見出し画像

[短編小説]GTO物語 ターン編17

 僕はドアの鍵を開けて部屋に帰ってきた。カーテンを開けて出たので、部屋が昼の陽射しでむんわりと温まっていた。少し窓をあけて空気を入れ換えてから僕はベットに横たわった。

僕は早速、連絡先を交換したアプリを開いてメッセージすることにした。

『相葉です』

いや、堅苦しいか……

『裕樹だよぉ』

ん、ちょっと砕けすぎかな。送信する前に何度も書いては消し書いては消しを繰り返した。

『さっきはどうも、相葉裕樹です。そう言えば下の名前なんて言うの?』

と送った。少しの間自分の送ったメッセージを眺めていたが既読はつかない。僕は諦めてスマートフォンを置いて目を閉じた。

興奮が収まってくると疲労感が体を重くしてベッドにとどまらせた。彼女のことで頭がいっぱいだったが、がんのこと、余命半年のことが急に心のすきまに入り込んで、一気に気分が落ち込んだ。彼女とまだ遭ったばかりにもかかわらず、(彼女と仲も後半年か)などと思った。がんについて親には連絡した方がいいだろう、職場はどうするか? そんな考えの中にも彼女のことが気になって仕方なかった。次第に考えるのが億劫になってきて、うとうとと眠くなってきた。

(ピローン)

スマートフォンのメッセージアプリが鳴った。僕はすぐさま手を伸ばしてスマートフォンの画面を確認した。メッセージが届いている表示が画面に表示されている。わくわくしながらロックを解除してメッセージを確認する。

『貴方だけにお得なキャンペーンをお届け!』

以前に登録したショッピングサイトの宣伝メッセージだった。僕はスマートフォンを放った。




 いままでモテたことがない二十二歳で大学卒業後、今の会社に勤めて五年だ。この歳まで今まで一度も彼女が出来たことが無い。何故だ? いや、俺に言われても困る。何故かは俺が聞きたいんだ。大学も理系なので女性は少なかった。会社もIT系なので女性は少なめだ。だが全く接点がないわけではない。

大学生の頃から彼女は欲しくて仕方ない。合コンや飲み会にも参加して女の子と話すまではいいんだが何故かその後続かない。特に失態を犯してるわけでも無いのだから、これといった理由は思いつかない。ただ運が悪いだけで、出会うべくして出会う運命の女性がいれば、自然と付き合ってカップルになるもんだと勝手に思っていた節があるかもしれない。

 当然の童貞だ。

いかがわしい妄想はどんどんおおきくなるばかり。エッチな動画の見過ぎなのかお陰様で巨乳が大好きだ。だからと言って、合コンの時に胸の大きい女の子だけを選り好みしているわけでも無い。それが今日はどういうことか……。彼女の方から胸を俺の腕に……。ああ、だめだ。思い出しただけでまた、下半身がムクムクと大きくなっていた。彼女の大きな胸の感触がまだ右腕の二の腕に残っている。彼女とは純粋な恋愛としたいと思いつつも、制服を脱いだところを想像してどうしても想像してしまい、何処からともなく罪悪感が地を這うドライアイスのように湧き出てきた。しかし一度始まってしまった、僕の妄想を止めるのは難しかった。

僕は射精した。 

(つづく)

この記事が参加している募集

恋愛小説が好き

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?