「良い編集者」と「悪い編集者」を決める7つの基本スキル

紙メディア、Webメディアに関わらず、メディアを運営するには少なからず「編集者」が必要になります。「編集者」と言ってもその役割はさまざまですが、一言で言えば「コンテンツを企画・制作して発信する人」と考えてよいでしょう。

私自身、フリーランスになって、いろいろな編集者とお仕事をさせていただく機会があるのですが、「良い編集者」と出会うと本当に幸せな気分になります。「良い編集者」と仕事をすると自分のスキルや能力が一気に広がった気がして充実感に満ち溢れるんですね。しかし「悪い編集者」に出会うと、心から残念な気持ちになります。ムダな時間を費やすことが増え、学ぶことも少なく、最終的に届けるコンテンツ自体が残念な結果になることもしばしば。

では「良い編集者」とは、どんな編集者でしょうか。今回は自戒の意味も込めて「良い編集者」について考えてみたいと思います。私は「良い編集者」とは、ユーザー(読者)の利益になるコンテンツを作る編集者だと思っています。

言い換えれば「悪い編集者」とは、ユーザー(読者)を向いていない編集者です。

以下は、私が考える編集者として必要な7つの基本スキルです。

① 企画
② ディレクション
③ 進行管理
④ キャスティング
⑤ 品質管理
⑥ 情報収集
⑦ 顧客折衝

この7つの基本スキルについて説明していきましょう。

① 企画

企画を考えるのは、編集者に限らずお金を稼ぐためのビジネスの基本です。しかし、企画会議やブレスト、企画書作成が苦手な編集者も少なからずいます。企画は自分が特別面白いアイデアを出す必要はありません。それを勘違いして自分はぜんぜん面白いアイデアが出せない…と悩む編集者も多いようですが、どんなにくだらないことでも、発言することに意義があるのです。人はそのくだらない発言からインスピレーションを得て、また違うアイデアを思い浮かべます。企画会議は、みんなのアイデアが化学反応を起こして、何が生まれるかわからないから面白いのです。自分がとびきりのすごいアイデアを出さなきゃ!なんて気構える必要はないのです。しかし、なかにはまったく発言をしないで、箇条書きの退屈な企画書しか作らない編集者はいます。これはもうスキルの問題ではなく、職務怠慢でしかありません。チーム内や編集部内で人を楽しませよう、驚かそう、という気概のない人がユーザー(読者)を惹きつけられるわけがないからです。

よく「呑むのも仕事」という編集者もいますが、これはあながちウソではありません。名物編集者と言われる有名な「良い編集者」は例外なく、異分野のいろいろな人と会って刺激を受けるのが大好きな人たちばかりです。「企画力=人を巻き込んで対話する力」だと信じてよいでしょう。

あなたが企業の広報・宣伝・マーケティングなどの責任者で、コンテンツ制作を外部の制作会社に依頼する場合は、まずはブレストのような打ち合わせの機会を設けるとよいでしょう。とにかく議題に対してどれくらいの発言ができるのか、アイデアが出せるのかを試してみることをオススメします。口下手でおしゃべりが苦手だが、企画を考えるのは得意、という編集者もいますが、基本的に発言を求められているときに発言をしない編集者は、相手の立場に立つ努力を放棄しているとも言えます。そのような編集者が、見ず知らずのユーザー(読者)の心をつかむことは決してないのです。

あなたがライターやカメラマン、イラストレーターで、編集者とお仕事をする場合も同様です。お題だけ与えて「あとはお任せします」と言う編集者には要注意です。そんな編集者に限って、お任せにしてくれません。出来上がってからあれこれ指示を出してくるケースが非常に多いのです。これは最初から自分で「何がしたい、読者に何を訴求したい」という考えを持っていないため、出来上がりを見てから、コンテンツの良し悪し(この場合は往々にして好き嫌い)を判断したがるのです。

② ディレクション

ディレクションとは、編集部やプロジェクトチーム内での会議や取材現場で的確な指示、段取りができるかどうかの能力です。もちろん人によって得意不得意はあるのですが、的確なディレクションができるかできないかは、主体性があるかないかと同義語だと思って間違いありません。その指示の正誤はあまり関係ありません。主体的に現場を動かすかどうかが重要なのです。自身で主体的にディレクションをする人は、その後の結果に責任をとります。ディレクションをしない、あるいは曖昧な人は責任をとるのを恐れている、もしくは自分で何をしたいのか、明確なビジョンがないことがほとんどです。

あなたがいくつかの制作会社にオリエンをしたとします。その会社が複数人で現れた場合、その役割分担が明確かどうかを見極める必要があります。誰が進行管理を担って、誰がどのパーツについて発言するのかなど、不明瞭と感じたら、個々の能力以前にその会社のチーム力、制作能力を疑うべきでしょう。

打ち合わせではリーダー格の人が中心に発言をすることが多いですが、現場でのディレクション業務は誰がやるのか確認しておきましょう。そして、その現場担当者になりそうな人に質問攻めをすることをオススメします。特にWebメディアでは30歳を超えた中堅編集者でも、現場での撮影や取材の段取りの経験が乏しい人も少なくありません。現場での香盤表確認を含め、全体の段取りをできるだけ詳しく確認しておきましょう。

あなたがライターやカメラマン、イラストレーターなどのクリエイターで、編集者と仕事をする場合も同様です。曖昧なディレクションは、後々のトラブルの源です。制作トラブルのほとんどは曖昧なディレクションが原因で起こります。少しでも疑問点や不明点があった場合は、どんなに些細なことで必ず確認するようにしましょう。質問に対して「まあ、それは現場になってみないとわからない」とか「とりあえず進めてみて」と言う「悪い編集者」には徹底的に詰めておきましょう。

特に取材などの現場ではやり直しがきかないので、綿密な準備が必要になります。「良い編集者」は、現場で誰がランチを用意するか、休憩はどのタイミングでとるのか、誰がお茶を入れるのか、イスはいくつ用意しておくか、誰から挨拶して、誰と誰をつなげるか、など予め数分単位で段取りを準備しています(仮に香盤表などで文書化していない場合でも頭に叩き込んでいます)。「悪い編集者」は行き当たりばったりで、現場でのアドリブも効きませんので、事前に1つ1つ細かく確認する必要があるのです。

③ 進行管理

どんなに企画力があるアイデアマンでも、進行管理が苦手な編集者はたまにいます。クライアントをはじめ、現場のライターやカメラマンなどからのクレームのほとんどは、この進行管理の不備から起こります。クリエイター気取りで、スケジュール管理は二の次、と考える編集者が多いのです。

どんなビジネスでも同じですが、スケジュールは絶対です。編集者は作家や漫画家などクリエイターとの仕事も多いので、むしろそういう締め切りにルーズになりがちなクリエイターの管理をするのも重要な仕事になります。つまり「猛獣使い」にならなければならない仕事なのに、自分がクリエイター気取りでスケジュールを二の次にしていては本末転倒なのです。

納品遅れや納品ミスは論外ですが、ギリギリまで動かず、どんなに忙しくても最後はなんとか帳尻合わせをするのを得意げに自慢する編集者もいます。その場合はたいてい陰でライターやデザイナーにしわ寄せがきています。「とりあえず間に合えばいい」とギリギリまで寝かせたりすることで、多くのスタッフに負担がかかることを勲章のように考えているのです。これは制作スタッフのモチベーションが下がるのはもちろん、時間に追われることで品質管理がおざなりになるケースがほとんどです。火事場の馬鹿力を自慢する編集者は「悪い編集者」であると思って間違いありません。

最近、私自身も経験したのですが、依頼から締め切りまで1週間という原稿作成の仕事を受けました。しかし公開日が決まっていたわけでなく、納品してから45日ほど寝かされたのです。ボツになったのか心配になって、どうなっているのか何度か進捗状況を確認したのですが「忙しいのでちょっと見られてない」の返事のみ。

そして45日後に原稿の修正指示のフィードバックがあったのですが、翌日の正午までに修正して戻せ、との指示。45日寝かせた理由も説明せず、戻しが1日しかない理由の説明もなし。私も他の仕事との兼ね合いもあるので、ある日突然フィードバックされても、時間がなくておざなりになりかねません。もし同じ日に数本の締め切りを抱えていたら対応できなかったでしょう。

フィードバック自体の内容はとても的確な指示で、「なるほど」と勉強になったのですが、コンテンツの品質管理だけできても「良い編集者」とは言えません。むしろ仕事相手の都合をまったく考えない編集者です。こんな人とは二度と仕事をしたくないと思わせた時点で「悪い編集者」であることは言わずもがなでしょう。

一方、対応が後手後手に回ってしまうことが習性になっている編集者は、自分ですべて抱える傾向にあります。自分でやれば文句はないだろう、と修正対応を自身で勝手にやってライターに一切フィードバックをしないで公開してしまう編集者も多く見てきています。

特にクライアントありきのソリューション案件では、担当編集者はクライアントの顔色を窺うのに必死で、制作スタッフをないがしろにするケースが目につきます。私自身、フリーになってからある企業のメディアで、8回の連載コラムを書かせてもらったとき、書いた原稿のフィードバックがあったのは2回のみ。あとは勝手にリライトされ知らぬ間に掲載されていて、その連絡もなし。編集者本人としてはクライアントの確認さえできれば問題なしという認識なのでしょう。

「良い編集者」は、クライアントと制作スタッフの区別(あるいは差別)をしません。制作したコンテンツが最終的にユーザー(読者)のためと理解しているからです。たまに「ライターに休日なんてねえんだよ」と得意気にうそぶく編集者もいますが、ソリューション仕事で自身がクライアントにいわゆる「業者扱い」されてきた編集者やサラリーマン体質の編集者は、往々にしてこういうスタンスで仕事をします。彼らに共通しているのは、直接お金をくれるクライアントの顔は見ているが、その先にいるユーザー(読者)の顔は見えていない、ということです。

あなたがクライアントという立場で、外注している制作会社の編集者や代理店の営業がもしあなたに忠実でも、制作スタッフを泣かせている編集者からは決して「良いコンテンツ」は上がってきません。もちろんあなたが同じようなことを編集者や制作スタフにしていれば、なおさらです。

あなたが編集者から仕事をもらうクリエイターで、こういう進行管理がルーズな担当編集者にあたった場合は、泣き入りせずにその上の責任者に直訴してください。上司にあたるリーダーやマネージャーに直訴すれば担当者を変更してくれないにしても、注意はしてもらえます。私自身、会社員時代に数十名の部下を抱えていましたが、進行管理をおざなりにする編集者はどんなにキャリアが長くてもリーダーに昇格することはありませんでした。進行管理がきちんとできる編集者は、たいてい他のスキルも高いものです。

④ キャスティング

編集者の重要な業務の1つです。コンテンツの良し悪しは、誰をキャスティングするかで、ほぼ決まると言っても良いでしょう。キャスティングは、すなわちその企画主旨に合ったコンテンツを最適な形で仕上げるために、どのスタッフを起用するかにかかっています。

コンテンツ制作の仕事は、常に時間に追われています。そんなときにやっつけ仕事にならないためには、ふだんからどれだけの制作スタッフを抱えているかが勝負の分かれ目になります。たとえばある料理企画で世界のキノコ料理レシピを作る、という企画を進めることになった場合。まず料理に詳しいライターや料理が得意なカメラマン、あるいはキノコの専門家を起用すると考えるわけですが、1週間以内に手配しなければならない、となったとき初めて探すようでは、おざなりになりかねません。

あるいはいつも同じスタッフしか使わない編集者は、リソースが足りなくて締め切りに間に合わない、と自らクビを絞めることになります。また同じスタッフなら安心だからと、新しいスタッフを試さずにルーティンワーク(マンネリ)に陥っていきます。

そうならないためには日頃からアンテナを高くして、必要になりそうなジャンルやテーマのスタッフを予め用意しておくことが必要なのです。あなたが制作会社に仕事を依頼するときは、その会社が外部にどれくらいの制作スタッフを抱えているか予め確認しておくとよいでしょう。

「良い編集者」は常に有能なスタッフを探しています。あなたがライターやカメラマンなどのクリエイターなら、遠慮なく売り込みましょう。「忙しい」と言って売り込みを疎んじる編集者は「悪い編集者」ですので、まったく気にする必要はありません。「良い編集者」は、どんな売り込みも歓迎します。むしろ「忙しさ」を理由に制作スタッフと会うのを面倒臭がる編集者とは、つき合わないほうが賢明です。

⑤ 品質管理

これは進行管理と表裏一体ですが、コンテンツのクオリティを保つためのスキルです。まず誤字脱字、事実確認、そして最近多いのがWebからネタを拾ってきて作成する二次コンテンツのコピペチェック。コンテツの面白さ、オリジナリティの追究は最低限の品質管理があって初めて成立します。

質の良いコンテンツとは、「ユーザーが求め、ユーザーの役に立つ情報」というのが大原則に立ちます。その定義を前提にした上で、細部においてクライアントや制作スタッフとも見解が異なることも多々あります。

私自身、コンテンツの質に悩むことも多いですが、そんなときには、下記の条件を指標にして自問自答します。

■読者にとっての価値は何か?
■具体的か?
■シンプルか?
■意外性があるか?
■信頼性があるか?
■独自か?
■物語があるか?
■発見・気づきがあるか?
■解決策が提示されているか?

クラウドソーシングなどの編集者不在のコンテンツや、「このテーマで、このキーワードを入れて文章をまとめてください」と、わんこそばコンテンツの大量生産に慣れた「悪い編集者」は、これらの指標を無視しがちです。

あなたが制作会社の編集者にコンテンツ制作を依頼するときは、ぜひ上記の「良い編集者の指標」を提示してみてあげてください。

そして、あなたがライターやカメラマン、イラストレーターなどのクリエイターなら、ぜひ「良い編集者の指標」を意識しながら創作活動に勤しんでください。


⑥ 情報収集

キャスティングと同様に、常にアンテナを高く張っておくのも編集者の重要なミッションです。携わっている仕事の内容によって、どんな情報をキャッチアップしておかなければいけないのか、常に意識している必要があります。

特に雑誌編集者には得意分野を持つ人も多いですが、ある特定ジャンルの専門知識をもっていることより、いかに専門知識をもっている人を知っているかのほうが重要になります。特に企業ソリューションを仕事にしている編集者は、いつどんなジャンルの仕事に携わるかわからないので、会社内、編集部内で役割分担をしてもよいでしょう。「このことならあの人に聞けばわかる」という状態を作っておくということです。

あなたが制作会社を検討する立場の場合は、最初の打ち合わせでどれだけ自社のことを予習しているかテストしてみてもよいでしょう。ヒアリングのために先入観を持たないようにあえて事前調査はしない、という編集者もいますが、情報収集を習慣にしている「良い編集者」は、仕事相手のことを知っておかないと気持ち悪い、と思うものです。

⑦ 顧客折衝

異論も提示しなければ、代案の提案もない、忠実なイエスマンの編集者と、納得できないと言うことを聞かず、違う根拠をもって代案を出して反論してくる編集者――。あなたがクライアントだとしたら、どちらの編集者を選びますか?

あなたがもし外注の編集者にコンテンツ制作を依頼したのであれば、リソースが理由かもしれませんが、それ以上にあなたが考えたこと、企画したことだけでは限界があるからではないでしょう。自社都合の狭い考えに縛られ、ユーザーのことがまったく見えていない可能性もあります。そんなときに第三者の視点でまったく違うアイデアを出してくれるのが「良い編集者」です。

私の経験上、企業ソリューションの仕事をするとき、クライアントに忠実でオリエンでも指示通りに二つ返事で対応する編集者より、最初から膿出しするように、とことん疑問点・不明点・矛盾点を掘り出してくる編集者のほうがあとでトラブルになりません。制作過程でトラブルを起こすのは、まずクライアントの言いなりになっているイエスマンの編集者です。イエスマンがトラブルを起こしやすいのは、課題解決の意識が希薄、もしくはまったくないからです。

以上、「良い編集者」と「悪い編集者」を決める7つの基本スキルについて説明してきましたが、編集とはコンテンツの発信者と受信者の橋渡しの役割を担う仕事です。私は「良いコンテンツ」を作るために、この7つの基本スキルを指標にすることで、コンテンツをいつも楽しみながら作れるように心がけています。

(文・成田幸久)

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コメント10件

今、これを読めて良かったと思っています。参考にし実践していきます。ありがとうございました!!!
少しでもお役に立てたならばうれしいです!がんばってください。
言葉を飲み込んだ記憶を思い出しました…(ToT)
最近Webメディアで編集の仕事を始めた学生です。まだまだ経験も浅く分からないことばかりで、漠然とした不安を抱えていましたが、ここに今後自分の目指すべき姿がはっきりと文章になっていて、とても心強く感じました。この投稿に巡り会えて本当に良かったと思います。ありがとうございます。
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