。その名の通り恵比寿ビールの記念館である。恵比寿ビールの設立から今に至るまでを展示している。

ガイドツアーは要予約制のため詳細までは観ることができなかったけれど、なんといってもここではビールコーナーがメインといっても過言ではない。クラフトビールが1杯400円という安価で飲めるのである。これぞ至高。外ではやや雨が降ってきていたがお構いなし。30分の限定だけれども、上質なビールとおつまみで良い気分。

同じようなことを考えている人が多いらしく、入場時にはすでに行列。閉館時間までもあまり時間がない。はたしてビールをあきらめるか? それとも館内の展示をあきらめるか?

答えは明白。ビール一択。

というわけであまり普段はやらない行列に並び、ビールコーナーの席が空くのを待つと、さほど待たずに案内された。選択は正しかった。

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実際には1杯400円なのだけれど、これをゲームセンターなどでよく見るコイン両替機で恵比寿コインというのに換金する。それをカウンターに渡してビールと交換するのである。なんでわざわざ回りくどいことをするのか疑問に思いながら両替機のボタンを押すと、ポン、というまるでビールの栓抜きみたいな軽快な音を立てて金色のコインが1枚。
これや・・・! これを聞かせたかったんや・・・! と納得。

ほろ酔い気分でコースターに載せてあるプチ情報を見ながら、おつまみに選んだチーズ盛り合わせをつまみ、高い天井の建物、ビールプラントなどに恵比寿ビールの歴史を見る。そんな30分。

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