一杯に捧げた青春

てんぺいです、僕は明日スターバックスのアルバイトを卒業します。今日は最後のオープンでした、オープンのシフトに入り始めたのは11月からなので4カ月ほどしか経験できませんでしたが、朝に入ることでよりお客さんとお話する時間ができ、僕の顔をおぼえてくださるお客様も増えました。


就活の面接で「大学生活で一生懸命頑張ったことはなんですか?」という質問にはすべて「スターバックスでのアルバイトです」と答えるほど僕の大学生活の中でスタバの存在というものは大きなものになっていった。

スタバでアルバイトをしたいと思った理由はいたってシンプルで同級生に実際働いている友達がいてその子のお店へ遊びに行ったときにとても楽しそうに働いている姿を見て僕も「キラキラしたスタバ店員になりたい」という理由で応募した。

これがアルバイトの面接かと思うくらい30分ほどの長い面接を受け、合格のメールをいただいたときには心から嬉しくて働いていた友達に真っ先に連絡した。

自分の今までの人生は誰よりも不器用でみんなが何気なくできることでも自分には人よりも多くの時間や労力がかかることは重々承知していた。スターバックスという会社に入社してからもそれは同じだった。

まず、僕が一番最初につまづいたのはレシピの圧倒的な多さ。サイズが違えば扱っているシロップ、ショット、コーヒーの記号、暗号みたいなコーリングと呼ばれるIDなど自分のキャパに対してこなすべきことが多すぎる。そして細かなルールの多さ。これはしていいけど、これはダメ。ハウスルールと呼ばれるお店独特のルールも加わり覚えるのが大変だった。


正直、自分には合っていないアルバイトだと思った。


あんなにキラキラに見える店員さんは全部嘘かと本当に思った、

当初はとにかくシフトに行きたくなくてシフトの日が来るたびに多くのフィードバックを受ける苦しさと戦っていた。


でも絶対にあきらめたくなかった、シフトに向かう電車の中ではずっとレシピの確認を行い、ひたすらにシミュレーション。頭の中はもうパンク寸前の毎日だった。

研修期間においてスタバはレジをするときもバーでドリンクを作る時も先輩の1人がつきっきりで横についてくれる、

研修を卒業した後がまさに地獄のように大変だった、バーに立ちどんどんとドリンクが流れるようにやってくる、レシピが突然とんでしまい、頭は真っ白。何もわからなくなり、ただ立っているだけ。

当時の店長に「もうてんぺい後ろに下がって皿洗って」といわれた時は目の前が真っ暗、本当に泣きそうだった、、


そこで初めてできない自分に腹が立ち、絶対に乗り越えてやると思った、

先輩と夏休みの2週間、お店が一番混雑する12時台のメインバーを任され特訓したところから、自分は大きく成長することができたと思う。

当時誰よりもメモをして質問をして社員さんや先輩のいいところを盗もうと必死だった。

その努力も実を結び入社して1年で時間帯責任者になることができた。



ラテを作りながら、「今日もお仕事長いんですか?」と質問すると「明日重要なプレゼンがあるんだよね」と心の内を話してくださる。そんな一分一秒も無駄にできない時間にわざわざラテを飲みに足を運んできてくださるその気持ちに嬉しくなって、スリーブに「お疲れ様です!お仕事がんばれ」と軽いイラストを添え、ラテをお渡しする。

このわずかな時間にお客さんと繋がることのできるほんの一瞬の時間が大好きで自分はこの場所に青春を全力で捧げることができたのだ。

コーヒーが一杯100円で買うことのできる時代にわざわざ安いとは言えない場所でコーヒを買ってくださること、お客さんは決して一杯のカップを求め来ているのではない。張り詰めた日常の中でほんのわずかでもその紐をゆるめることができる時間をもしくは生きる活力というものを、あのわずなコミュニケーションの中で求めているのだ。

僕なりの精一杯のおもてなしで生きる人に少しでも元気を与えることができたら、、

そんな僕が卒業するのを寂しいと言ってくれるお客さんがありがたいことにいる、社会人頑張れよ、こっちの世界はもっと楽しいぞと声をかけてくれる方がいる。

今日もまた一人常連さんとお別れをした、「来れたらまた来ます」と言って僕のシフトが終わるギリギリの時間に駆け込んでくださり、差し入れをいただいた。涙が出るくらい本当に嬉しかった、


自分はその人に何ができたのだろうか、社会への荒波を経験していない一人の平凡な店員に何ができるのだろうか。自分は温かいラテをいつも持って来てくださる素敵なタンブラーに思いを込めて注ぐだけだ。そしてほんのわずかでもお話をする。それだけなのにほんとにそれだけなのに涙が出るくらいお別れが悲しい。

繋がりは繋がろうと思わないと繋がれない。おもてなしは心がこもっていないとそこに感動はない。この人と出会うことができて心からよかったと思う瞬間だった。またの再会を誓い深く礼をし敬礼してその方とはお別れをした、

働く中で数えきれない大切な出会いをすることができたと胸を張って言うことができる。

就活時にシフトに入っている時にはアドバイスをもらったり、パーマを当てたらお客さんがチャラくなったといじってくれたり、僕が元気や活力を与えないといけないのに気付いたら僕が元気をもらっていた。

今日、お店をでて駅まで歩いているときにあと働くことができるのが1日しか残っていないということ、今までの思い出がぶわあと頭の中を走馬灯のように駆け巡り一気に涙があふれ出てきた。

就活の時には毎回スタバに立ち寄り、自分が自分であることを確かめた後、勝負曲を聴きながらその場で緊張からあふれてしまうほどの涙を流し、その場所を特別な瞬間にさせる。

明日が最後なのだ、しっかりと働こう。思いを一人でも多くのカップに注ごう。胸を張って緑のエプロンと共に僕の熱い熱すぎる青春が通り過ぎ去るのを一人でも多くの人に見送ってもらうために明日という日を全力で生きる。

20210325てんぺい

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