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武蔵野美術大学美術館(東京都小平市・鷹の台駅)

東京都にある芸術大学の雄として名前が挙げられる武蔵野美術大学。いわゆる東京私立五美大のひとつである。展示期間内でないとなかなか入れない美大の美術館、ようやく五美大の三つ目を攻略するチャンスが巡ってきたので訪問。多摩センターの多摩美術大学、八王子の東京造形大学は言うに及ばず、武蔵野美術大学も小平市という都心からはだいぶ離れた場所にある。芸術活動のためには広い敷地が必要なのかもしれない。

最寄駅は鷹の台駅ではあるものの、徒歩で訪れるのは少し遠いため公共交通機関や自転車が良いかもしれない。大学の構内は非常に広いが、正門から真っ直ぐと進めば美術館にたどり着ける。ちなみに図書館も面白い造りをしているのだけれど現在は一般開放されていないため残念。
開催されていたのは原弘の展覧会「原弘と造形」と、世界中の椅子を集めた「ムサビのデザイン」展の二つの企画展。さすがは美大の美術館、一般の大学博物館に比べて訪れている見学者の数が桁違いである。ちょうどオープンキャンパス期間というのもあってか、今までに訪れた大学関係のミュージアムの中で最も数が多い。

スロープで上って行くスタイル

階をまたぐほどの長さのある渡り廊下のようなスロープを一往復半ほど上って行った先にある第三展示室で開催されていたのは「原弘と造形」展。日本近代デザインを切り開いた一人であるデザイナー原弘の仕事を紹介している。武蔵野美術大学の教授としても活動していた原弘は花王石鹸のデザインや雑誌『サラリーマン』『Travel in Japan』などブックデザインやポスターの仕事によって広く知られている。長きに渡り本の装幀では第一線で活躍し、多くのデザイナーが在籍する株式会社日本デザインセンターの創設にも関わった人物である。
その活動は1920年代という割と早い段階から海外のアヴァンギャルド芸術に影響を受けた新興美術運動に身を置き、ダダイズムやプロレタリア運動に傾倒していったという。そんな原弘も時代の波には逆らえなかったのか、戦時中には大政翼賛的な雑誌『FRONT』の表紙をデザインするなどしている。戦後は亀倉雄策らと共に東京オリンピックや札幌オリンピックのデザインで関わるようになっている。写真家の木村伊兵衛とは仕事の面でも交流が深かったことも窺える。正直なところデザイナーはあまり知らない世界だったのでとても興味深く楽しめた。

そして椅子の世界

もう一つの展示である「ムサビのデザイン」は残りの展示室第一、第二、第四、第五とアトリウム、かなりのスペースを割かれて開催されている。国内外のいろいろなデザインの椅子を紹介しているというユニークな展覧会。これだけ椅子をメインに展示しているのを観るのは八王子の村内美術館以来のこと。

どの展示室にも椅子

展示室ごとに「近代椅子デザインの源流」「トーネットとデザイン運動」「国際様式と家具デザイン」「20世紀中盤のアメリカと大衆消費社会」「北欧モダン」「イタリアンモダン」「ポストモダン」「日本の椅子」「フォールディングとロッキング」というテーマごとに関連するデザインの椅子を準備している。一部を除いて実際に座ることができるというのも特徴で、次から次へと腰掛けてみたくなるのが人間というもの。

椅子の応酬

かなり閉館時間ギリギリだったのと他の見学者で埋まっていたりして全てに座ることは叶わなかったものの、気になった椅子にはあらかた座ることができたので満足。トイレはウォシュレット式。
これで東京私立五美大は三つを攻略。残りの日本大学芸術学部(江古田)や女子美術大学(中野)は都心に近いため今年中に気になる展示があればコンプリートしたいものです。

椅子づくし


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