土地値の安い僻地に追いやられた高齢者

前回の続きです。「人生100年・まちづくりの会」が新たにスタートしました。
名称はいろいろ変化しましたが、私たちが高齢者住宅を作る際に、半世紀近く続けてきた会です。
 
半世紀も歴史があると、当然高齢期の暮らしも、また人々の意識や嗜好も変わってきています。社会変化、法律や行政のあり方も大きく変わってきました。
 
私たちがこうした活動を始めた頃は、高齢者施設はこれでもかというような不便で土地値の安い僻地に追いやられていました。障害者施設もそうであったと思います。いわゆる生産性が低い人と見なされれば、それに比した暮らしを強いられたのです。
 
40年ほど前に母の住まいを探していたときに、複数人が同じ部屋で同じタイミングでオムツの交換が行われ、みんな同じ姿勢にさせられてお尻をだしたまま職員を待つ、といった光景も見たことがあります。
 
こうした施設で暮らすということは、親にとっては子ども達に追いやられた、子どもにとっては親を追いやったという気持ちにさせるものでした。ですから、当時私たちは高齢期こそ都会で、便利な地域で暮らすといったことを推奨しました。そうでないと高齢者の自由は得られなかったからです。

暮らす地域は「選択ができる」時代に

時代が変わり、いまは高齢期でも暮らす地域は「選択ができる」ようになりました。現役時代、仕事や子育ての時期には暮らしやすかった地域でも、高齢期はこんな地域で暮らしたいといった希望を叶えることができるようになったのです。暮らしの便、不便でいったら都心も田舎といわれる地域もさして変わりはなくなったのです。
 
趣味が都心でないと堪能できないとか、都会の夜景が無償に好きとか、どうしてもここでないとダメ！といった理由が、見つけにくくなりました。人によっては、高齢期も現役で働き、都心と田舎の二拠点暮らしが性に合っているという人もおられるでしょう。

高齢期に共通しているのは、残された時間
 

一方でいまも、たとえ高額の施設費を支払ったとしても、え！というほどの環境や暮らしを強いられているといった話も聞きます。これもまた地域ではなく、選択のひとつかもしれません。安全安心を絶対の柱にすれば自ずと自由は制限されがちです。
 
さらに、建物や食事は金銭に見合ってそれなりだとしても、人としての尊厳を奪われているのではないかといったシステムの施設もあります。でも、人は悲しいかな、すぐに慣れてしまうこともあります。本当はもっと人らしく尊ばれる暮らしがあるのに、高齢期は差し迫って残り時間が少ない分、諦めたり誤魔化したりすることで満足としてしまうことがあるのです。
 
そう、高齢期に共通しているのは、残された時間が限られていて、それはそう長くはないということです。

日本の介護、支援は世界的にみても優れた内容があります。けれど、それが限られた時間という枷のある高齢期の、それぞれの事情や実状にあっているのかと言われると疑問が残ります。
 
役所に困り事を相談にいっても、すぐ隣の部署でできることの中に、優れた支援策があるのに、縦割りの分担がそれを邪魔する。痒いところに手が届かないといったことも確かにあります。

しかし、もう行政に頼るばかりでは埒があかないことも、みんな薄々わかっています。実際の高齢期になれば切実にそれを感じることになります。

共に手を携えて生きて行く時代に

「ケアを受ける人、授ける人」で成り立つ時代は終わりました。高齢期でも障害があっても共に手を携えて生きて行く時代になったということです。
大変な時代だと嘆くことも自由。けれど、嘆くことをやめて、仲間を募って、住まいを作り、住民同士で行政が及ばないものを補う自由も手にすることができる時代です。
 
そんな理想的なことを言って、ぼんやりとしていていいのかな？　と思う方こそぜひ「人生100年・まちづくりの会」にご参加ください。ぼんやりとしたまとまらない頭のなかのことを、どうぞ言葉にしてみてください。すると、思いもよらぬ気づきがあるものです。
 
具体的に高齢期の生活設計ができたり、会に集った人と仲間になったりすることもできます。もちろん、ちょっと覗いてみるかといった気軽な感じでご参加いただくのも歓迎です。

遠方で……事情があって相談現地に行くことができな……といったご事情のある方は、メールで相談ください。オンライン会議zoomのURLをお送りします。スマホ、パソコンをお使いになる方は「zoomの使い方」でググるか、身近な方に助けてもらいましょう。近山もはじめはそうでした！

（20230825-28）