コンテンツマーケティング時代に、本当のコンテンツの話ができる侍たち

以前にも「コンテンツマーケティングやるやる詐欺を見極める方法」でお伝えしましたが、コンテンツマーケティングを謳ってクラウドソーシングでクズコンテンツを量産する、なんちゃってコンテンツマーケティング会社が雨後の筍状態で出現しています。

DIGIDAYの記事「SNSユーザーの43%は、コンテンツの元サイトを知らない:認知率が最低なのはライフスタイル分野」で、デジタル・コンテンツ・ネクストのケントCEOは指摘しています。

「読者からの支持を得られないのは、エバーグリーンコンテンツ(いつでも読める内容のコンテンツ)や、コンテンツファーム(訪問者を増やして広告収益を得るために、品質の高くないコンテンツを大量に作成・配信するサービス)、クリックベイター(タイトルは目立つが不正確な記事を配信するサイト)だ」と。

日米問わずクズコンテンツは読者の支持を得られないということですね。しかしコンテンツマーケティングやるやる詐欺が跋扈すると、このような状況を招いてしまいます。

コンテンツマーケティングやるやる詐欺にダマされないためにも、日頃からコンテンツマーケティングの文脈でコンテンツを考え、コンテンツを作る、とはどういうことかを理解しておく必要があります。

そこで今回は、私が知る本当のコンテンツの話ができるザ・プロフェッショナル、本物のコンテンツ侍たちを紹介したいと思います。

彼らコンテンツ侍たちが発信するコンテンツを追っていれば、コンテンツマーケティングの心臓を担うコンテンツがいかに重要で、どんな役割を果たすべきなのかがよくわかります。メディアを運営している人、コンテンツマーケティング施策を考えている人は、ぜひチェックしてみてください。


小林弘人(こばやしひろと)

小林弘人氏は私の元ボスにして、コンテンツ作りの師匠でもあります。20年近く前に、「ワイアード」という雑誌の編集長時代に声をかけていただいて以来、ずっとお世話になりました。私は昨年、彼の元を“卒業”し、独立することになりましたが、その類稀なコンテンツ魂はいまも私の脳裏にしっかり刻まれています。

知人のカメラマンが「小林さんは5年に一度天才になる」と言っていたのがいまも印象に残っているのですが、小林氏はプライベートでも多趣味な人で、バイク、動画、写真、格闘技など、一度ハマると、とことん追究するので、ヘタなプロより詳しく、また上手になってしまうんですね。というか、中途半端な仕事をしているプロは恥ずかしい思いをさせられます。

プロとしては起業家、編集者、作家、プロデューサー、講師などなど、マルチなクリエイターなわけですが、どれも一級品だから中途半端なプロにとってはやっかいな存在です。

常に半歩先を走っているので、私のような凡人がついていくのはけっこう大変でした。本人はよく「私がやろうとすることはいつも反対される」とボヤいていましたが、ワイアード? ITマガジン? 誰が読むの? ブログ? なにそれ? 誰がやるの? 動画? ネットで動画なんて誰も見ないでしょ? みたいな感じ。まあ小林氏が「動画!動画!」と声高に叫んでいたのは、7年くらい前だったので、無理もありません。現場では「また、動画かよ…」みたいな。私も毎月30本の動画コンテンツの制作に関わり、楽しませていただきましたが、当時すでにネットTV局を設立し、動画コンテンツの定期配信のノウハウを確立していたのですから、いま思えばインフラさえ整っていれば…という思いです。C CHANNELやLINE LIVE、AbemaTVなども登場し、今年は動画元年とも言われ、動画コンテンツの重要性が叫ばれてますが、いやはや7年前はさすがに早すぎました。

私が小林氏と仕事をして最も刺激的だったのは「思考実験」です。まあ、アインシュタインと比べるのもなんですが、アインシュタインは思考実験だけで一般相対性理論や特殊相対性理論を打ち出した天才ですが、小林氏はまさにこの思考実験の達人でした。話を聞いていると「ほんとかよ〜」と疑いたくなるような「○○すぎる話」すらも、ついさっき体験してきたかのようにリアルに語るので説得力があるんですね。イマジネーションの豊かさというか妄想力というか。え? なんでそんなに確信もって言えるの? 根拠は? と、つい問い詰めたくなるのですが、そんな問いはナンセンスです。なぜなら「想像できることはすべて実現できる」というジュール・ヴェルヌの格言ではありませんが、そんな感じで、いつも軽〜く「思考実験」を現実に置き換えてしまってきた人ですから。

そんな感じ、あんな感じで、「ワイアード」や「ギズモード」を日本に持ち込み、日本で最初のブログメディアの立ち上げに参画し、普及させた第一人者。

小林氏のコンテツ魂を学びたい人はこちら。

小林弘人 執筆・監修書籍
Hiroto Kobayashi Official


清田いちる(きよたいちる)

あれは2004年だったでしょうか。いちる氏は、ニフティが始めたブログサービス「ココログ」の担当プロデューサーです。当時からすでに「小鳥ピヨピヨ」として名を馳せていたアルファブロガーだったのでご存知の方も多いかもしれません。「ココログ」のプロモーションサイトのお手伝いをしていたのですが、私に課せられたミッションは「ココログ」を普及させるために、著名人に「ココログ」でブログを書いてもらうこと。いちる氏から与えられた特命が「アイドルに書かせる! ただし、『あれ食べた』『仕事楽しかった』というつまらない日記しか書けないアイドルではダメ。ちゃんとコンテンツ力を持ったアイドル」という、なんとも高いハードルでした。

さっそくリサーチ&アタックを開始。しかし、当時はブログの黎明期です。売れっ子だった数多くのアイドル(しかもコンテンツ力を持っていそうな)の事務所にあたったものの「ブログ? なにそれ? 日記? いや〜興味ないね〜」と玉砕の連続。

そこで切り札として出したのが、眞鍋かをりさんでした。当時はアイドルとしての旬も過ぎ(すみません!)、ドラマ出演するもコケて(すみません!)、今後どうなるんだろうという感じでした。私が個人的にファンだったということもあり、ストーカー気分になっていろいろ調べていると、眞鍋さんは過去に某パソコン系雑誌で連載コラムを持っていたことがあり、自分でhtmlを組んでサイト制作をするくらいITリテラシーが高いことを発見。さらに横浜国立大卒というアイドルでは珍しい学歴の持ち主。これはきっと「高いコンテンツ力を持ってるに違いない!」と確信し、さっそくいちる氏に提案をしました。いちる氏は喜んでくれたのですが、社内での反応がすこぶる悪い。「え〜!いまさら?もう終わってる人じゃん」とかなんとか。しかし、それを強引に押し通してくれたのも、いちる氏でした。

眞鍋かをりさんのブログに火が着くのに時間はかかりませんでした。数か月であっという間に「ブログの女王」の称号を得るまでに大人気のブログになり、「ブログ=ココログ」というブランディングにも成功。いちる氏の「コンテンツ力のあるアイドル」という特命と社内でのゴリ押し調整がなければ、現在の眞鍋かをりさんの地位はなかったでしょう。

それから数年後。今度は元ボスの小林弘人氏が米国のガジェットメディア「ギズモード」を日本で立ち上げることになったとき、ゲスト編集長として招聘したのが、いちる氏でした。「ココログ」というブログサービスを成功させた実績を持ついちる氏に、今度は海外で人気だったブログメディアのローカライズを依頼したのです。また、いちる氏はアルファブロガーとしての人気も高く、ネットユーザーの嗜好や特性を肌感覚でつかんでいる人だったのも、白羽の矢が立った大きな理由の1つです。

そして、いちる氏が「ギズモード・ジャパン」の立ち上げにおいて、最初に決めたのがメディアのキャラクター設定でした。米国の「ギズモード」がジャーナリズム色が強く、ややアグレッシブな姿勢だったのに対して、「日本の文化には馴染まない」ということで、掲げたのが「弱キャラ」でした。

具体的には「怒らない」「(強くは)主張しない」「中立」「ケンカしない」「温和」「謙虚」といった感じ。弱いくせに後ずさりしながら、ネチネチ嫌味を言わずにはいられない人。いますよね。その後「ギズモード・ジャパン」はターゲティングメディアの雄として、いまもWebメディアの最先端を走っていることは、周知の通りです。

いちる氏は、彼の肩書が示すように何者か不明瞭です。というか、1つの肩書に収まらない自由奔放な思想と遊び心にあふれたコンテンツクリエイターであり、ネット界隈を常にざわつかせるのが上手な真のコンテンツマーケターと言えるでしょう。

いちる氏のコンテツ魂を学びたい人はこちら。

清田いちる
「小鳥ピヨピヨ」


尾田和実(おだかずみ)

尾田氏は元メディアジーンの取締役兼「ギズモード・ジャパン」編集長、「roomie」編集長。現在は、サイバーエージェントでEAS(Editorial AD Studio)局長兼「SILLY」編集長として活躍中。尾田氏にはメディア編集長の大先輩として、私が所属していたコンテンツ制作部門のために、一度セミナーをしてもらったことがあります。お題は「気の宿るコンテンツ」。

主にメディアとネイティブアドの制作をする上での心がけについての話だったのですが、その中で特に印象に残っているのが、以下の話でした。

★商品性=気(不可視)=奥行き
→見たままではなくて、別の視点を与えることが「編集」。
★奥行≒コンテキスト(文脈)
→ストーリーを感じられるかどうか。
★奥行≠テンプレ
→その商品である必然性がない。
平べったい薄っぺらい印象。

ああ、いまあちこちで氾濫している、コンテンツマーケティングやるやる詐欺によるクズコンテンツは、この「奥行≠テンプレ」だ!と。その商品である必然性がない。平べったい薄っぺらい印象。

尾田氏の言う「気」とは、まさに「スター・ウォーズ」のMay the Force Be With You(フォースと共にあれ)という感じ。この講義を聴いたとき、私はまるでヨーダの啓示を受けた気分でした。

私はときどきイメージトレーニングのために、世の中のWebメディアを抽出し、「クソメディア」と「萌えメディア」に棲み分けして遊ぶことがあるのですが、つまらないクソメディアは、たいてい冒頭で紹介したコンテンツファーム(訪問者を増やして広告収益を得るために、品質の高くないコンテンツを大量に作成・配信するサービス)です。一方「萌えメディア」はたいてい「オレメディア」です。そういう意味で、尾田氏がメディアジーン時代に立ち上げた「roomie」は、まさに尾田メディアと呼んでいいほど、彼の世界観がどっぷり反映されています。デザインもコピーもなんか見慣れないゆえに、最初は違和感があったのですが、それが半歩先を行く「オレメディア」であり「萌えメディア」の源泉なんだな、と改めて実感したものです。

尾田氏は現在、サイバーエージェントで「SILLY」の編集長として活躍されてますが、一度お仕事を手伝わせていただいたときも、とにかく現場が大好きなんだなあ、というのが強烈に残った印象です。現場至上主義、永遠の現場監督。あえてファッション写真家に掃除機を撮らせたり、ローアングルムービーでネコと赤ちゃんを追っかけたり、と遊ばずにはいられない人。とにかく既存のテンプレートを崩したがる人です。

ちょっと前までは微妙だった「SILLY」を見事に尾田テイストで蘇らせたハイセンスな手腕はいまも顕在。本人は「萌えやアンダーグラウンドが苦手」と言いますが、グラビア大好きな私にとっても、「SILLY」はかなりの「萌えメディア」。生まれ変わったスタイリッシュな「SILLY」にもぜひ注目を!

尾田氏のコンテツ魂を学びたい人はこちら。

「SILLY」
「Editorial AD Studio」

roomie


谷口マサト(たにぐちまさと)

谷口氏は知る人ぞ知る、LINEのネイティブアド企画「全力コラボニュース」のプランナーです。「広告なのにシェアされるコンテンツマーケティング入門」の著者でもあります。

昨今、広告業界の救世主としてもてはやされるネイティブアドですが、その実態はまだ「擬態アド」にすぎません。つまりコンテンツを装った広告。メディアの中に紛れ込んで、なんとなく記事っぽく見せているけど実は広告でした、という体裁です。ステマになってはいけないので、広告表記をしますが、記事の上端か下端になるべく目立たないように小さく「PR」「SPONSORED」「広告」と表示されているアレです。

しかし、谷口氏の繰り広げるネイティブアドは、「喜ばれる広告」の未来を体現しているのではないでしょうか。これまでメディアにとって邪魔者だった広告を自ら楽しむコンテンツに変換させて見せているのです。「全力コラボニュース」の記事を見ればわかりますが、そのほとんどが通常のエディトリアル記事より、はるかに高いエンゲージメントを達成しています。つまりニュース記事より面白いじゃん!という評価です。また、ただ面白いだけのバズコンテンツに陥っていないところが、広告主にとっても魅力的です。

「擬態広告」として、できるだけ広告であることを隠そうとするネイティブアドが主流の中、「全力コラボニュース」はキャッチコピーで「斜め上を行く、新時代のタイアップ企画」と謳っているように、広告であることを全面的に表明しています。谷口氏がこの「全力コラボニュース」でWeb業界のカリスマライターのヨッピーを主力パートナーにしているのも、コンテンツに対する覚悟とこだわりが垣間見えます。

谷口氏は、ソーシャルメディア上で広く話題になる「バイラルコンテンツ」を得意としますが、たとえば「なぜ“薄毛男子”はSNSでモテるのか?その上質で丁寧な暮らしに学ぶ」は、3000近くの「いいね!」を獲得しています。谷口氏は「薄毛」をネタにしながら、ただちゃかすのではなく「上質な暮らし」をキーワードに「自分を飾るよりも磨こう」という意外なメッセージで、薄毛に悩むユーザーにしっかり課題解決のヒントを与え、読む者を笑わせつつも商品訴求につなげています。

また彼の送り出すコンテンツは「面白コンテンツ」が主ですが、このようなネイティブアドが必ずしも「面白コンテンツ」である必要はありません。仮にバズったコンテンツでも広告主の商品訴求がちゃんとされなかったり、エンゲージメントにつながらなければ、ネイティブアドの意味もありません。そのバランスはとても難しいのですが、谷口氏が発信するネイティブアドは、広告の未来、そしてコンテンツ力の可能性を可視化してくれています。

谷口氏のコンテツ魂を学びたい人はこちら。

「全力コラボニュース」
「広告なのにシェアされるコンテンツマーケティング入門」


以上、4人のコンテンツ侍を紹介しましたが、彼らに共通するのは、いついかなるときも自らが楽しんでいること。そして、コンテンツづくりが大好き、だということ。マーケティングはあとからいくらでも理屈づけられます。

コンテンツづくりで行き詰まったり悩んだときに、彼らの動向を追いかけていると、いつも勇気づけられます。

「好きになる気持ち」があれば、すべてうまくいくのだと。

(文・成田幸久)

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narita.yukihisa@gmail.com

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