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ザックリとした鉄欠乏性貧血の治療について

研修医の先生から「70歳代女性のの鉄欠乏性貧血の治療で、内服と静脈注射どちらがいいんでしょうか?」「Hb 6.2 g/dL、 MCV 68、フェリチン3ng/mLの小球性低色素性貧血なら、典型的な鉄欠乏性貧血で他の原因はすぐに調べる必要がないと思います。」

という会話をしていたので、簡単に回答を書いてみました。

今回はすべての文章に根拠論文を記載していておらず、個人の感想も多分に含みますので、違うよ!ってところがあればぜひコメントをください。

⓪鉄欠乏性貧血になった理由を考えてみよう。
 高齢者の鉄欠乏性貧血は、「なぜ」鉄欠乏に至ったかを必ず確認しよう。
特に胃がん・大腸がんをはじめとする腫瘍や消化管出血は除外したいです。

①大球性貧血の精査について
 明らかな鉄欠乏性貧血とほぼ確信した症例では必須でないと思います。高齢者の場合、萎縮性胃炎やアルコール依存症、偏食、低栄養等でビタミンB群等の栄養欠乏がある程度存在するために、鉄補充で改善ないときは追加精査するでしょう。

②ー1鉄補充の方法について
 基本的には静脈注射、内服にアウトカムの差はないといわれています。
内服のデメリットは、嘔気・便秘を含めた消化器症状ですが、処方方法を調整することで大抵内服できます。
 メリットは点滴しないことによるメリットすべてです。注射は針を刺す必要があるし、フェジンを用いる場合は通院または入院でないと使用できません。

②ー2経口薬について
 昔は無機鉄(硫酸鉄)を処方された時期がありますが、現在は有機鉄(クエン酸第一鉄、フマル酸第一鉄)を処方します。無機鉄は消化器症状が目立つといわれます。
 静脈注射・点滴静注は、上部消化管出血後で鉄剤内服が難しい方に推奨されると思います。これまでフェジン40㎎のみであったために、毎日投与する必要がありましたがこれは2019年までのことです。
 現在はフェインジェクト(カルボキシマルトース第二鉄)という週1回の鉄剤が発売されたためにに、これを採用している病院であれば週1回添付文書の通りの投与量で概ね必要な鉄は補充できます。
 週1回を3回投与しても改善がないときは、鉄欠乏性貧血以外の要因があるので、それを精査、是正します。


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(『フェインジェクト静注500㎎適正使用のお知らせ』より)

③フェジンの場合の投与期間
 フェジンを長期間投与する症例はごく一部で、多くは上部消化管出血後で経口摂取再開までの短期間で、それ以降は内服に変更して外来フォロー、Hb・フェチリン改善を確認する流れですので、何週間もフェジンを投与することは稀だと思います。
 投与例は
 ●フェジン40㎎+5%ブドウ糖液20-100ml
 (ゆっくり静脈注射、または30分かけて点滴静注)
 添付文書では1日3回まで(120㎎)投与できることになっていますが、個人の経験の範囲では1日1回で困ったことはありません。
 投与日数は、経口摂取できるまでです。
 胃がんや胃食道静脈瘤の再発など潰瘍が治癒しない特殊な状況でなければ1週間も使用することはないと思います。

④フェジンとフェインジェクトのコスパについて
フェインジェクト500㎎(鉄として500㎎) 6078円/瓶
フェジン静注40mg(鉄として40㎎) 60円/管

鉄だけでみたコスパはフェジンが優位ですが、点滴や通院の手間などを考えたらフェインジェクトでよいと思っています。

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