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【小説】絶望

「君は、3の倍数と3がつく数字でアホになるというギャグをする芸人がいたのを知っているかい。」
「いえ。」
僕は急に現れた不思議な老人を前にうろたえている。
「私は君が2歳の時に呪いをかけたんだよ。」
「はい?呪い?どんな?」
「3の倍数と3がつく数字の年齢になったときに、アホになる呪いだ」

過去を振り返ると、確かに思い当たるふしがある。
僕の人生は重要な時に限って失敗しているのだ。
2歳には、はいはいができていたのに3歳でできなくなったり。
5歳でにはできていた足し算が6歳でできなくなったり。
11歳の5年生は偏差値が高かったのに12歳で急激に下がり、中学受験を断念したり。
15歳の中3では高校受験、18歳の高3では大学受験に失敗。
ようやく大学に入れたのは19歳。
しかし、21歳に大学の敷地内を裸で走り回り停学。
22歳で復帰したものの、23歳と24歳は一度も大学に行かず。
25歳で卒業。
26歳で就職活動をし、内定を取り。
27歳でなぜか内定を取り消された。
28歳で就職、29歳で結婚。
ようやく家庭を築くことができたのだ。

疑問をぶつける。
「どうして今になって、そんなことを。」
「君に絶望を与えるためだ。」
「絶望?」
「君は、明日、いや、もう10分後か。」
「10分後?」
「30歳の誕生日を迎える。」