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【ロボット・イン・ザ・ガーデン】こんなにかわいいロボット見たことない!

またまた最高のファンタジーを見つけてしまいました。舞台はイギリス。主役はロボット!

人生に挫折してしまった中年のベンと、ベンの家の庭に突然現れたロボットのタング。不思議な出会いをした2人が世界を半周するハートフル冒険ファンタジーです。

物語の世界観は近未来SFという感じ。ロボットやアンドロイドが社会や家庭に普及していて、人間の良きパートナーになっています。

そんな中で登場するタングは、一風変わったロボットです。見た目はポンコツ。高性能のAIが搭載されているようなのに、言動は幼児のようです。

そして主人公のベンもかなりのポンコツ。獣医を目指して勉強していたものの、両親の突然死によって心が折れてしまいます。それがきっかけで、弁護士をしている妻のエイミーともギクシャクするように…。

ちなみに、「ロボット・イン・ザ・ガーデン」は、2022年に嵐の二宮和也さん主演で公開された実写映画の原作小説です。映画は小説とはストーリーも設定も違うので、また違う物語として楽しめる作品です。

ポンコツ同士の2人がなぜ旅に出ることになるのか、旅の終わりに待っているものはなんなのか…。この辺りはぜひ実際に読んで確かめてください。

物語の結末は一旦置いておいて、私が今回語りたいのはタングのかわいさなんです!!

タングは自分の意思を持っているロボットで、学習することでどんどん賢くなっていきます。つまり、人間と話すことで人間らしさを獲得していくロボットということ。

最初はカタコトでしか話せなかったタングですが、次第に滑らかに話すことができるようになっていきます。さらに、嘘を覚えたり、自分のわがままを通すためにかわい子ぶったりするというスキルまで習得していくのがおもしろいんです。

都合が悪くなってくると「言っている意味がわからない」という顔でアピールしてくるタングのかわいいこと!

見た目はシンプルなつくりのタングですが、表情豊かに描かれているのが印象的でした。感情表現の仕方が興味深いです。

少し話は変わって、「ロボット・イン・ザ・ガーデン」の世界では、ロボットやアンドロイドが人間の生活に深く関わっています。

家事ロボットは高性能になり、レシピと材料と伝えるだけで料理をしてくれるロボットや、車を運転できるアンドロイドまで登場。さらに、夜のお相手をしてくれるアンドロイドまで…。

ベンとタングがアメリカを旅した時に、間違えて人間とアンドロイド専用のラブホテルに泊まってしまうというエピソードがあります。さすがにまだまだ特殊性癖扱いでしたが、ロボットが普及するとそういう施設も需要が出てくるのか…とおもしろかったです。さすが自由の国アメリカ。

タングの話に戻りましょう。わがままを覚えたタングは、公共の場で大きな声で騒げばベンが言うことを聞いてくれるということを学びます。飛行機に乗るときはプレミアム席をご要望。レンタカーはフォード・マスタング一択。

大抵は頑固なタングに折れてしまうベンでしたが(わがままが通った時のタングの喜びようがかわいすぎるというものあるかも)、たまにはぴしゃりと要求をはねのけます。するとタングは拗ねちゃうんですよね。胸につけたガムテープをいじりながらしょんぼりするタング、かわいすぎます。これはベンがつい甘やかしてしまうのもわかるというもの。

旅が進んでいくうちに、タングはどんどん人間らしくなっていきます。映画を楽しみ、必死でラジオのチャンネル争いをし、ドライブに夢中になります。時には口紅で遊んだり、ベンを喜ばせるために料理にチャレンジすることも…。ベンとの2人きりの旅に横入りしそうな存在が現れた時には、ヤキモチまで妬いていました。かわいい!

さらにタングは、アンドロイドにも敵対心を抱いています。ベンがアンドロイドに何かを頼もうものなら大騒ぎです。自分よりもピカピカで高性能だからというだけが理由ではなさそう。しかし、その理由は頑なに話そうとしません。一体何があったんだいタングよ…。

そしてタングは、置き去りにされることにも強い恐怖感を持っていて、ベンと離れ離れになることをとても恐れています。甘えん坊で怖がりで好奇心旺盛なタング。1冊読み終わる頃には、タングを守ってあげたい気持ちでいっぱいになっていました。抱きしめたい、この命。

様々な場所を旅するタングとベンですが、なんと日本にもやってきます!「ロボット・イン・ザ・ガーデン」では、日本も日本人もとても好意的に描かれていて、作者であるデボラ・インストールさんの日本愛を感じることができたのも嬉しかったです。日本人=ロボットに寛容というイメージは世界共通なんでしょうか。

子供が苦手で、自分の子供を育てることすら想像できなかったベンが、タングと旅を続けることで父親としての忍耐強さや愛情のようなものを獲得していくところに胸を打たれました。親子とも兄弟とも親友とも言える不思議な関係性になっていくタングとベンが愛おしくてたまりません。

なによりストーリーがとてもおもしろい物語なんです。謎の存在に少しずつ近づいていくワクワク、先がどうなるのかわからないハラハラ、ベンとタングの絆が深まるたびに感じる胸がキューッとなるような感覚。いろんな感情が刺激される読書体験ができます。

シリーズ作品みたいなので、これからまだまだタングとベンの生活を見ることができると思うととても楽しみです!


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