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#恋愛小説が好き

恋愛小説への愛や、好きな作品・作家を語ってください!

急上昇の記事一覧

📕小説(ショート)【メリーゴーラウンド】

 子どもの頃から乗り物酔いをする質。 家を出る前にアネロンニスキャップを1カプセル服む。 今まで試したどの酔い止めより私に合っている気がする。 残りは後1カプセル。  郊外型の大きなショッピングパークの中に、話題のメリーゴーラウンドはある。 ライドは2人がけの馬車だけ。 話題になっているけれど、私が乗るなんて思いもしなかった。  横顔に話しかける助手席の私。 時々私に向ける眼差し。 どう見てもデート中のカップル。 メリーゴーラウンドから降りても、このままのふたりでいられる

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居眠り猫と主治医 ㉘夏目先生のお料理教室 連載恋愛小説

次の日、スーパーに寄って手巻き寿司の材料を買いこんだ。 「あ。初デートだ」 「どこが」 昨日の彼はどこへやら、すっかりクールな夏目祐に戻ってしまっている。 おぼつかない手つきの文乃に業を煮やし、祐が包丁を取り上げた。 「刺身があとかたなくなる」 刺身包丁でなくても二回に分けて引くように切るといいと、職人技を見せてくれる。 文乃は卵焼きをねだって、その魔法のような箸さばきに目を丸くし、料亭並みの味だと絶賛した。 *** 満を持して、得意料理を披露する。 こころを救ってくれ

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伏見の鬼 10

 現金なものだ。  かの黒牛を尻目に、へぇへぇと楼主は低姿勢になり、掌を揉み手しつつ階上へ案内した。  作りは総司の馴染みの店とは違う。  階段も緩くゆったりとして、埃ひとつなく磨かれていた。  四枚引きの襖においても縁は黒檀であろうか、また引手も七宝焼きらしく、白地に紅葉が描かれていた。  鼻息荒く、楼主は声を掛けた。 「・・おいおい、当家随一のお客様や。ご挨拶をしいや」  襖の向こうで衣擦れの音がする。  それが幾重にも繋がり、やがて沈黙した。それを見計らい、楼主は勿体ぶ

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春の終わり、夏の始まり 13

遅れてやってきた参加者も増え、同窓会はさらに盛り上がっていた。 あちこちで交わされる昔話、そして近況報告。 少々酔いを覚えた唯史は、義之を誘って居酒屋の裏手にある河川敷へと移動した。 春の夜風が二人の頬を優しく撫で、遠く関空の誘導灯が見える。 上空には無数の星がきらめき、喧騒を離れた穏やかな時が流れていた。 「ここは変わらんな」 と唯史がつぶやくと、義之は、 「そやな。でも人は変わる。唯史、その顔色の悪さとガリガリに痩せた体、俺が気づいてないと思ってるんか?いったい何があ

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連作短編|揺られて(前編)⑦|吾輩はみた(特別編1)

この家にきて三年になるボクは、外の世界のことはあまり覚えてない。 たまにカーテンに潜り込み、人間や紐に繋がれた犬や自由な野良猫たちを窓越しに観察している。 ボクのお世話はママさんがしてくれる。 毎日のごはん、お水やトイレの石の取り換えは本当にありがたい。 ブラッシングはママさんの力の入れ具合が優しくて好き。パパさんのやり方はちょっと痛くて苦手。 ◈ 朝、いつものように出かけたはずのパパさんが家に戻ってきた。ママさんが念入りにお化粧をしてお出かけしたあとだ。 なんだ?な

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春の終わり、夏の始まり 14

同窓会が終わった後、2次会へと流れる者も多かったが、義之はそのまま帰宅した。 義之は、祖父から譲り受けた平屋一戸建てに住んでいる。 畳敷きに寝転がり、天井を見ながら、義之は唯史のことを考えていた。 「何があった、唯史……」 久しぶりに見る親友の姿は、中学時代から大きくかけ離れていた。 いや、見た目はそれほど変わっていないのかもしれない。 他の同級生は、唯史の変化に気づいていない様子であったが、義之は一目でわかった。 唯史はもともと、色白の美少年であった。 だが今の彼は、

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春の終わり、夏の始まり 12

同窓会は、地元の居酒屋で行われた。 入り口の引戸には「本日貸し切り」と書かれた札がかけられている。 カラカラと軽い音を立てて引戸を開けると、唯史を包み込んだのは暖かな照明と賑やかな声の波だった。 中学卒業以来、15年ぶりに見る、懐かしい顔ぶれ。 彼らは唯史の姿を見つけると、いっせいに歓声を上げた。 「唯史やん!めっちゃ久しぶりやなぁ!」 大学進学とともに東京に居を移した唯史は、中学時代の同級生と顔を合わせる機会がほとんどなかったのだ。 同級生たちは唯史を囲み、昔話に花を

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連作短編|揺られて(前編)⑥|明日へ

月の半ばは融資の取り引きも比較的落ち着いている。ここ数日は外出予定もほとんどない。自席でコーヒーを飲みながら今期収支を確認していると、固定電話の液晶がぱっと明るくなり相手が表示された。 『 頭取 』 義父からの電話でよい知らせは滅多にない。重い気持ちで受話器をとると、何やら電話向こうで怒っているのだが、何を言っているのかさっぱりわからない。 「とにかく!今すぐ来なさい!」 この支店から本店まで、営業車で二十分ほどで到着した。 頭取室のドアをノックし部屋に入ると、義父

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【毎週ショートショートnote裏お題】真夜中万華鏡

 真夜中、妖怪小豆あらいは一人の少女と出会った。  少女はうずくまって泣きそうな顔をしていた。  みると足を挫いている。  小豆あらいは、少女を背負い、家に送ってやった。  少女は何度も御礼をいい、庄屋の家の門をくぐった。  それ以来、小豆あらいは胸が苦しい。  妖怪と人間、しかも庄屋の娘、叶わぬ恋であることは重々分かっていた。  それでも止められない。  深夜、人目を忍び、逢瀬を重ねた。  それは真夜中万華鏡のように一刻一刻が夢のように煌めいていた。 「会うのを最後

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居眠り猫と主治医 ㉗病み医者 連載恋愛小説

かみ合わない会話に疲れたのか、祐の言葉がそこで途切れた。 どことなく彼らしくない気がして様子をうかがうと、顔色が悪いし覇気がない。 「あの…体調大丈夫なんですか。クリニック大変だって里佳子さんが」 「大丈夫なわけないし」 いきなり失踪されて寝れるか、と吐き捨てる。 あれほど自己管理が行き届いている人なのだから、ここまで憔悴するのはどう考えてもおかしい。 「…おかんボックスは?」 「作ってない。ひとりじゃ食べる気しない。なにも手につかない」 まるでメンタルをやられた守屋文乃

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【連載小説】ガンズグロウ vol.1「オフ会」

「合コン?!行く行く!」 「いや、正確には合コンじゃなくてオフ会なんだけどね……」 「男何人来るの?」 「6、7名だと聞いてますけど」 「くうぅーっ、久しぶりに燃えてきたぜ!」 「だから、さやか、合コンじゃないって……」 私の友人の一人、レナはパソコンでなにやらアニメやらの活動をしている。 そのレナがオフ会なるものを開くという。 もちろん男つき☆ 彼氏がいなくて干上がってしまったわたしに愛の手が差しのべられたのだ。 これは行かねば…… 当日はつけまもメイ

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【連載小説】ガンズグロウ vol.2「ガンズグロウ」

二次会へはいかなかった。 行っても話が合うとは思えなかったから、レナに話して一次会だけで帰った。 帰ってしばらくして、彼のメアドも電話番号もゲットしていないことに気づいた。 まあ、でも二度と会うことはないかなと思い、そのままにした。 翌日。 レナからメールが届いた。 「上坂くんがメアド知りたいって言ってるけど、教えてもいい?」 上坂くん?誰それおいしいの? 「上坂くんって誰だっけ?」 「昨日、さやかが最後まで話していた人だよー」 あぁ、彼か。 ならば教え

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長崎異聞 33

 薄靄が海面を覆っている。  海風は予想外にも冷たい。  払暁が赤紫に染める天海。  黒々と横たわるあの岬の向こうに、日輪が昇る予感がする。  灯台が白濁した闇を分かつように、光軸を回転させている。  緩く船腹を揺らしつつ、汽笛が鼓膜を裂くように響き渡る。  その光景を高雄丸の舳先で、懐手のまま橘醍醐は見ている。  陸に林立している光源はガス灯の群れであろうか、電気カンテラであろうか。この夜明けに煌々と輝くのは官舎であろうか、人家であろうか。その光量たるや長崎の比ではない。

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居眠り猫と主治医 ㉕狙われた獣医 連載恋愛小説

すべてを遮断する気でいたけれど、里佳子とは何度か会っていた。 彼女も夏目祐のゴッドハンドにひれ伏したクチで、あっという間に意気投合した仲。そういう人との絆は、切っても切れない。 「ルリルリ元気ですか?」 彼女のインコはマメルリハという種類で、鮮やかなブルーの美女だ。 「ちょっとそれが聞いてよー」 英国王室御用達の超高級シードを買ってみたところ、愛鳥はそれ以外受け付けなくなったという。 「もー、破産。オーガニックって単語、聞きたくもない」 「うわ。真のプリンセス」 「ほんと

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連作短編|揺られて(前編)④|アキラ

「逢いたいわ」 カナコさんからのLINE電話を切ると、慌てて身支度をし家をでた。少し早歩きで駅まで向かい電車に乗り込んだ。 今日は火曜日だから、旦那にはバレずらいのだろう。人妻の秘め事は平日の昼間に限る。 平日の下り電車の乗客は少なく、窓ガラスからは暖かな陽が差し込んでいる。眩しくてスマートフォンの画面が見えずらいので角度を変えた。 ─ 803号室にいます ◈ マッチングアプリでアクセスしてくる人妻は多いが、たいがいは普通のサラリーマンの妻だ。目立つことは避けたいか

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「自分と向き合いたい」途中で書けなくなってしまったnote記事を、書いてみた!

─── 2024年4月11日 いつも通り、寝る前にnoteを書く。 当日思ったことを、寝る前に書くのが今でも習慣。 2500字。 ここまでスラスラ書けていたのに 唯一手が止まってしまい、続きを書けなくなってしまった記事があります。 この時の記事を、今日ふと思い出し、続きを書きたくなりました。その理由はまだ分からないけど・・・書き終えた後に答えが見える気がするので、書き進めてみます^^ ~ここから先は、当時書いていた下書きです~ ─── 2024年3月31日 遠距

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恋なんか (詩)

恋はジェットコースターよね 上がったり下がったり、せわしない 今日、幸せに包まれたとしても 明日には気分は急降下 あなたの言葉や仕草に翻弄されてる 心の平安からは、遠ざかる一方 だったら ジェットコースターから降りればいいだけの話し でもね、降りたくても降りられないの あなたがいる限り

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「心の境界線」【恋愛エッセイ】

浮気の定義って、考えたことありますか。 日本人ってキャバクラ浮気に入らないらしいです。 でもそれって、外国人にとって受け入れがたいことなんですよ。 例え性行為に至らなくても、自分の配偶者や周りの人のことを勝手に知らない人に話しちゃってるじゃないですか。 それってなんかおかしいと思いませんか? 孤独が原因だと思うんですけど、自分の本音を金を払って誰かに話すくらいなら、カウンセリング行きますけどね(笑) それよりも、その話し相手と境界線張ってない事が問題になってくるわけですよ

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春の終わり、夏の始まり 11

同窓会、当日。 12時に羽田空港を発った漆黒のスターフライヤーの機体は、定刻通り関西国際空港に到着した。 関西空港のターミナルに足を踏み入れると、即座に懐かしい匂いと音が唯史を包み込んだ。 有名な大阪土産の豚まんの匂い、そして関西ならではの勢いのある大阪弁。 故郷に帰ってきたという実感とともに、唯史の心の中には安堵感が広がっていった。 関西空港駅から、唯史は電車に乗った。 窓の外は、南大阪の田園風景が広がっている。 田植え前の田んぼからは、春先の土の匂いが漂ってくるように

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春の終わり、夏の始まり 9

美咲との離婚後、唯史の日々は変わり果てた。 情緒がきわめて不安定になり、些細なことで落ち込むことが増えた。 夜な夜な睡眠は乱れ、質の良い眠りからは遠ざかっている。 深夜に目が覚めると、そのまま何時間も天井を見つめることが増えていた。 寝返りをうつたびに、唯史の心と体は安息を求めていたが、心の奥底に渦巻く感情がそれを許さない。 この睡眠不足は、日中の仕事にも影響を及ぼし始めている。 勤務中にあくびが絶えず、会議中にはうとうとしてしまうこともあった。 「離婚してからあいつは

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